⒋
⑴
裕・めだか・安尾、三人。
吉田「100万、どこ行ったんや!?」
めだ「裕、ワシはお前を信じてる!」
吉田「目が疑っとるやないか!」
裕は母親の遺影の裏を三百万円の隠し場所にしていたよう。
めだ「えっ?、…ワシのヘソクリ場所やないか」
めだ「お金があったから、なんぼか使うたわ。(苦笑)」
吉田「お父ちゃんが使うたんか!」
吉田「何に100万も使うたんや!?」
めだ「…お好み焼きとか」
吉田「食べすぎやろ!」
安尾「使うたん、一人ちゃうで。俺も一緒に使うた」
安尾「『遺影』の裏にお金を発見して、『イェーイ!』って」
吉田「ダジャレかい!」
吉田「二人して使い込むって、何考えてんや!」
⑵
吉田「僕がお母さんに説明します!」
安尾「あかんて。今度は『父親に問題あり』ってなる」
吉田「なんか、ええ方法、ないかな?」
安尾が何か案を思い付いたように手を叩く
吉田・めだ「…!」
安尾「いい方法、思い付いた!…ら、よかったのに…」
吉田「何も思い付いてないんかい!」
安尾「何も思い付いてないです」
⑶
裕がめだかに対し、
吉田「お父ちゃんが使い込んだんやから、100万、お父ちゃんが出してくれ」
めだ「無いから、無理や」
安尾「俺も出したない」
吉田「出せや!、使い込んだんやから!」
⑷
めだかが案を思い付く。
めだ「そや、裏に済んでるお爺さんに協力してもらおう!」
めだ「最近、持ち家が高く売れたって言うてたし」
安尾「あの人、裕君が子供の頃から可愛がっていたから、お金を貸してくれそうですね」
隣人から100万円を貸してもらうことに誰も違和感を抱かず、
結婚資金の話が出てから不自然な展開が続く。
⒌
⑴
裕・めだか・安尾が裏に住む老人のことを話していると、
その老人、白髪混じりの今別府(今別府直之)が悔しがりながら現れる。
今別府は声のボリュームを上げつつ、はっきり、丁寧に、
今別「ちきしょー!」
今別「ちきしょー!」
今別「ちきしょー!!」
吉田「…こんなにはっきり『ちきしょー』を言う人、初めて見た。(苦笑)」
吉田「今別府さん、どうしたんですか?」
今別「昨日、オレオレ詐欺に遭ったんや!」
吉田「えーっ!」
吉田「取り敢えず、座ってください」
今別府がテーブル周りの椅子に座る。
今別「電話が掛かってきて、」
今別「『息子や!会社に一千万損失を出してもうたっ!親父頼む!』って」
今別「上司にお金を渡したら、その後、何の連絡も無い」
今別「朝起きて、気付いたんや…『俺、息子おらへん』って」
吉田「なんで騙されたんや!」
今別「老後の蓄えがパーやーっ!(泣)」
⑵
裕が独り言のように、
吉田「…今別府さんにはお願いできへんな」
裕の声は今別府に聞こえていたようで、
今別「…お願いって言うのは?」
吉田「結婚資金が100万足りなくて…」
今別「裕君のためやったら、貸したのに…」
吉田「それより、今別府さんの善意を裏切った詐欺師が許せないです!」
一方、めだかは今別府のことを見下す。
めだ「平成が終わる今、オレオレ詐欺にかかるって…(苦笑)」
めだ「TVでも、しょっちゅう報道してるのに」
めだ「ワシはオレオレ詐欺には掛からん」
⑶
その時、お店に電話が掛かってくる。
めだかが受話器を取る。
めだ「はい、もしもし。…どちらさん?」
めだ「…裕か!?」
めだ「…会社に一千万の損失を出して、クビになりそう!?」
めだ「俺が出す!」
めだ「…上司がお金を取りに来る?、…分かった!」
めだかが電話を切る。
めだかが慌てながら『裕』・安尾・今別府たちに、
めだ「裕がエライことになった!」
吉田「俺、ここにおる!」
吉田「お父ちゃんも引っかかっとるやないか」
⑷
安尾「今別府さんから聞いた手口と一緒ですね」
吉田「さすがに偶然ですよ」
今別「私と同じなら、別の男から住所確認の連絡が来るはずです」
その時、お店に電話が掛かってきて、今別府が受話器を取る。
この場面は相手の男(新名徹郎)の声も観客に聞こえる。
今別「もしもし?どちらさん?」
新名『息子さんの会社の上司です』
今別府が受話器に手のひらで蓋をし、裕達に小声で、
今別「昨日と同じ声や!」
吉田「ここに呼んで、取り返しましょ!」
今別府が電話の相手に、
今別「一千万、出せます」
と、花月うどん店の住所を教える。
新名『15分で伺います』
今別府が電話を切る。
⑸
吉田「取っ捕まえて、ボコボコにしましょう!」
めだ「でも、強かったら…」
安尾「武器やったら、店(=ギオンスポーツ)にいっぱいあります!」
四人が武装しに、舞台下手端のギオンスポーツに入っていく。
⑹
誰も居ないロビー。
裕の上司・烏川が祝儀袋を持ち、戻ってくる。
烏川「あれ?、誰もおれへんな…」
烏川「トイレ、借りよか」
烏川が上手端通路に消える。
⑺
裕達四人がギオンスポーツから戻ってくる。
めだかはボクシンググローブをはめ、
安尾は剣道の格好をし、
今別府はフェンシングの格好をしている。
裕は卓球のラケットを持っている。
特に今別府の格好がおかしく、
吉田「下、ももひきって!」
吉田「マスクに顔が収まってないし」
今別「裕君こそ、卓球のラケットって!」
吉田「…確かに、弱すぎる。別のものに替えてきます」
裕がギオンスポーツに急いで入っていった。
⑻
トイレを終えた烏川が上手端通路から現れる。
烏川「ふぅ、スッキリした」
めだか・安尾・今別府が烏川を凝視する。
烏川「…何?」
安尾「どちらさん?」
烏川「裕君の上司です」
安尾「詐欺の上司か!」
烏川「…?」
めだか・安尾・今別府が一斉に烏川に襲い掛かる。
めだかはボクシンググローブで叩き、
安尾は竹刀で叩き、
今別府はフルーレで突く。
烏川「痛い!、痛い!」
烏川の叫び声を聞き、裕がギオンスポーツから飛び出してくる。
吉田「何、やってんや!」
めだ「みんなで詐欺師をボコボコにしてるとこや」
吉田「ほんまもんの上司や!」
めだ・安尾・今別「…」
攻撃を止める、三人。
安尾「練習終了~!」
吉田「嘘つけっ!!」
暗転
その5に続く