『さずかりものは夫婦を結ぶ』

 

[セット紹介]
典型的な『花月うどん店』のセットです。

舞台中央に、テーブルと丸椅子。

舞台上手奥に、カウンター、調理場への通路。

舞台上手袖に、奥の部屋への通路。

舞台下手寄りに、レジと入り口(引き戸)。

店先の道路。

店の向かい側に、喫茶店フラワームーンの入り口。

 
 
 
[物語]
(敬称略)


舞台は『花月うどん』。

幕が上がると、
啓之(清水啓之)と景子(松浦景子)が中央のテーブルでうどんを食べている。

景子は赤ちゃんを前に抱いていて、二人は夫婦のよう。

啓「美味しかったなあ~
照れ
景「ほんまね~
照れ

景子は赤ちゃんを見ながら、
景「今日は赤ちゃんがぐっすり寝てくれてたから、ゆっくり食べられたわ」
景「一回寝たら起きないなんて、あなたに似てるわ
おねがい
啓「顔は景子に似てる
おねがい
 

補足。
劇中、登場する赤ちゃんは全て『人形』です。
『おくるみ』で包まれていて、表情までは見えません。



啓「赤ちゃん、抱かせてくれる?」
啓之が赤ちゃんを触ろうとすると、
景「やめてよ!…お父さんじゃないんだから
えー
啓「えっ?
キョロキョロアセアセ
景「冗談よ
ウインク

景子が啓之に赤ちゃんを渡そうとする。
景子が赤ちゃんに、
景「あなたのお父さんかな~?
ニコニコ笑い泣き
啓「えっ?キョロキョロアセアセ
景「冗談よ
ウインク

成り立て家族の微笑ましい場面。


啓之が水を貰おうと奥に呼びかけると、従業員の烏川(烏川耕一)が現れる。

烏「うどんの方はどうでした?」
啓「美味しかったです。特に出汁が最高でした
ニコニコ
景「お兄さんが出汁を作っているんですか?」
烏「いえ、あれは『どん兵衛』の出汁です
ニヤリ
啓「…どん兵衛?(苦笑)」
烏「冗談です」
烏「私は従業員でして、出汁はお店の2代目が作っています
ニコニコ


『リリリリリン』
その時、店に電話が掛かってくる。

烏川が受話器を取る。
烏「…えっ?まだ行ってません?
びっくり
烏「至急、確認します
アセアセ
烏川が受話器を置く。

啓「何かあったんですか?」
烏「出前がまだ来てないらしくて…」

烏「新人バイトに行かせたけど、あいつはどこで何をしとんや!?」
 
 


アルバイトの藍(酒井藍)が岡持ちを持ち、帰ってきた。
藍「ただいま帰ってきました!」
勢い良く店内に入り、その勢いで岡持ちが啓之の頭に当たる。
啓「痛っ!
アセアセ

藍「もしかして、当たりました!?
びっくりアセアセ
藍「大丈夫かな?」
と、岡持ちの損傷を気にする、藍。
笑い泣き

烏川が啓之に謝る。


烏川が藍に対し、
烏「電話が掛かってきたぞ!
プンプン
烏「何、しとったんや!?」
藍「あの~…」
烏「さぼっとったんか?
プンプン
藍「さぼってません!
アセアセ

藍「道が二手に分かれててて、どっちが近道かなって…」
藍「こっちかな?こっちかな?」
藍「悩んでたら、悩んでる自分にだんだん腹立ってきて」
藍「こうなったら、もう、行ったれーって!」
藍「ほんで、喫茶店でハンバーグ食べてました
口笛笑い泣き

烏「さぼっとるやないか!タラー


烏「ええ加減にせえよ!」
怒った烏川が岡持ちを叩くと、その音で赤ちゃんが泣き始める。
藍「最悪や。泣かしよった
えー
烏「お前のせいや!
タラー

赤ちゃんは、なかなか泣き止まない。

藍が景子に対し、
藍「私、あやすの得意なんで、ちょっといいですか?」
藍「最近、姪っ子も産まれたんで」

藍が景子が腕に抱える赤ちゃんを見て、
藍「ごめんね。お歌、歌うから聞いてね」
藍「…」
藍「♪寝るか 泣き止むか 喰われるか」
笑い泣き
藍「♪寝るか 泣き止むか 喰われるか」
藍「♪オラは 平気で 赤子を喰う」
笑い泣き

烏「怖すぎるやろ!タラー
烏「そんなんで泣き止むわけないやん!」

『アハハハハ
爆  笑
赤ちゃんが笑い出す。

烏「嘘やん!?
キョロキョロ笑い泣き


次は景子が赤ちゃんを腕に抱えたまま、バレエダンスを披露する。

烏「危ないって!
アセアセ

『アハハハハ
爆  笑
赤ちゃんが笑い出す。


藍が景子に尋ねる。
藍「奥さん、もしかして、バレリーナですか?」
景「…はい」

藍「どんな曲でも踊れます?」
景「…はい」

藍「じゃあ、私が歌うんで、踊ってください」

藍「…」
藍「♪寝るか 泣き止むか 喰われるか」
笑い泣き
藍「♪寝るか 泣き止むか 喰われるか」
藍「♪オラは 平気で 赤子を喰う」
笑い泣き

藍の歌にダンスのタイミングを合わせ、
景子が赤ちゃんを腕に抱えながらバレエダンスする。 笑い泣き

『アハハハハ爆  笑
赤ちゃんが笑い出す。

烏「この子、ほんま、おかしいんちゃうか?(苦笑)」


啓之が会計をお願いする。
烏「うどん二つで千円になります」

会計を済ませ、店を後にする、啓之と景子。

(舞台下手袖で)景子が赤ちゃんを見て、
景「臭う…」
景「ウンチ漏らしたみたい」
景「急いで替えないと
アセアセ
と、景子が自分のお尻を押さえながら、履ける。
笑い泣き
啓「お前の方か!タラー
 
 


烏川と藍、二人に。

烏「藍ちゃん、掃除してくれる?」
藍「どこ、掃除したらいいですか?」
烏「そんなんは汚いところを自分で見つけて、掃除するんや」
藍「分かりました」


女将のあき恵(浅香あき恵)が戻ってくる。
浅「ただいま~」

藍があき恵を見て、
藍「汚いとこ、あった
ニヤリ
と、あき恵の顔を雑巾で拭こうとする。

浅「藍ちゃん、何すんの!?」
藍「女将さん、汚いから…汚いっていうより、ブサイクですけど
ニヤリ笑い泣き
浅「藍ちゃんだけには言われたないわ」
藍「女将さんやから、言えるんです」
浅「「あんた、豚やないの!」
藍「豚は痩せたら直るけど、ブスは一生もんやからな!」

あき恵は言い合いに負け、
浅「イヤァ~~~ア!」

藍「昼休みや!
ニヤリ
浅「違うわよ!叫んだの!
プンプン

烏川が呆れ、
烏「やなぎさんの紹介やから雇ったけど、どうしようもないな…
タラー


そこに、『やなぎ製麺所』のやなぎ(やなぎ浩二)が
うどん麺をケースで持ち、現れる。

『花月うどん』は、麺は仕入れているよう。

や「こんにちは
ニコニコ
浅「やなぎさん、聞いてください」
浅「藍ちゃんが私のことをブサイクって言うのよ。仕事もちゃんとしないし!」
浅「やなぎさんからも言ってください!」

やなぎがゆっくりと藍のもとに歩み、
や「藍ちゃん
プンプン…こりゃ口笛グー
と自分の頭の上で拳を作る。

烏「子供やないんやから
タラー

藍がやなぎに対し、
藍「私、子供じゃないんで!
プンプン…こりゃ口笛グー
と自分の頭の上で拳を作る。
笑い泣き

藍「アーハッハッハッ!爆  笑
藍「イェ~イ!
パー
と、やなぎとハイタッチする。


やなぎは先月分の麺の代金を貰いに来たよう。
浅「お金のことは息子に任せてるんで…」
浅「ちょっと、待ってくださいね」

あき恵が奥に呼びに行こうとすると、奥から男女の怒鳴り合いが聞こえてくる。

怒鳴り声はだんだん大きくなり、
あき恵の息子で2代目大将の俊彦(高井俊彦)、
俊彦の妻・早苗(金原早苗)が現れる。

二人は険悪な雰囲気で、枕で殴り合っている。
殴り合う道具が『枕』という点からして、最悪のところまでは行っていないよう。


あき恵が喧嘩を止め、俊彦と早苗に尋ねる。
浅「何が原因なの!?」

早「浮気してる!
プンプン
早「服にキャバクラの名刺が入ってた!」
俊「それは駅前で配ってただけや!
プンプン
俊「ゴミ箱に捨てようと服に仕舞って、そのまま忘れたんや!」
早「何よ!」
俊「そっちこそ、何や!」

また、枕で殴り合い、店内を移動する。

そのうち、やなぎが二人の間に入り、枕で殴られる。
や「痛たたっ!
アセアセ
や「体が幾つあっても足らん。帰ります!」

やなぎはお金を貰うことなく、帰っていった。


俊彦が早苗に対し、
俊「勝手な想像で疑うん、やめてくれ!
プンプン
俊・早「フンッ!
ムキー
腕を組み、顔を背ける、俊彦と早苗。

俊彦は調理場に、早苗は奥の部屋に消えていった。


その2に続く