⒋
⑴
小寺が旅館の中から慌てて飛び出してくる。
小「不審者が居たわ!」
奥重が、長年、散髪していないと思われる男(清水啓之)を
旅館から引き摺り出す。
髪は肩に掛かり、長い髭が生えている。
一憲が男を蹴る
徹「親父、何しとんねん!啓之や!」
ボサボサの頭をした男が、
先程話題になっていた、徹郎の弟・啓之だった。
⑵
啓「庭の鳥に餌を上げていたら、捕まえられて…」
まりこが啓之に声を掛ける。
ま「啓之君!」
啓之は8年前にこの地を離れたまりこを見て、驚く。
啓「えっ?えーーっ!」
啓之は、不甲斐ない姿を見られたと思ったのか、
逃げるように旅館の中に消えていった。
⑶
徹郎がまりこに宿泊を促すが、
まりこは親戚の家に泊まるよう。
一憲がまりこに対し、
一「ほな、冷たいもんでも飲んで行きなさい」
ま「では、お言葉に甘えて」
太「ビール、いただきます」
前「私は酎ハイで」
徹「お前らは勤務中やろ!」
一「まあ、まあ。甘えたらええ」
一憲・太田・真希が旅館に入っていった。
⑷
徹郎とまりこ、二人になる。
ま「徹郎さん、ちょっと話を聞いてくれる?」
徹「何?」
二人が旅館玄関左横(舞台下手側)の縁台に行き、
徹郎が座る。
ま「今、お付き合いしている人は?」
徹「おらんよ?」
ま「ほんまに、ほんま?」
まりこは『ほんま』を言うたびに、
大げさにステップを踏み、場所を移動し、中央に来る。
徹「ほんまや」
ま「ほんまに、ほんまに、ほんまに、ほんま?」
まりこが大げさに舞台上手袖まで移動する。
徹「あの…重そうやね。(苦笑)」
ま「マカロンを食べすぎちゃったみたい」
徹「いや、何にも可愛ないけど…(苦笑)」
⑸
まりこがまた舞台中央に戻ってきて、
ま「小学生の時から、徹郎さんのことが好きだったの」
ま「お付き合いしてもらえませんか?」
徹「えっ?ほんまに?」
ま「ほんまよ」
徹「ほんまに、ほんまに、ほんまに、ほんま?」
今度は徹郎が大げさに舞台上手に移動する。
徹「俺も前から、まりこちゃんのことが好きやった」
徹「気持ち、一緒やな」
ま「お付き合いしてくれるの?」
徹「うん!」
ま「ほんまに、ほんま?」
ステップを踏み、場所を変える、まりこ。
徹「もう、ええ!(苦笑)」
⑹
まりこは舞台下手側でうつ伏せになり、
舞台上手の徹郎の方を見て、両手のひらを自分の顎の前に位置し、
顎を乗せる。
ま「徹郎さん!」
徹郎もまりこの反対側から、まりこと同じことをする。
徹「まりこちゃん!」
所謂、バカップルの時間が過ぎる。
⑺
起き上がり、手を繋ぐ二人。
そこに、一憲・真希・太田が現れる。
一「まりこちゃん、冷たいもの、飲みに来んかね?」
徹「あの~、今の話、聞いてなかったよね?」
一「…話?何のことや?」
徹「なら、いい」
一「でも、まさか、徹郎とまりこちゃんが、」
前「付き合うとはね」
太「おめでとう!」
三人に全てを聞かれていたよう。
一憲・真希はクラッカーで祝福するが、
最後の太田は拳銃を空に向けて打つ。
徹「それはあかん!」
太「めでたいんやから、固いこと、言うなって」
ま「皆に聞かれて、恥ずかしい!」
足を大きく動かし、舞台下手に去ろうとするが、動きの割に前に進まない。
徹「全然、動いてない。(苦笑)」
まりこが去っていった。
⒌
⑴
徹郎とまりこの恋愛を喜ぶ、一憲。
一「二人が結婚したら、旅館も安泰やな」
徹「結婚はまだ早いわ」
徹「啓之のことがあるし…」
徹「啓之が立ち直る、ええ方法があればなあ」
真希が手を叩く。
前「あっ、そうや!」
皆が真希に注目する。
前「髪、切らな。パサパサやから」
徹「髪、かい!」
一「真希ちゃん、ええ美容室、紹介するで」
⑵
真希が案を出す。
前「啓之君が超能力を取り戻したらいいんですよ!」
徹「そのことで、悩んでんの!」
前「だから、あたかも超能力が使えるかのように、私達で仕掛けを作るんです」
太「嘘って、バレるって」
前「キッカケです」
前「自信を取り戻したら、超能力も復活するかもしれないでしょ?」
新「…そやな。よっしゃ、やってみよう!」
皆も賛同する。
⑶
新名・真希・一憲・太田で仕掛けを作る。
それは、舞台下手の竹垣の前にあるバケツや植木鉢を浮かせるというもの。
バケツや植木鉢透明の糸を括り、糸を透明の棒と結び、
太田と真希が竹垣の奥に隠れ、引き上げる作戦。
仕掛けを作り終える。
⑷
啓之を呼ぶと、髪を切りサッパリとした啓之が現れる。
まりこが現れ、このままではいけないと思ったのか、
バリカンで切ったよう。
啓「まりこちゃんは?」
徹「親戚の家に行ったわ」
⑸
徹郎が切り出す。
徹「超能力、試してみんか?」
啓「超能力なんか、ないって」
一「ダメ元でちょっとやってみいって」
一「そこのバケツと植木鉢で試してみよう」
啓「…分かった」
啓之がバケツを見て、
啓「まず、バケツからや。いくぞ!」
太「了解!」
啓「えっ?」
一「カエルや」
一「ちょっと、待ってな」
杖でカエルを突き殺すフリをする、一憲。
啓之がバケツに集中する。
啓之の動きに合わせ、太田がバケツを浮かせる。
啓「浮いた!」
徹「おお!」
⑹
徹「今度は植木鉢、行くよ!」
前「おーっ!」
啓「えっ?」
一「野良犬や」
啓之が植木鉢に集中する。
啓之の動きに合わせ、真希が植木鉢を浮かせる。
啓「…!」
啓「俺、力あるんや…」
徹「凄いな!」
⑺
奥重と小寺が旅館から飛び出してくる。
奥「スクープや!」
新「えっ?」
奥「我々は吉本新聞の記者なんです!」
二人が旅館から去っていく。
奥「特ダネやな!」
小「やりましたね!」
徹「やばい!やばいぞ、これは!」
大事になりそうで、焦る、徹郎。
暗転。
その4に続く