⒌
⑴
借金取りとのやりとりを見ていた由美が立腹している。
末「問題のある家のお嬢さんと雅斗を結婚させるわけには行きません」
末「雅斗、帰りますよ」
雅「ちょっと、待ってください!」
雅斗は由美を説得すると言い、(舞台下手の)休憩室に向かう。
幸恵も一旦部屋に戻る。
⑵
立腹する和久。
和「親父の奴、皆に迷惑掛けやがって!」
和「絶対に許さん!」
⑶
そこに、和久と幸恵の父・昌雄が帰ってくる。
平「すまん…」
和「親父!」
和久より前に荒木が昌雄の前に行き、
ア「『すまん』で済むかーっ!」
ア「駆け落ち、絶対に許しませんからねーっ!」
平「すいません」
ア「いぃよぉ~」
辻「許す許さんは和久君の気持ちや!」
辻「下がっとけ!」
ア「下がります!」
⑷
辻本が和久に対し、
辻「和久君、お父さんが借金した理由を聞かな」
辻本は昌雄に対し、
辻「一先ず、椅子に座ってください」
しかし、昌雄の前にある椅子に座ったのは、荒木。
辻「なんで、お前が座るんや!」
ア「…えっ?」
辻「勤務中や!立て!」
⑸
辻本が昌雄に尋ねる。
辻「借金って、一体、何があったんですか?」
平「駆け落ちした女性とは別れました」
平「金の切れ目が縁の切れ目で…」
和「だから、金目当てやと反対したのに!」
平「今更…」
その時、(劇場外の)救急車のサイレンが鳴り響き、黙ってしまう、昌雄。
辻「救急車の音に負けるな!(苦笑)」
平「今更…ホテルに、帰るに帰…」
想定外の出来事に動揺し、台詞を詰まらせる、昌雄。
辻『今更、ホテルに帰るに帰られへん。生活のために借金した』
辻「…そういうことやな?」
平「…」
平「どうすることも出来ずに…」
辻「マイペースに進める奴やな。(苦笑)」
平「どうすることも出来ずに、帰って来たんや」
話を聞いていた荒木が昌雄に対し、
ア「だからって、死ななくていい!」
辻「ちょっと待て!誰も死ぬ話、してないぞ!」
辻「お前の妄想や!」
⑴
昌雄が和久に懇願する。
平「一千万、何とかならんやろうか」
ア「何とか出来るわけ、ないでしょ!」
辻「和久君との問題やから、黙ろうか」
和「お前のせいで、幸恵の結婚が破談になりかけてるんやぞ!」
和「ここにあんたの居場所は無い」
和「今すぐ、出て行け!」
⑵
平「…和久、聞いてくれ」
平「結婚したい人がおるんや」
ア「はぁ~!?」
ア「何考えてんの!」
ア「ホテル捨てて、借金作って、その借金を払ってくれ?」
ア「その上、結婚!?」
ア「…パーティしましょ」
辻「なんでそうなんねん!?」
辻「この状況では誰も行かんぞ!」
辻「下がっとけ!」
ア「下がります!」
⑶
昌雄は結婚を考えている女性を連れてきているという。
辻本が昌雄に対し、
辻「呼んでいただけますか?」
すると、荒木が玄関に向けて、
ア「カモ~ン!」
辻「お前に頼んでない!」
⑷
昌雄の恋人のサキ(五十嵐サキ)が現れる。
サキのお腹を見た荒木は、妊娠していると思い込み、
ア「…蹴った」
サ「…」
サ「…自腹です」
ア「えっ?炭水化物?…今の、炭水化物が蹴ったの?」
昌雄とサキが和久に土下座する。
平「助けてくれ!」
⑸
そこに、立腹する由美と、由美を追いかける雅斗が奥から現れる。
由美は土下座する二人を見て、
末「何、やってるの!」
荒木が土下座する二人を見ながら、由美に対し、
ア「こちらがホテルを捨て、ホステスの女性と駆け落ちし、別れ…」
ア「借金し、恋人を作り、借金の肩代わりをお願いしている、和久くんのお父様」
ア「…と、お父様の恋人です」
ア「ご紹介させていただきました」
⑹
末「情け無い!…帰らせていただきます!」
ホテルを出ようとする由美を止める、荒木。
ア「ちょっと、待ってください!」
ア「事情は分かりませんが…」
辻「お前が要らんこと、言うからや!」
末「帰ります!」
ア「では、お帰りください」
辻「荒木!」
由美と雅斗が帰ってしまった。
辻「荒木、お前が連れ戻してこい!」
ア「わっかりましたー」
荒木もホテルを出て行った。
辻「あいつは、ほんまに…」
⑺
和久は昌雄に対し、
和「今更、帰ってきやがって!」
和「二度と顔を見たくない!」
と言い、奥の部屋に去ってしまう。
⑴
辻本・松浦・昌雄・サキ、4人の場面。
幸恵が奥から現れる。
幸「お父さん」
昌「…幸恵」
幸「私は、お父さんとお兄ちゃんに仲直りしてほしい!」
辻「幸恵ちゃん、どんだけええ子なんや」
⑵
親子を仲直りさせ、幸恵を結婚させるため、辻本が作戦を練る。
それは、
①松浦が和久を呼ぶ
②誰か(=A)が「温泉水に髪の毛が入ってるやないか!」と和久に因縁を付ける
③和久がAに謝る
④Aは「謝って済むなら、警察は要らん!」と和久の胸ぐらを掴む
⑤昌雄がAに「殴るなら、俺を殴れ!」
⑥Aは昌雄に「お前、誰や?」
⑦昌雄は「父親です」
⑧Aは「息子を愛する父親の愛に免じて許す」
⑨その姿を見た和久が昌雄を許し、借金を肩代わりする
⑩借金が無くなれば、由美も雅斗と幸恵の結婚を認める
というもの。
⑶
辻「問題は因縁を付ける役やな」
そこに、客の玉置(玉置洋行)とゆう(小林ゆう)がやってくる。
玉「予約していた、玉置です!」
皆が玉置を見て、
皆「おったー!」
玉置は話を聞いていたようで、
玉「嫌ですよ?、因縁を付ける役なんて」
平「お願いします!」
ゆ「お父さん。困っている人は助けないと」
玉「それもそうやな」
玉「分かりました。やりましょう!」
⑷
玉置がテーブルに座り、温泉水を置く。
髪の毛が必要なため、辻本が松浦にお願いする。
辻「すまんけど、一本だけかまわん?」
松「分かりました」
松浦が自分の髪を掴むと、掌からはみ出る程の髪が抜ける。
驚く、辻本。
辻「えーっ!?」
辻「景子ちゃん、悩んでんの!?病気!?一緒に病院、行こ!」
松浦は何も言わず、和久を呼んでしまう。
辻「呼んでもうた!」
急いで、髪の毛の束をグラスに入れる。
⑸
和久が現れる。
本番スタート。
玉置が和久に因縁を付ける。
玉『温泉水に髪の毛が入ってるやないか!』
和久は髪の毛の量を見て、
和「こんなに髪の毛入るわけないやろ!」
玉『謝って済むなら、警察は要らん!』
和久の胸ぐらを掴む、玉置。
辻本が小声で、
辻「謝ってないぞ」
⑹
そこに、由美と雅斗を連れ返してきた荒木が戻ってくる。
荒木は胸ぐらを掴んでいる玉置を見て、止めに入る。
ア「和久さんに、何やってんの!」
ここで、昌雄が出てきて玉置に言うはずが、間に居る荒木に対し、
平『殴るなら、俺を殴れ!』
言われた通り、荒木が昌雄を殴る。
⑺
荒木は玉置に対し、
ア「警察に突き出しますよ!」
玉「警察は勘弁してください!親子を仲直りさせる芝居を頼まれたんです!」
ア「誰に?」
玉「そこの平山さんに」
和「芝居やと!?絶対にゆるさんからな!」
和久が昌雄を殴る。
由美は呆れ、雅斗を連れて帰る。
ア「何でこうなったんや?」
辻「お前や!」
暗転。