誰もいないロビー。

舞台上手袖の通路から、芳伸が一人で現れる。
芳「どうしよう!?
アセアセ
芳「姉ちゃん、乗り気やし、彼女おること言えへん
タラー


そこに、烏川に追いかけられて客室通路に逃げた藍五郎が現れる。
藍「あれっ、食事は?」
芳「あっ…なんだか、お腹いっぱいで、席を外しました」

芳「あのさっきの話、聞いてませんよね?
キョロキョロ
藍「何のことですか?」
芳「いえ、それやったらいいんです」

藍「さっきから、烏川の奴が『マイクチェックせえ』、うるさいんですわ。(苦笑)」
藍がカラオケの電源を入れ、マイクを持ち、マイクチェックする。
藍『芳伸さんに彼女がおるとはっ!
口笛笑い泣き
芳「ちょっと!びっくりアセアセ


マイクの音を聞き、烏川が現れる。
烏「聞こえてもうたんで…」

烏川が芳伸に対し、
烏「芳伸君、そんな大事なこと、何で女将さんに言わへんの?」
芳「言いそびれたんです
タラー
芳「…良くあるんですかね?」

藍「あります、あります
ウインク


藍「友達が食事していて、ネギが歯に挟まったんです」
藍「あっ、これ、高校の時の話です」
藍「言うてええんか、言わん方がええんか、悩むうちに、言いそびれたんです」
藍「だから、その友達、一日中、ネギが歯に挟まってて」
藍「それ以来、『ネギ挟まり』いうあだ名を付けられました」
藍「でも、『ネギ挟まり』って、言い難い。(苦笑)」
藍「俺やったら、『ネギ』って呼びますわ
口笛ニヤリ

烏「何の話や!
タラー笑い泣き


芳伸はまさか女性を紹介されるとは思っておらず、
彼女を靖子に紹介するため、呼んでいるらしい。
芳「彼女を迎えに行ってきます」

藍「彼女を迎えに行ったこと、女将さんに伝えときましょうか?」
芳「いえ、彼女のことは自分で言いますんで」
藍「分かりました
ニコニコ

芳伸が彼女を迎えに行った。


靖子と一の介が食事を中断して、ロビーにやってくる。
靖「芳伸、見なかった?」
藍「彼女を迎えに行きましたっ!
口笛笑い泣き
あっさりと打ち明ける、藍五郎。
靖「何ですって!?
びっくり

烏「実は…」


そこに、真希と今別府が現れる。

 

烏川が真希と今別府に対し、
烏「あの、お二人。ちょっと、いいですか?(苦笑)」
烏「ほんまはここにおらなあかん人間が、奥で何をしていたんでしょうか?(苦笑)」
笑い泣き

ミスをしっかり笑いに変えていく、烏川。

今「あの~、商談とか、色々…アセアセ

客「…タラー
烏「あんたが来てから、ずっと、こんなんや!(苦笑)」
笑い泣き


烏川が靖子や真希に対し、
烏「正直に言います。芳伸君には彼女が居ます」
真「そんな…
ガーン
椅子に座り、落ち込む、真希。

藍五郎が真希の背後に回り、真希の肩から手を回し、まるで彼氏のように振る舞う。
藍「俺にしとけって
ニヤリ
真「絶対に嫌です
えー
藍「無理か…
爆  笑
次の瞬間、真希にチョークスリーパーを仕掛ける、藍五郎
ムキー笑い泣き


靖子が真希に、
靖「一回、奥に行きましょう」

靖子・真希・一の介が舞台上手奥通路に消えていった。


藍五郎と烏川、二人。

藍「彼女のことばらした奴、何考えとんや!
ムキー笑い泣き
烏「お前や!タラー
烏「いらんこと、言うな!」

 
 


年配の女性、由美(末成由美)が現れる。

由「あの、お手洗いをお借りしたのですが…」
烏「奥にありますので、どうぞ
ニコニコ

由美が舞台上手袖の通路に行き、手前で止まる。
一呼吸し吐息を漏らしてから、通路に消えていった。
烏「…ちびっとんな。(苦笑)」


藍五郎がカラオケ機器を宴会場に運ぼうと
カラオケ機器の方に行きかけて、立ち止まる。
烏「ちびったんか?(苦笑)」
藍「いえ。ズボンのお尻のとこが破れたかも…」
藍「烏川さん、ちょっと見てもらえませんか?」

烏川が藍五郎のお尻を覗くと、
『プー』
と、藍五郎が烏川の顔を目掛けて、オナラをする。
笑い泣き
烏「くさっ!ガーンアセアセ

藍五郎はマイクを持ち、
藍「もう一発、出そう!
口笛アセアセ
と、マイクをお尻に当てる。
『(エコーの効いた→)プー』
笑い泣き

烏「エコーを効かすな!タラー笑い泣き


そこに、芳伸が戻ってくる。
芳「くさっ!
ガーンアセアセ
芳「オナラの臭いがしますよ!誰!?」
藍五郎が烏川を指差し、
藍「こいつです
ニヤリ
烏「お前や!」

芳伸は彼女を迎えに行ったが、居なかったらしい。


靖子と一の介が奥から現れる。

靖「芳伸、聞いたわよ!…彼女って!」
靖「旅館のためにも、真希さんと結婚するのが一番なのよ!
プンプン

一の介も芳伸に、
一「芳伸君のことを好きでいてくれて、あんなに綺麗な人は居ないと思うぞ」

芳「年齢的に…
タラー
靖「たった2歳の違いじゃない!」
芳「少し年上でも駄目なんや!」


由美がトイレから戻ってくる。

芳伸は由美を見て、
芳「由美ちゃん!
びっくり

靖「芳伸の知り合い?」
芳「俺の彼女や!」
靖「えーっ!びっくり

藍「彼女って、めっちゃ年上じゃないですか!」
芳「めっちゃ年上じゃないと駄目なんです!」

藍五郎が由美に尋ねる。
藍「…あの、何歳ですか?」
由「75歳です」
藍「芳伸さんは?」
芳「25歳です」

藍「半世紀やん!(苦笑)」 笑い泣き


靖子が芳伸で尋ねる。
靖「由美さんとどこで出会ったの?」
芳「駅のホームで」
藍「老人ホームやろ!
ニヤリ笑い泣き

靖「本当に幸せなの?」
芳「幸せしかない!」
藍「シワしかないやろ!
ニヤリ笑い泣き

芳「由美ちゃんと、結婚式を挙げたいんや!」
藍「結婚式挙げても、直ぐ葬式やって!
ニヤリ笑い泣き

芳「姉ちゃん、由美ちゃんとの結婚、認めてくれ!」
靖「何を言ってるのよ!」

靖子が立ちくらみする。
芳「姉ちゃん!
びっくり
藍「靖子さん!
びっくり
藍五郎が咄嗟に靖子のもとに駆け寄る。
…が藍五郎は靖子の小さな体を支えようとせず、一定距離を取り、
靖子はそのまま床に倒れてしまう。

烏「支えたれよっ!
アセアセ

暗転。



その5に続く