私が入っていたカルトの名前、それは「ベストグループ」だ。
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そもそも、ベストグループはカルトなのか?
学術的に見て行こうと思う。
今回は、ベストグループにおけるカリスマ的支配があったのか、そしてそれはなぜ強力なのかについて検討したい。
組織類型(ウェーバー理論)
マックス・ウェーバーは支配の正統性を3つの分類に分けた。
1.伝統的支配
根拠:昔からそうだから
例:天皇制、王政、家父長制
2.合理的支配
根拠:ルールがあるから。
例:国家、会社、裁判所
3.カリスマ的支配
根拠:その人が特別だから。
→超人的・神的・特別な資質を持つと信じられる人物への服従
これは、実際に特別かどうかではなく、信じられているということ。
カリスマ的支配の特徴
ウェーバーによると、カリスマ的支配には4つの特徴があり、下記→にてベストグループの実態と照らし合わせてみる。
1.個人への絶対的帰属
制度ではなく「人物」への忠誠
→ 教祖(ベストグループでは大先生と呼ばれる)=神として忠誠を誓う。具体的には、「大先生を信じ愛します」と永遠に唱えさせられる。本当に、永遠に。唱えることで全てが良くなると教えられる。
2.批判困難
教義ではなく「教祖の言葉」が最終判断
→教祖(大先生)=神なので、彼が発する言葉は神の言葉として受け取る。大先生の一言でいろんな決定が為される。
3.非日常性
奇跡、啓示、特別な力の主張
→教祖(大先生)は神の力を持っており、病気を癒したり、幸せになれるエネルギー(命のエネルギーと呼ばれる)を与えることができると言われている。
4.反証不能性
疑問は信仰不足として処理される
→大先生を疑う=悪魔側の人間、と言われる。大先生を信じることで、死後素晴らしい世界に行けると言われる。
これらを見ていくと、全てに当てはまるベストグループは典型的なカリスマ的支配であることがわかる。
カリスマ的支配はなぜ心理学的に強力なのか
1.不確実性への不安(不確実性低減理論)
人は、
・将来が不安
・自分の価値がわからない
・人生の意味に迷う
時に強いストレスを感じる。
カリスマ的指導者は、
「世界はこうだ」「あなたはこう生きるべきだ」
と、明確な答えを提示する。
すると、曖昧さが消え、不安が減り、強い安心感が生まれる。
→ベストグループにおける実態は下記のとおり。
・教祖(大先生)は生きる意味を「ベストグループの使命」※1としていた
・生き方の指針を「ベストの指針」※2とし、提示していた
・世界の本質や死後の世界を研修で教えていた
上記より、本項目に当てはままることがわかる。
※1:ベストグループの使命とは、下記のとおり。
「日本が道徳に満ちた国になることと命を大切にする国になる事により、真理の国になることを心から願い、遂行させていただきます。」
※2:ベストの指針とは、下記ページ参照のこと。
2.認知的負荷の軽減
人生は複雑で、自分で考え続けるのはエネルギーがかかる。
カリスマがいると、
・判断を委ねられる
・道徳基準が明確
・迷わなくて済む
これは、心理学でいう認知的省エネにあたる。
強い指導者は脳の負担を軽減してくれる存在になる。
→ベストグループでは、人生に迷った時はベストグループや大先生を一番にした生き方にするにはどう選択すればいいか考える、と教えられる。そのため、本項目も当てはまることがわかる。
3.権威への服従(ミルグラム実験)
スタンリー・ミルグラムの有名な実験より、人は権威者の命令にかなり従うことが示されている。
理由としては
①自分の責任を外部化できる
②専門家だから正しい、と思える
カリスマは、
・神に近い
・特別な力がある
・選ばれた存在
とされることで強い権威性を獲得する。
→ベストグループにおけるカリスマ、つまり教祖(大先生)は、自身のことを神と同一の存在と言い、病気を癒すなど特別な力があるとし、サイババから選ばれた存在であると言っていたため、本件も当てはまることがわかる。
4.社会的同一化(社会的アイデンティティ理論)
人は、「自分がどの集団に属しているか」で自己評価を作る。
カリスマ的集団では、
・私たちは選ばれた存在
・外部は迷っている
・教祖は我々の象徴
教祖は単なるリーダーではなく、集団そのものの象徴になる。
すると、教祖への攻撃は「自分への攻撃」に感じられる。だから批判を受け入れにくくなる。
→ベストグループでは、選ばれた人しかいない、ベストグループに関わっていない人は悪魔側の人であると教えられている。そのため本項目も当てはまることがわかる。
5.感情の同期(情動感染)
集団で、同じ感情を共有する行為をすることは感情を強く同期させる。
脳科学的には、オキシトシン(結びつきホルモン)/ドーパミン(報酬系)が分泌されやすくなる。そしてカリスマは強い感情体験の中心にいる存在になる。感情が強いほど、記憶も強固になる。
→ベストグループでは、泣く/歌う/土下座をするなど感情を共有する行為をする。特に正会員以上になると本部における研修や朝の儀式において上記の行為が多く見られる。そのため、本項目も当てはまることがわかる。
6.認知的不協和
人は「自分の考え・信念・行動」が矛盾すると強い不快感(=不協和)を感じる。そして人はその不協和を減らそうとする。
不協和を減らす3つの方法
①行動を変える
「やっぱり間違っていた」と認めて離れる。しかしこれは、大きな損失を認めることとなる。
②認知を変える(最も起こりやすい)
「これは価値ある投資だった」
「批判者は理解していない」
と、自分の判断を正当化する。
③新しい理屈を足す
「試練だからこそ意味がある」「迫害されるのは真実だから」
投資が大きいほど②が起きやすい
これを努力の正当化という。
投資とは、
・経済的損失
・時間の損失
・プライドの損失
・人間関係の崩壊
などが挙げられる。
損失が大きいほど、「ここは正しい」と信じ続けた方が心理的に楽になる。
→ベストグループの実情と照らし合わせてみると、
・経済的損失:多額の献金や多額の商品購入
・時間の損失:長時間の研修や合宿
・プライドの損失:儀式による土下座
・人間関係の崩壊:ベストグループの行事で忙しくなり、家庭や友人関係が崩壊する
ということがわかる。そのため、信者は②認知を変えるが起こりやすくなっていることがわかる。
7.救済と恐怖の二重構造
①救済と恐怖の二重構造とは
同じ対象(教祖や教団)が、
・最大の安心と救いの源
・最大の破滅と恐怖の源
になる状態のこと。
つまり、
「あなたを救えるのは私だけ」
「でも疑えば終わる」
と言ったメッセージが同時に存在する。
同じ対象から愛と恐怖が出ることがポイント
②救済と恐怖の二重構造が強力な理由(愛着理論)
人間の脳はもともと、養育者(親)に対して、
・安心源
・罰の源
の両方を感じる構造になっている。
これに似たものを与えられると、離れられない対象になる。
③断続的強化
行動心理学の言葉で、報酬が毎回もらえる場合よりもいつもらえるかわからない場合の方が依存が強くなる。
例として、パチンコ、スロット、SNSの通知が挙げられる。たまに当たるからやめられなくなる。
→ベストグループにおいては、教祖(大先生)から、不定期に名指しで褒められることと叱られることがある。信者はまさにこのパターンに陥り、離れられなくなる。
まとめ
以上のことから、教祖(大先生)はベストグループにおけるカリスマであり、信者は大先生とベストグループに依存してしまう構造となっていることが学術的にわかる。