⒚
⑴
白髪混じりの女性(金澤芳江)が現れる。
女性「小百合ー!
」
従業員に小百合という人物はおらず、皆、目を見合わせる![]()
女性「小百合、そんな姿になっても、分かるわよっ!」
哲郎「何しに来たの!?、お母さん」
舞台も観客も驚く![]()
どうやら、哲郎が小百合のよう。
⑵
母親「ずっと、探していたわ!」
母親「帰りましょう!
」
と、哲郎の腕を掴むが、哲郎が振り解く。
母親「恥ずかしくないの!?」
哲郎「私は望んでこうなったの。ほっといて!」
母親「何を言っているの。帰るわよ、小百合っ!」
哲郎「俺は哲郎や!」
♪悲しい音楽が流れる
哲郎「小百合はもうこの世に居ない。(涙)」
哲郎「子供の頃から、女であることに違和感があった」
哲郎「なのに、あなたは『女の子らしくしなさい』と私を責めるだけ」
哲郎「俺は心と体がチグハグで、ずっと、苦しかった」
哲郎「そうするうちにも、体はどんどん成長して…」
哲郎「制服だからと、スカートを着るのが恥ずかしかった」
哲郎「誰にも相談できず、一人で悩んでいた」
母親「それは、あなたの思い込みよ!」
哲郎「あなたは、いつもそう!」
哲郎「俺が勇気を振り絞って、あなたに相談した時も…『あなたの思い込みよ!』」
哲郎「たった一人の肉親に『思い込み』って言われた、俺の気持ちが分かる?」
哲郎「心が引き裂かれるように、苦しく辛かった」
哲郎「だから、嘘を付くのはやめて、生まれ変わったの。(涙)」
母親「何が哲郎よ!情けないっ!!」
茂造「何が情けないんですか!どこが情けないんですか!
」
茂造「哲郎さんは生まれ変わって、今を一所懸命に生きようとしている」
茂造「そんな哲郎さんを否定する…あなたの方こそ、情けないと思いませんか!?」
⑶
母親「…ごめんなさい
」
母親「私も気付いていたの!(涙)」
♪感動的な音楽に変わる
母親「でも、信じたくはなかった。(涙)」
母親「一時の気の迷いと思い込み、見て見ぬ振りをしていた。(涙)」
母親「現実から逃げていた。(涙)」
母親は哲郎に対して、
母親「孤独にして、ごめんなさい!(泣)」
母親「あなたの力になれなくて、ごめんなさい!(泣)」
⑷
古賀が哲郎の母親に対し、
古賀「哲ちゃんはほんまに立派な男です!
」
古賀「辛い仕事も率先して引き受けてくれて、ほんまに助かってる」
他の従業員も続く。
涼介「僕の両足が不自由な時、どれだけ哲郎さんに助けられたか!
」
浩太「僕は哲郎さんのように、男らしくなりたい!
」
沙月「哲ちゃんが居ないと、工場の仕事は捗りません!(涙)」
結衣「哲郎のおっちゃんと仲直りしてほしい
」
陽子「結衣…
」
陽子が後ろから結衣の両肩に手を置き、同じ気持ちであることを伝える。
茂造「お母さん。今からでも、遅くないと思いますよ
」
⑸
母親は哲郎に対し、
母親「今からでも、許してくれるかしら?(泣)」
母親「本当にごめんなさい、小百合…」
母親「…哲郎。(泣)」
母親の言葉を聞き、茂造と古賀が笑顔で肯き合う![]()
哲郎「…(泣)」
哲郎「今、『哲郎』って呼んでくれた。(泣)」
哲郎「ありがとう…(泣)」
母親「哲郎…(泣)」
母子が近付き、抱き合う。
哲郎「ありがとう…(泣)」
母親「哲郎…(泣)」
二人が顔を見つめ合い、
哲郎「ありがとう…『お父さん』。(泣)」 ![]()
![]()
♪感動的な音楽が止まる
全員「えーーっ!!!
」
(すすり泣きが聞こえた観客席から、驚きと笑いの声が起こる![]()
)
再度、親子で抱き合う。
暗転。
♪コミカルな音楽が流れる。
哲郎・沙月・結衣・リンダ以外の従業員の場面。
涼介は復帰に前向きになったようで、
上半身をバスケウェアに着替え、ドリブルしている。
テーブル周りで皆が見守る中、
涼介がシュートを打つが、ゴールリングを外す。
古賀「隠れて練習していたみたいやけど、だいぶ鈍ってるようやな」
涼介「トライアウトまでに仕上げていきます!」
紗弥「ビシビシ行くわよ!
浩太「僕に手伝えることやったら、何でも手伝います!
茂造は陽子の横に座っていて、陽子の肩に頭を寄せ、
グリグリと擦り付けている。
茂造「陽子、一緒に手伝おうな~
陽子は苦笑いしながら、浩太に手招きし、助けを求めている
浩太が茂造を押し退け、
二人の間に入る。
浩太「茂造!何、陽子ちゃんにベタベタしとんねん!
浩太の頭を叩く、茂造。
浩太「痛っ!生意気やねん、新入りのくせに!
⑵
陽子「昨日はバタバタやったけど、」
陽子「涼介君は再起、哲郎さんはお母さんと仲直りして良かった
」
茂造「しかし、哲郎さん、びっくりしたなあ」
茂造「まさか、哲郎さんが小百合さんで、お母さんがお父さんとは…」
陽子「今、『父と娘』としての最後のデートを楽しんでいるわ」
茂造「…どういうこと?」
すると、女性のカツラを被り、ワンピースを着た哲郎と、
バーコードのカツラを被り、スーツを着た母親が現れる。
哲郎「ただいまー!」
茂造「お前ら、コントでもするんか!(苦笑)」
二人「ほっといて!」
母親「ご迷惑をお掛けしました」
母親「今回を最後に、母親と息子として再スタートします」
哲郎「これで隠し事がなくなりました
」
⑶
茂造は険しい顔になり、
茂造「隠し事はまだあるやろ!
」
哲郎「何のことや?」
茂造「しらを切るつもりか!?
」
と、哲郎のリストバンドを取る。
痛々しい注射痕が露わになる。
皆が驚く。
茂造「危険な薬に手を出してるやろ!
」
茂造「証拠もあるんや!」
と、棚から注射器の入った紙袋を持ってくる。
皆に、注射器を見せる、茂造。
哲郎の母親が、
母親「哲郎、なんでそんな薬に手を出したの!?」
母親「これも、私の責任ね。(涙)」
茂造「哲郎さん、警察に行こう!今ならまだ、間に合う!」
と、哲郎の腕を引っ張る、茂造。
哲郎が茂造の手を振りほどく。
哲郎「違うのよ!
」
茂造「何が違うんや!」
哲郎「ホルモン注射よ!
」
哲郎「定期的に男性ホルモンを打たないと、丸みを帯びた女性の体に戻ってしまうの!」
茂造「騙されへんぞ!」
茂造「哲郎さんの異常なリアクション、見たぞ!」
茂造「なあ、皆、見たやろ?」
茂造が皆に同意を求める。
古賀「…あれは、ここ最近、哲郎さんにたまに出る発作や」
茂造「…えっ?発作?![]()
」
茂造「百日前には無かったの?![]()
」
古賀「無かった」
茂造が哲郎を見て、
茂造「…ほんまにホルモン剤なんやな?」
肯く、哲郎。
茂造「心配したんやぞ…(泣)」
茂造「心配した…良かった。(泣)」
涼介「なんで、茂造さん、工場に来たばかりやのに、泣いてんの?」
⑷
外出していた沙月が戻ってくる。
沙月「ただいま
」
沙月は、恋愛が順調なようで、綺麗に着飾っている。
沙月が女装した哲郎を見て、
沙月「今日の哲ちゃん、めっちゃ可愛い
」
茂造「究極の社交辞令やな。(苦笑)」 ![]()
⑸
哲郎の母親が哲郎に、
母親「今日は楽しかった
」
母親「また、食事に行きましょう
」
哲郎「ありがとう、お母さん
」
母親「ありがとう、息子
」
茂造「変な呼び方やな。(苦笑)」
とにかく、親子の関係は修復したよう。