茂造が入り口に立ち、哲郎以外の従業員達が中央のテーブル周りに居る。

茂造は皆に睨まれ、輪に加われない。
茂造「みんなの目が冷たい。最悪やー」
茂造「もっと最悪なんは…」

と、奥(舞台上手袖)の方を見る。

リンダが冷やしたお茶を持ち、奥から現れる。
リン「お茶、入れましょうね
ウインク

リンダは作業ズボンに履き替えているが、
ハートが並ぶ、ピンク色の派手なエプロンを着けている。

茂造はリンダに聞こえないように、
茂造「あんなん雇うって、社長、アホちゃうか?」


陽子が従業員に話す。
陽子「哲郎さん、体調不良で病院に行ったけど、大丈夫かしら?」

涼介「あの哲郎さんが珍しいな…」
古賀「哲ちゃん、皆でフォローしよう!」

 


陽子が茂造のもとにやって来て、
陽子「リンダさんは、お前の部屋で住んでもらうからの!
ムキー
茂造「えーっ!
ガーン
陽子「空きの部屋が無いんじゃ!いてまうぞ、こらぁ!
ムキー
茂造の胸ぐらを掴む、陽子。
茂造「…すみません
アセアセ

茂造は結衣のもとに行き、
茂造「お母さん、あんなキャラやったん?
キョロキョロアセアセ

陽子は、リンダが工場で働くことに、特に納得してないよう。


古賀達が仕事に戻る。

涼介は陽子に頼まれ、干したタオルを取りに外に向かう。

リンダの登場で立場の無い茂造は、皆に気に入られようとする。
車椅子に座る涼介が出易いよう、茂造が入り口扉を開ける。
茂造「どうぞ!」

しかし、涼介は紗弥香の件で偉そうな口を聞いた茂造を許しておらず、
涼介「礼はせんからな!
えー
涼介の頭を叩く、茂造。
涼介「痛っ!
アセアセ

涼介がタオルを取りに外に出て行った。


茂造とリンダ、二人になる。
リン「どうして、そんなに元気が無いの?」
茂造「お前が来たからや!最悪やっ!
えー

リン「まだ、気付いてないの?」
天使の声で、リンダが喋る(=女の子の声に合わせ、口を動かす)。
リン『私よ、私。私、天使よ!』
茂造「えっ?天使?
キョロキョロアセアセ
リン「だから、『あなたの傍で見守る』って言ったじゃない?」


茂造「なんで、可愛い女の子がニューハーフの汚いおっさんになってんの?」
リン「この体しか、なかったのよ!」

 

茂造「キスなんかする必要、無かったやろ!」

リン「それで恋人と認められて、あなたの傍に居られることになったのよ」
リン「みんなの信用を得られたんだから、いいじゃない
ウインク
茂造「こっちは信用を失ってんねん
タラー


リンダは茂造の部屋の鍵を持っていて、
階段を上がり、茂造の部屋に向かう。
茂造「勝手なこと、すな!」
茂造「待てーっ!」
茂造がリンダを追い、二階に消える。

 

 


誰も居ないロビー。

タオルを洗濯カゴに入れた涼介が戻ってくる。
作業場に向かう扉、事務室に向かう扉の先を見て、
人の気配が無いことを確認する、涼介。

涼介は(舞台上手奥の)物置棚の横に車椅子を止める。
一呼吸置いて、普通に立ち上がる。
 
(観客の驚きの声が上がるびっくり)

 

横にあるバスケットボールを取る、涼介。

 


そこに、茂造が二階の階段付近に現れる。
茂造「あいつ、鍵閉めて、入れてくれへん
タラー

茂造は普通に立っている涼介を見てしまう。
茂造は涼介に聞こえないよう、小声で、
茂造「…えっ?立ってるやん。…どういうこと?
キョロキョロアセアセ

涼介は二階の茂造の存在に気付いておらず、
ドリブルし、ゴール目掛けてロングシュートを打つ。

しかし、ゴールリングを大きく外す。
茂造「めっちゃ、下手やん。(苦笑)」
茂造「リングにも当たれへんって。(苦笑)」


調理場の方から食器の割れる音がする。
陽子「結衣、何やってるの?」

声を聞いた涼介は焦る。
走って車椅子の位置に戻り、バスケットボールを置き、車椅子に座る。

陽子がロビーに現れる。
陽子「涼介君。結衣がお皿を割ったみたい」
涼介「片付け、手伝います
アセアセ

涼介と陽子が奥に消えた。


階段の上に、茂造一人。
茂「立ってたよな?
キョロキョロ

茂造「どういうことや?
キョロキョロ

茂造「昨日、ほんまに涙流してたよな?あれ、何やったん?キョロキョロ
茂造「えらいもん、見てもうた
タラー
茂造「誰に言うたら…そや、天使に相談や!」

茂造が二階奥に消える。


誰も居ないロビー。
茶色の紙袋を持ち、苦しそうな表情をした哲郎が、入り口から現れる。

作業場に向かう扉、事務室に向かう扉の先を見て、
人の気配が無いことを確認する、哲郎。

哲郎は椅子に座り、まるで禁断症状のように震えながら、
チューブを口に咥え、左腕に潜らせ、左腕をくくる。

茂造が二階階段辺りに現れ、哲郎を見て、
茂造「…えっ?何、あれ?
キョロキョロアセアセ

左腕のリストバンドを外し、注射痕の残る腕の血管を叩く。
紙袋から、注射器を取り出す。
茂造「手、震えてるやん
ガーン

茂造は小声で
茂造「…テレビの『警察24時』で観たことがある
ガーン笑い泣き
哲郎は茂造に気付いていない。
茂造「危険なドラッグちゃうの?
ガーン

注射を打つ、哲郎。
哲郎「あっ…、あっ…」
茂造「快感、始まってるやん
ガーン笑い泣き


車の止まる音がして、
哲郎は注射器を紙袋に入れ、上手奥のゴミ箱に隠す。

車を運転していたのは、沙月のよう。
沙月「ただいま~」
哲郎「
(高音かつ勢いのある感じで)
右上矢印社長、おかえりなさい!
哲郎の喋りは妙に高音で、明らかにテンションがおかしい。
沙月「陽子から、哲ちゃんが体調不良って聞いたわよ」
沙月「でも、元気そうで良かった
照れ
茂造「薬が効いただけや。(苦笑)」
笑い泣き


沙月の声を聞いた従業員がロビーに現れ、
茂造も一階に下りる。

 
 
その13に続く