⒗
⑴
茂造が入り口に立ち、哲郎以外の従業員達が中央のテーブル周りに居る。
茂造は皆に睨まれ、輪に加われない。
茂造「みんなの目が冷たい。最悪やー」
茂造「もっと最悪なんは…」
と、奥(舞台上手袖)の方を見る。
リンダが冷やしたお茶を持ち、奥から現れる。
リン「お茶、入れましょうね
」
リンダは作業ズボンに履き替えているが、
ハートが並ぶ、ピンク色の派手なエプロンを着けている。
茂造はリンダに聞こえないように、
茂造「あんなん雇うって、社長、アホちゃうか?」
⑵
陽子が従業員に話す。
陽子「哲郎さん、体調不良で病院に行ったけど、大丈夫かしら?」
涼介「あの哲郎さんが珍しいな…」
古賀「哲ちゃん、皆でフォローしよう!」
⑶
陽子が茂造のもとにやって来て、
陽子「リンダさんは、お前の部屋で住んでもらうからの!
」
茂造「えーっ!
」
陽子「空きの部屋が無いんじゃ!いてまうぞ、こらぁ!
」
茂造の胸ぐらを掴む、陽子。
茂造「…すみません
」
茂造は結衣のもとに行き、
茂造「お母さん、あんなキャラやったん?![]()
」
陽子は、リンダが工場で働くことに、特に納得してないよう。
⑷
古賀達が仕事に戻る。
涼介は陽子に頼まれ、干したタオルを取りに外に向かう。
リンダの登場で立場の無い茂造は、皆に気に入られようとする。
車椅子に座る涼介が出易いよう、茂造が入り口扉を開ける。
茂造「どうぞ!」
しかし、涼介は紗弥香の件で偉そうな口を聞いた茂造を許しておらず、
涼介「礼はせんからな!
」
涼介の頭を叩く、茂造。
涼介「痛っ!
」
涼介がタオルを取りに外に出て行った。
⑸
茂造とリンダ、二人になる。
リン「どうして、そんなに元気が無いの?」
茂造「お前が来たからや!最悪やっ!
」
リン「まだ、気付いてないの?」
天使の声で、リンダが喋る(=女の子の声に合わせ、口を動かす)。
リン『私よ、私。私、天使よ!』
茂造「えっ?天使?![]()
」
リン「だから、『あなたの傍で見守る』って言ったじゃない?」
茂造「なんで、可愛い女の子がニューハーフの汚いおっさんになってんの?」
リン「この体しか、なかったのよ!」
茂造「キスなんかする必要、無かったやろ!」
リン「それで恋人と認められて、あなたの傍に居られることになったのよ」
リン「みんなの信用を得られたんだから、いいじゃない
」
茂造「こっちは信用を失ってんねん
」
⑹
リンダは茂造の部屋の鍵を持っていて、
階段を上がり、茂造の部屋に向かう。
茂造「勝手なこと、すな!」
茂造「待てーっ!」
茂造がリンダを追い、二階に消える。
⒘
誰も居ないロビー。
タオルを洗濯カゴに入れた涼介が戻ってくる。
作業場に向かう扉、事務室に向かう扉の先を見て、
人の気配が無いことを確認する、涼介。
涼介は(舞台上手奥の)物置棚の横に車椅子を止める。
一呼吸置いて、普通に立ち上がる。
⑵
そこに、茂造が二階の階段付近に現れる。
茂造「あいつ、鍵閉めて、入れてくれへん
」
茂造は普通に立っている涼介を見てしまう。
茂造は涼介に聞こえないよう、小声で、
茂造「…えっ?立ってるやん。…どういうこと?![]()
」
涼介は二階の茂造の存在に気付いておらず、
ドリブルし、ゴール目掛けてロングシュートを打つ。
しかし、ゴールリングを大きく外す。
茂造「めっちゃ、下手やん。(苦笑)」
茂造「リングにも当たれへんって。(苦笑)」
⑶
調理場の方から食器の割れる音がする。
陽子「結衣、何やってるの?」
声を聞いた涼介は焦る。
走って車椅子の位置に戻り、バスケットボールを置き、車椅子に座る。
陽子がロビーに現れる。
陽子「涼介君。結衣がお皿を割ったみたい」
涼介「片付け、手伝います
」
涼介と陽子が奥に消えた。
⑷
階段の上に、茂造一人。
茂「立ってたよな?
」
茂造「どういうことや?
」
茂造「昨日、ほんまに涙流してたよな?あれ、何やったん?
」
茂造「えらいもん、見てもうた
」
茂造「誰に言うたら…そや、天使に相談や!」
茂造が二階奥に消える。
⑸
誰も居ないロビー。
茶色の紙袋を持ち、苦しそうな表情をした哲郎が、入り口から現れる。
作業場に向かう扉、事務室に向かう扉の先を見て、
人の気配が無いことを確認する、哲郎。
哲郎は椅子に座り、まるで禁断症状のように震えながら、
チューブを口に咥え、左腕に潜らせ、左腕をくくる。
茂造が二階階段辺りに現れ、哲郎を見て、
茂造「…えっ?何、あれ?![]()
」
左腕のリストバンドを外し、注射痕の残る腕の血管を叩く。
紙袋から、注射器を取り出す。
茂造「手、震えてるやん
」
茂造は小声で
茂造「…テレビの『警察24時』で観たことがある
」 ![]()
哲郎は茂造に気付いていない。
茂造「危険なドラッグちゃうの?
」
注射を打つ、哲郎。
哲郎「あっ…、あっ…」
茂造「快感、始まってるやん
」 ![]()
⑹
車の止まる音がして、
哲郎は注射器を紙袋に入れ、上手奥のゴミ箱に隠す。
車を運転していたのは、沙月のよう。
沙月「ただいま~」
哲郎「(高音かつ勢いのある感じで)
社長、おかえりなさい!」
哲郎の喋りは妙に高音で、明らかにテンションがおかしい。
沙月「陽子から、哲ちゃんが体調不良って聞いたわよ」
沙月「でも、元気そうで良かった
」
茂造「薬が効いただけや。(苦笑)」 ![]()
⑺
沙月の声を聞いた従業員がロビーに現れ、
茂造も一階に下りる。