⒏
⑴
店を閉めることを靖子達に任せ、
チケットを受け取りに向かおうとする、けんじ。
そこに、交番勤務の警察官・小西(小西武蔵)が現れる。
小「お昼に、この近辺で引ったくりがありまして…」
小「それが大将そっくりらしいんです」
清「それだったら、僕ではないですよ」
小「もう少し、話を聞かせてもらえますか?」
清「今日は急いでるんで、すみません」
小「怪しいですね」
店を出ようとするけんじの前に、小西が立ち塞がる。
小「今日はどこに居ましたか?」
安「大将なら、ずっと、お店に居ましたよ…出前以外は」
清「安尾。お前はっ!」
小「怪しいですね」
清「とにかく、僕じゃないですから!」
清「もう、いいですか?」
小「あっ、もう一つ」
小「隣町の銀行に、二人組の強盗が入りまして」
小「逃走中ですので、気をつけてください」
清「分かりました!もう、いいですよね!?」
小「…」
次の台詞を忘れたか、少しの間が出来る。
けんじがお店を出ようとするが、小西が体を掴んで止める。
清「止めるな!」
小「ちょっと、待ってください!」
清「話が終わったような雰囲気、出してたやん。(苦笑)」
小「出してません。(苦笑)」
小「お店を探している人が居まして、お連れしました」
⑵
小西に呼ばれ、登場したのは、
全身スパンコールでショートパンツ姿の、
昭和のアイドルのような男性・ヒロ(吉田ヒロ)。
赤色の派手なスポーツバッグを持っている。
ヒロは店に入るや否や、
ヒ「きつねにちは!…あっ、こんにちは!」
清「…」
けんじは、舞台上手に居る安尾の方を見て、
け「目、合わせたら、あかん奴や。(苦笑)」
⑶
ヒロはスポーツバッグを置き、店の中央辺りまで歩む。
すると、『徹子の部屋』のオープニングテーマのメロディーで、
ヒ「♪キームチ キムチ キームチ キムチ」
ヒ「♪ルールールールールー」
ヒ「どうも、黒柳徹子です」
清「…」
けんじは、舞台上手に居る安尾の方を見て、
け「やばい奴が来た。(苦笑)」
⑷
けんじは小西に対して、
清「この人、連れ帰ってもらえませんか!」
小「失礼します!」
小西は、けんじの声には耳を貸さず、一人で去って行く。
けんじがヒロの姿をまじまじと見て、
清「犯罪起こす奴や。(苦笑)」
清「足、細過ぎる。(苦笑)」
清「素足でバスケットシューズなんか、見たことない。(苦笑)」
清「股間の盛り上がりも卑猥やわ。(苦笑)」
ヒ「韓国から来ましタ」
ヒ「韓国では流行ってるんデス」
清「ほんまー!?」
⑸
ヒ「日本、うどん、好き」
ヒ「体験教室、お願いしまス」
と、ヒロが唐突に、
ヒ「♪ナームル ナムル ナームル ナムル」
ヒ「♪ルールールールールー」
ヒ「どうも、黒柳徹子です」
けんじは、舞台上手に居る安尾の方を見て、
け「あいつ、韓国でも嫌われてると思うわ。(苦笑)」
けんじがヒロに対して、
清「毎週土曜に教室を開いてますんで、土曜に来てもらえますか」
ヒ「…」
ヒ「♪サームゲタン サムゲタン サームゲタン サムゲタン」
ヒ「♪ルールールールールー」
ヒ「どうも、黒柳徹子です。(苦笑)」
清「照れるんやったら、やるな。(苦笑)」
安「あの人が来てから、汗の量が尋常じゃないいです。(苦笑)」
⑹
けんじを挟んで、ヒロと安尾が同時に、
ヒ「♪キームチ キムチ…」
安「さっきから、『キムチ、キムチ』って…」
清「二人同時に喋ったら分からんから、一回黙ろうか。(苦笑)」
清「交通整理するから。(苦笑)」
⑺
けんじがヒロに対し、
清「忙しいんで、帰ってもらえますか?」
ヒ「♪ナームル ナムル…」
けんじはヒロの声に被せるように、
ヒ「早よ、帰れ!」
と、ヒロを押すように『蹴り』、強制的に帰らせる。
⑻
ヒロはスポーツバッグを置いたまま、帰ってしまった。
清「また、取りに来るやろから」
と、バッグをレジ裏に保管する。
⒐
⑴
けんじが店を出ようとすると、
覆面マスクを被り、バッグとナイフを持った小柄な男(松元政唯)が走ってくる。
走ってくる覆面男の後ろから、花子の声が聞こえる。
花「引ったくりよ!捕まえて!」
覆面男は舞台上手に立ち、ナイフを取り出すが、
真「さっき、話していた引ったくり犯かも!」
真「私、警察官を呼びに、交番に行ってくるわ!」
と、真希が店を出て行く。
⑵
チケット入手のため急いでいるけんじは、
清「相手、弱そうやし…安尾、後は頼んだから」
安「そんな、無理です」
安「大将、何とかしてください!」
清「…もう、しゃあないなあ」
覆面男がナイフを突き出すが、けんじはナイフを避け、あっさりと殴り倒す。
覆面男は、花子から奪ったバッグとナイフを落とす。
⑶
安尾は倒れて弱った覆面男を起こして殴り倒し、偉そうにする
そして、花子を抱きしめる。
清「気色悪いわ」
安尾は更に、花子の肩に手を回し、得意げな顔をする。
清「『無理です』言うとった奴が、何、カッコつけとんねん!」
けんじが安尾と花子に気を取られている隙に、覆面男が逃げる。
⑷
ナイフとバッグを拾う、けんじ。
そこに、警察官の小西がやってくる。
小西はナイフとバッグを持つけんじを見て、
小「やっぱり、お前が犯人かーっ!」
引ったくりの犯人と間違えられたけんじは
小西に背後から押さえられ、連行されていく。
清「安尾、何か言うてーっ!!」
安「…仕事、仕事!」
奥の部屋に消える、安尾。
清「安尾ーっ!」
暗転。
⑴
けんじ・靖子・安尾・真希・花子、五人。
清「警察官には、何とか誤解は解けたけど…」
清「安尾、なんで、説明してくれんかったの?」
安「『仕事せえ!』、言われたから…」
清「さっきは、仕事するタイミングちゃう」
清「それより、チケット、急がな!」
⑵
そこに、借金取り・帯谷が再来する。
帯「花子、用意できたか!?」
花「まだ、用意できてないんです」
帯「ほな、事務所まで来てもらおうか」
帯谷が花子を無理矢理連れて行こうとする。
けんじはその様子を見ながらも、
清「花ちゃん、頑張ってね」
と、チケットの確保を優先し、外出しようとする。
花「薄情もん!助けろや!」
真「私からもお願いします!」
清「もう…」
⑶
けんじが戻ってきて、帯谷に対し、
清「無いもんはしゃあないでしょ?待ったってくださいよ!」
帯「お前、誰にものぬかしとんねん!」
帯谷はけんじを殴り倒し、更に足等に蹴りを加える。
け「痛っ!」
安尾は両膝に手を当てて、帯谷に痛めつけられるけんじを楽しそうに眺め、
安「ぼっこぼこや!」
⑷
帯谷が花子を連れて行こうとする。
花「一週間だけ待ってください!」
花「積み立て貯金が満期になるんです」
帯谷が花子の服から手を離す。
帯「分かった」
帯「一週間だけ待ったるわ」
帯谷が去っていく際に、
帯「ちゃんと用意しとけよ…きつねうどん!」
皆「…」
客「…」
帯「…」
帯「…(小声で→)あかん」
帯谷が去った。
清「また、こんな空気にしやがって。(苦笑)」
清「さっきの韓国人で、もう充分や!(苦笑)」
⑸
けんじが花子に怒る。
清「積み立て貯金があるんやったら、先に話を出して!」
花「ごめんなさい」
花「…ちゃんと返せるように、パチスロ行ってくるわ」
清「その金で返せ!」
花子が店から出て行った。