⒑
⑴
赤ちゃんも泣き止んだところで、
藍が皆にお茶を入れることにする。
しかし、ポットが見当たらない。
⑵
そこに、白スーツにサングラス姿のヤクザ風の男、帯谷(帯谷孝史)が現れる。
藍が一通りポット弄りをする。
烏川がポットを見つけたところに、帯谷の子分・瀧見(瀧見信行)が遅れて現れる。
瀧見はチンピラ風のラメ入りの緑服を来ている。
瀧「兄貴ーっ!」
瀧見は舞台中央の帯谷を通り越し、舞台上手に置かれたポットの前に行き、
瀧「兄貴、なんで先々、行くんですか!()」
帯「こっちや!」
帯谷が瀧見に声を掛ける。
瀧見は舞台中央の帯谷の方を見て、
瀧「兄貴が二人!?」
帯「そっちはポットや!」
⑶
藍が帯谷と瀧見に尋ねる。
藍「お宅ら、誰ですか?」
瀧「気付かんか?」
藍「千と千尋のカエル?」
と、瀧見にモノマネをさせる。
瀧「カエルちゃう!…まだ、気付かんか?」
藍「メガネの度がキツい?」
瀧「違う!」
藍「服のセンスが悪い?」
瀧「違う!」
藍「顔がウンコみたい?」
瀧「違う!」
烏川も加わる。
烏「だいぶ、額が来てますね?」
瀧見が前髪を上げる。
特に後退していないが、
藍「あっ!ハゲウンコ?」
瀧「違う!どれも違う!」
瀧「悪口の極みやな!」
藍「『悪口の極み』!…おもろい、おもろい」←あしらうように
瀧「何もおもろいこと言うたつもりないぞ。(苦笑)」
⑷
藍と烏川からは答えが出て来ず、
瀧見が自ら名乗る。
瀧「ワシら、吉本金融のもんや!」
瀧「注文したうどん、どないなっとんねん!」
赤ちゃんのことで手一杯で、出前を忘れたままだったよう。
烏「すみません。サービスさせてもらいますので」
帯「慰謝料、100万円や!」
烏「100万なんて…」
瀧「さっさと出せや!」
舞台下手側に立つ瀧見は、椅子を『軽く』蹴る。
藍「ウチの店に何するんや!」
舞台上手側に立つ藍は、椅子を『おもいきり』蹴る。
椅子が飛び、壁に当たる。
烏川が藍に対し、
烏「お前が何するんや!」
烏「ほんで、お前の店ちゃう!」
⑸
早苗が瀧見のもとに行く。
早「やめてください!」
瀧見が早苗を突き倒す。
俊彦が怒り、瀧見を殴り倒してしまう。
瀧「ヤクザに手出しやがって!なめんなよ!」
瀧見が俊彦を殴り倒す。
⑹
その瞬間、早苗が激昂する。
早「なめてんの、お前らの方やろがっ!!!」
早「おい、カエルと廃番のポット!」
早「ウチの旦那に手出したらどうなるか、見とけよ!」
早苗はポットの上部を力尽くで折る。
早「廃番、おまえも頭へし折ったろかっ!!」
帯「…」
早「さっさと出て行けっ!!!」
帯谷と瀧見は早苗の迫力に押され、逃げ去っていった。
⑺
早苗が腰を抜かす。
早「…慣れないことをしたから」
烏「あれ、ハッタリ!?」
早苗が頷く。
殴られ、口元を押さえる俊彦を心配する、早苗。
早「あなた、大丈夫!?」
俊「お前こそ、大丈夫か?」
烏「顔、冷やすもん、持ってくるわ!」
烏川と藍が調理場に向かった。
⒒
⑴
俊彦と早苗、赤ちゃんの幸子、三人。
椅子に座って話す。
早「私が倒されたからって、ヤクザを殴るなんて…」
俊「早苗こそ、ヤクザに立ち向かうなんて無茶して…」
⑵
俊彦が赤ちゃんを見る。
俊「早苗、ちょっと見て」
俊「あんなことがあったのに、さっちゃん、寝たままや」
俊「さっちゃん、図太いわ」
俊「将来、大物になるで」
早苗は俊彦に寄り添い赤ちゃんを見るうち、俊彦の右肩に頭を乗せ、寝てしまう。
俊彦が眠った早苗に優しく話し掛ける。
俊「昨日、徹夜やったもんな」
俊「…おつかれさん」
俊彦も頭を早苗に寄せ、目を閉じ、眠り始める。
血の繋がりのない家族三人が身を寄せる、温かい場面。
⑶
そこに、烏川と藍が冷えたおしぼりを持ち、戻ってくる。
藍「おしぼり、持ってきましたー!」
烏「しー!」
烏川は寄り添う二人を見て、藍を静かにさせる。
⑷
烏川は『俊彦と早苗に毛布を掛けてあげて』という意味で、
両手をグーにし、毛布を掛けるポーズを取る。
藍は『分かった』と言うように頷く。
藍は、寄り添う二人の後ろからゆっくり抱きつき、
頭を寄せ、目を瞑り、家族の輪に加わわる。
烏「分からん!?」
⑸
烏川は『二人に毛布を掛けてあげて』という意味で、
両手をグーにし、毛布を掛けるポーズを取る。
観客は、この場面のシステムを次第に理解し始め、
藍のボケと烏川の「分からん!?」のセットを静かに見守る。
藍は寄り添う二人の後ろで少し考え、
両拳で二人のコメカミをグリグリする。
烏「分からん!?」
⑹
烏川は『毛布を掛けてあげて』という意味で、
両手をグーにし、毛布を掛けるポーズを取る。
すると、藍は少し考え、
寄り添う二人の前に立ち、観客に背中を向け、マッスルポーズを取る。
烏「藍ちゃん、ただのデブやから!」
烏「分からん!?」
⑺
烏川は『二人に毛布を掛けてあげて』という意味で、
両手をグーにし、毛布を掛けるポーズを取る。
すると、藍は少し考え、
(ソファに座る彼氏&彼氏の足元に座る彼女が触れ合いながら仲良くTVを見るように)
俊彦の足元に座り、俊彦の両手を自分の首に持ってくる。
嬉しそうにする、藍。
俊彦は寝ているはずだが、素でニヤニヤしてしまう。
烏「藍ちゃんの彼氏ちゃうから!」
烏「分からん!?」
烏「毛布や!」
痺れを切らした烏川が答えを言う。
⑻
藍が毛布を持ってくる。
藍は二人の背後で少し考え、
藍「ゆっくり寝てくださいね」
と、毛布を二人の『頭』に掛ける。
烏「引っ越し屋か!」
暗転。
その6に続く