21.
⑴
哲郎の母親が去っていった。
⑵
陽子が沙月に尋ねる。
陽子「お姉ちゃん、今日のデート、どうだった?」
沙月「楽しかったわ
」
外から、男性の「わっ!
」と驚く声が聞こえる。
沙月「哲郎さんのお母さん(の男装姿)を見て、驚いたのね。(苦笑)」
陽子「誰か来てるの?」
沙月「実は、今日は、彼氏をみんなに紹介しようと思って
」
茂造「見たかったんや、マニア男!
」
皆で「マニア男ー!
」
⑶
沙月「雄二さーん!
」
沙月に呼ばれ、現れたのは、
白い服を来て、髪を下ろした爽やかそうな青年、一ノ瀬雄二(吉田佳)。
全身は『白』のイメージ。
しかし、どこか、ヤクザの金平巧に似ている。
一瀬「おじゃまします
」
一瀬「僕は、マニア男ではありません!
」
茂造が挙手し、入り口に居る一ノ瀬に陽気に近付く。
茂造「初めに、マニア男と言ったのは私でーす!
」
しかし、茂造は近くで一ノ瀬を見た瞬間、表現が強張る。
(照明が赤色になる)
舞台上手奥に行き、一之瀬とは反対の方向(壁の方)を見て、
茂造「えっ?
…あの男…!
」
陽子「茂造さん、どうしたの?」
⑷
一ノ瀬が皆に自己紹介する。
一瀬「一ノ瀬雄二と申します」
沙月「プロポーズされました!」
茂造以外の皆が「で?返事は?」と尋ねる。
沙月「0.2秒でOK!
」
茂造「あかん!
」
古賀が茂造を見てから、沙月と一ノ瀬に、
古賀「茂造さんは病気やから、気にせんとって。(苦笑)」
茂造「結婚なんて、絶対にあかん!
」
沙月「どうして、私と雄二さんの幸せに水を差すようなことを言うの?」
皆が「そうや!そうや!
」と、茂造に反発する。
古賀「水を差す理由は何や!?」
茂造「それは…沙月さんを愛しているからです!
」
涼介が茂造に対して、
涼介「人を騙すなんて、最低や!」
茂造「お前だけには言われたないなー
」
涼介「…(苦笑)」
沙月「茂造さんには、リンダさんが居るでしょ?」
茂造「リンダは友人なんです」
茂造「工場で雇ってもらうために、恋人のフリをしたんです」
茂造が奥を見て、小声で、
茂造「なんで、あいつ、今、おらんねん!?
」
茂造が皆に、
茂造「信じてください!」
陽子「みんな、信じてあげましょ?」
陽子「でも、お姉ちゃんを愛していることを証明してほしい」
茂造「…分かりました」
茂造が沙月にキスしようとする。
寸前で、一ノ瀬が二人を引き離す。
一瀬「やめろーっ!!
」
一瀬「僕の大切な沙月さんに何をする!」
沙月が一ノ瀬に寄り添う。
一瀬「沙月さんは、何があっても僕が守る
」
沙月「雄二さん…![]()
」
⑸
陽子「お姉ちゃん、一ノ瀬さんに、工場、案内してあげたら?
」
一瀬「僕も、見学したいです
」
古賀「一ノ瀬さんに工場の良さを知ってもらおう」
従業員と一ノ瀬が作業場に消える。
茂造「沙月さん、あの…!
」
茂造は一ノ瀬の正体を沙月に伝えようとするが、
沙月は茂造に耳を貸さず、作業場に向かってしまう。
茂造は、事務室に向かう陽子に対し、
茂造「待ってください!話があるんです!
」
陽子は事務室に向かう扉の前で、茂造の方を振り向き、
冷たい目で語る。
陽子「お姉ちゃんの幸せを邪魔するの、やめてほしい」
茂造「…」
陽子が奥に消える。
⑴
ロビーには、茂造一人。
茂造「一ノ瀬雄二…俺を拳銃で撃ち殺した男」
茂造「一ノ瀬?…いや、違う!」
茂造「あいつの名前は、金平巧!」
茂造「『違う方法で土地を奪う』、あの時、最後にそう言うてた」
茂造「…そうか、このことか!」
茂造「偽名を使って、沙月さんに近付いたんや!」
茂造「皆に言うても、絶対、信用してくれんし…」
茂造「やけど、二人が結婚したら、金平に工場を奪われる」
茂造「どんな手を使っても、金平の企みを阻止しないと!」
と、作業場への扉に向かう。
⑵
茂造が扉を開けると、扉の先に一ノ瀬が直立している。
茂造の驚きと恐怖感を示すような『バーン!!』という大きな音がして、
茂造「うわっ!
腰を抜かす、茂造。
一瀬「どうしました?驚き過ぎじゃないですか?
一瀬「トイレをお借りしようと思いまして
と舞台上手奥の扉に向かう。
立ち上がる、茂造。
すると、一ノ瀬は奥の扉の手前で立ち止まり、茂造の方を振り返る。
一瀬「茂造さん…と、おっしゃいましたね?
一瀬「どうして、僕と沙月さんの仲を邪魔するんですか?」
茂造「それは…沙月さんを愛しているからです!
一瀬「そうですか。分かりました」
一瀬「…でも、僕は沙月さんのフィアンセですよ?」
一瀬「これ以上、邪魔をしないでください」
⑶
そこに、結衣とランドセルを前に抱えたリンダが帰ってくる。
結衣「ただいま
リン「結衣ちゃんを学校まで迎えにいってきたわ」
一瀬「君が結衣ちゃんか
結衣に近付こうとする一ノ瀬。
そのまま突き飛ばし、一ノ瀬が倒れる。
茂造「近付くな!
騒ぎを聞いた皆が現れる。
⑷
沙月「茂造さん、やめて!
沙月が一ノ瀬に寄り添う。
茂造が皆に説明する。
茂造「一ノ瀬は、和也さんを殺した犯人なんです!」
古賀「嘘はあかんぞ!」
皆が「最低やぞ!」
茂造「嘘やない!ただ、みんなを守りたいだけなんや!
沙月「いい加減にしてよ!出て行って!」
⑸
茂造とリンダが工場入口付近(舞台下手)に、
皆が奥側(舞台上手)に立つ。
茂造「この工場と皆を守らな」
茂造「正体をバラすしかない」
リン「駄目よ!正体をバラしたらどうなるか、分かっているわよね?
」
リン「これしか方法が無い!」
古賀「さっきから、何、わけのわからんこと、言うとんや!」
古賀「これ以上、社長を悲しませたら、許さんぞ!
」
茂造が皆の方を見て、
茂造「これだけは聞いてほしい」
茂造「俺は…」
リン「駄目よ!
」
茂造「俺は…」
リン「…っ!
」
茂造「俺は、伊藤和也や!」
全員「はーっ?」
一瀬「一度、カウンセリングを受けた方がいいですよ?(苦笑)」
茂造「黙れ!
」
茂造「俺は、人の体を借りて蘇った、伊藤和也なんや!」
陽子「やめてーーっ!!(泣)」
陽子「和也さんは死んだの!どうして辛い記憶を呼び起こすのっ!?(泣)」
結衣「…お母さん
」
沙月「出て行って!(泣)」
皆が「出て行け!」
⑹
涼介と浩太が茂造を取り押さえ、外に追い払おうとする。
必死で抵抗し、その場に留まろうとする、茂造。
茂造「陽子、話を聞いてくれっ!
」
茂造「…初めてのデートは、京都の祇園ーっ!
」
陽子が涼介と浩太に対し、
陽子「二人ともやめてっ!」
茂造から手を離す、涼介と浩太。
陽子「どうして、それを…?(涙)」
♪感動的な音楽が流れる
茂造「…」
茂造「陽子が抹茶ソフトを食べながら歩いていて…」
茂造「躓いて、舞妓さんの衣装に抹茶ソフトをベチャっと付けた」
茂造「俺が土下座して謝ったら、許してくれた
」
陽子「これは、私と和也さんしか知らない話よ…(涙)」
茂造「プロポーズの言葉は…(涙)」
茂造「来世も来来世も、君のことを幸せにする」
茂造「共に歩き、共に探し、共に笑い、共に誓い合っていこう」
茂造「僕と結婚してください!」
茂造「そしたら、陽子が、『コブクロの「永遠にともに」のパクリじゃない』」
茂造「『プロポーズに使うのはやめて。その歌、縁起が悪いから』って突っ込んだ」
茂造「でも、プロポーズをOKしてくれた
」
茂造「一番、笑ったのは、結衣の出産の時。(涙)」
茂造「俺が陽子より大きな声で『ヒーヒーフー』って言い始めて」
茂造「そしたら、看護師さんに『お父さん、うるさい!』って怒られた」
茂造「それを聞いた陽子は大爆笑」
茂造「その瞬間、結衣が産まれた
」
結衣「…その話、お父さんが教えてくれた」
⑺
陽子「和也さんなの…?(涙)」
茂造「ああ。(涙)」
陽子「本当に和也さんなのね。(涙)」
結衣「お父さん…(涙)」
茂造に近付こうとする陽子達を
沙月が涙ながらに止める。
沙月「陽子ーっ!体を借りて蘇るなんて、有り得ないのよー!(泣)」
沙月「和也さんは、死んだのっ!!(泣)」
陽子「じゃあ、どうして、和也さんしか知らない秘密を知っているのっ!?(涙)」
陽子「デートのことも、プロポーズのことも、結衣の出産の時のことも!!(涙)」
沙月「それは…」
リン「それは信じられないわよね?」
リン「私の正体が天使って言ったら?」
皆が「天使ーっ!?
」
リン「…当然、そうなるわよね」 ![]()
リン「でも、彼は和也で、私は天使」
リン「世の中には思いもよらないことがあるのよ」
リン「世の中には信じられないこと世界があるのよ」
リン「彼は正体を明かしてはならない条件で現世に戻ってきた」
リン「約束を破った以上、もう、長く留まることはできない」
リン「もうすぐ、彼の体は消滅する」
リン「彼の魂は生まれ変わることなく、永遠の孤独に苛まれ、苦しみ続ける…」
リン「それでも、家族と工場を守るため、自分を犠牲にして、正体を明かした!」
リン「彼は、伊藤和也です!(泣)」
※
ここからは、『茂造の体を借りた和也』を『和也』と表記します。
⑻
陽子「和也さん!(涙)」
結衣「お父さん!(涙)」
親子三人で抱き合う。
和也「辛い思いをさせて、ごめんな。(涙)」
古賀「ほんまに専務なんですね!
」
涼介「だから、皆のプライベートを知っていたんですね!
」
哲郎「だから、俺のために泣いてくれたんですね!
」
浩太「だから、僕に怒った、専務なんですね!
」
沙月以外の皆が和也(茂造)のもとに集まる。
その16に続く