『恋の超能力、浮かせてやるぜ!ああっ』

 

[セット紹介]
温泉街の『老舗旅館の玄関前』

中央奥に、旅館玄関。

玄関左横(舞台下手側)に、縁台。

舞台下手に、竹垣や庭園。

舞台下手袖に、街へと通ずる道。

旅館玄関の周りに、庭園が見え、
奥の背景にも庭園や池等が見える。
 
補足。
18/05/22~28、NGK本公演『絶体絶命、顔パンパン』のセットです。
夜イベントは、例外を除き、
その週の本公演のセットを使うことが多いですね。
 
 
 
[物語]
(敬称略)


舞台は老舗旅館『花月旅館』の玄関前。

仲居の真希(前田真希)が玄関前をほうきで掃除している。

そこに、恋人らしき、奥重(奥重敦史)と小寺(小寺真理)が泊まりに来る。
奥「豪華な旅館やなあ。泊まるの、夢やった」
前「裕福そうに見えませんね
ニヤリ
小「3ヶ月間、節約して、泊まりに来ました」
前「まだ、泊まるのは早いと思いますよ
ニヤリ
小「はーっ!?
プンプン
前「10年、早かったと思います
ニヤリ
奥「失礼な人やな!
プンプン


騒ぎを聞きつけ、旅館主の徹郎(新名徹郎)が現れる。
徹「どうかされましたか?」
奥「僕らのことを貧乏人扱いするんですよ!」

徹郎が真希に対し、
徹「真希ちゃん、思うたこと、口に出したらあかんやろ!
ニヤリ
奥「お前もや!」
徹「あっ、おもてなしです
ウインク
奥「要りません。要、り、ま、せ、ん。要りません!」
と、いつかの誰かのおもてなしポーズで返す。

徹「最近、入ったばかりの新人で…大目に見てあげてください
アセアセ
前「見てあげてください
ニヤリ
奥「分かったから、ちゃんとしてください!」


徹郎が奥重達に尋ねる。
徹「撮影ですか?」
徹「伺ってませんけど…」
奥「…撮影?」
徹「DVD、借りてますよ
ウインク
奥「…DVD?」
徹「AV男優ですよね?ほんで、横はAV女優ですよね?
ニヤリ
奥「誰が『素人もんのAV』や!
タラー
小寺が小声で、
小「…そこまで言ってないです。(苦笑)」

徹郎が奥重に対し、
徹「チョコボールさんですよね?
ニヤリ
奥「違う!」
徹「じゃあ、何ボール?
ニヤリ
奥重が股間の前に両手を下ろし、何かを抱えるフリをして、
奥「ゴールデンボール
口笛アセアセ
徹「…そこまで言うてないですけど。(苦笑)」

奥「とにかく、AV俳優じゃないんで!」
徹「これも、おもてなしです
ウインク
奥「要りません!」

奥重達がチェックインを済ませ、旅館に入っていった。


徹郎が真希に叱る。
徹「接客、ちゃんとしてよ!」
徹「…俺も人のこと言えんけど。(苦笑)」
 
 


徹郎の父で、旅館の大旦那である、一憲(音羽一憲)が
舞台下手袖からゆっくりと現れる。

一憲はバーコードのような頭(カツラ)をしていて、
杖をついている。

ゆっくりゆっくり、舞台を歩いてくるため、
徹「日が暮れてまうわ。(苦笑)」
一憲が普通の歩みに戻す。


一憲は、杖の先で真希の法被を下から(股間辺りから)捲り上げようとする。
前「この、変態やろうっ!
ムキー
真希が一憲にビンタを10発近く喰らわせる。

一「真希ちゃん、もっとーっ!
チュー
ビンタされ、嬉しそうにする、一憲。
笑い泣き

一「真希ちゃん、今日の分ニコニコ
財布から一万円を出し、真希に渡す。
笑い泣き
前「大旦那さん、ありがとうございます照れ
前「いつも、すみません
お願い

徹「金、貰うてるやんタラー

 

一憲も真希も嬉しそうな表情で、どちらにも不利益は無いよう。



舞台下手袖から、和服を着た老人、令(レイチェル)が現れる。
令も杖をついている。

令は老人らしく、絞った声で、
令「ただいま」


令「今日は天気が良くて、気分がいい」
令「こんな良い日と巡り合うことは、まあ無い」
令「ペンが止まらんよ
照れ

令「ワシはこの国が好きじゃ
照れ
令「日本が、日本語が好きじゃ」
令「そこで、日本語に敬意を払った俳句を作ってみた」
令「聞いてくだされ」
令「…」
令『ビューティフル
口笛
徹「英語や!
タラー

令「ブーッ!
チュー
と、吹き出し、倒れる。
笑い泣き
徹「令先生!?びっくり

令「ツボに入ってしもうた爆  笑

令「冗談じゃ」
令「ワシは海外にも行っとるもんでな」
徹「どこに?」
令「佐渡島
口笛

令「ブーッ!チュー
令が倒れる。

ともかく、令は俳人のよう。


真希も一句思い付いたよう。
前「先生、思い浮かびました」
前『アニョハセヨ カムサハムニダ サランヘヨ
口笛

令「素晴らしい
照れ笑い泣き
徹「韓国語、並べただけやないか!タラー

一憲が怒りだす。
一「お前達は、俳句の歴史を分かっとらん!
プンプン
一「俳句は、室町時代の恋歌に始まり、」
一「17世紀の松尾芭蕉、19世紀の正岡子規と受け継がれ…」
一「そして、全てはボブ・マーリィのものとなった
ニヤリ

徹「最後、レゲエやないか!
タラー

真希が一憲に対し、
前「大旦那さんこそ、分かってないじゃないの!」
一「この、アバズレ!
プンプン
前「この、ブタ野郎っ!
ムキー

真希が一憲にビンタする。
真希は舞台袖の音に合わせられず、一発多くビンタしてしまうが、
音は『五七五』になっている。

ビンタされた一憲が真希にお金を渡す。
笑い泣き

徹「何や、この関係!タラー


令が旅館に入っていった。

一「あの先生、いつまで旅館におるんやろな?」
徹「気の向くまま移動してるらしいわ」
 
 


徹郎・真希・一憲、三人で居るところに、
警官の太田(太田芳伸)が現れる。
太「よう!」
徹「おお!」

真希が徹郎に尋ねる。
前「このゴリラと知り合い?
ニヤリ
太「なんやと、こらっ!
ムキー

徹「芳伸は、俺の幼馴染なんや
照れ

真希が太田の前に行き、
前「仲居の真希と申します
ニコニコ
と、笑顔
爆  笑でハイタッチ。

徹「仲ええんか、悪いんか、どっちなんや!タラー


太田が用件を伝える。
太「今日は懐かしい人を案内しにきたんや」

呼ばれて現れたのは、
清楚な薄ピンクのワンピースを着た、まりこ(森田まりこ)。

ま「お邪魔します」
徹「まりこちゃん!
びっくり
ま「徹郎さん!
おねがい

一「まりこちゃん、大きくなったな」
ま「おじさん、お久しぶりです
ニコニコ

真希がまりこを見て、
前「お人形さんみたいで、可愛い。…土偶?
ニヤリ笑い泣き


徹郎が、まりこを真希に紹介する。
徹「まりこちゃんは幼馴染で、よう、旅館に泊まりにきてくれたんや」
徹「小学校6年の時に横浜に引っ越して…、それ以来」

徹郎がまりこに対し、
徹「まりこちゃん、元気にしてた?」
ま「短大を卒業して、就職したの
おねがい

ま「啓之君は?」
前「…啓之君?」
徹「あっ、真希ちゃんには、まだ言うてなかったな」
徹「俺の弟で、まりこちゃんの同級生」

徹「…実は、啓之は8年前から引きこもってるんや
ショボーン

徹「啓之は子供の頃、特別な力があって、『超能力少年』って囃し立てられてな」
ま「私、啓之君の力を何回も見たわ!
おねがい

「なるほど~…旦那さんの弟だったんですね、ユリ・ゲラーって口笛
徹「話、聞いてた!?ユリ・ゲラーやったら、俺より年上や!」

徹「まりこちゃんが引っ越した直後、TV番組に呼ばれてな」
徹「でも、何故か力が使えなくて、『インチキ少年』呼ばわりされた」

徹「それ以来、引きこもってしもうたんや」
前「なるほど~…それで、ダイソンは良く吸うのね
口笛
徹「話、聞こう!
タラー


ま「そんなことが…」
ま「…」

誰からも台詞が出て来ず、場が静まる。
徹「何の間や!(苦笑)」

ま「…私やね?
アセアセ笑い泣き
ま「酷いです、インチキ少年なんて!ショボーンアセアセ
徹「酷いんは、お前や!(苦笑)」
笑い泣き

ま「…思い出した。(苦笑)アセアセ
ま「小学校の時のことをね。(苦笑)
アセアセ笑い泣き
ま「遠足の時に木が倒れてきて…」
ま「その時、啓之君が超能力で木を浮かせて、私を助けてくれたのよ」


一憲が口を開き、空気を一変させる。
一「過去なんか、どうでもええ!
プンプン
一「大事なんは、過去より未来や!」
一「なんとかして、若い子とキスしたい!
口笛
一「間違えた」
一「なんとかして、啓之の元気な姿が見たい!」

徹「間違えるわけないやろ!
タラー

真希が一憲に、
前「この、変態っ!
プンプン
一「この、アバズレッ!
プンプン
前「この、ブタ野郎~っ!
ムキー

徹「金、欲しいだけやろ!
タラー

と、ビンタと金銭のやり取りを未然に防ぐ、徹郎。

 

 
その3に続く