先日の記事(https://ameblo.jp/udon36724326/entry-12402464662.html?frm_id=v.jpameblo&device_id=e68e2cded56d44848026f2a5f72d76b9)
でも触れたが、ドラマ「探偵が早すぎる」に感化され、同原作者の小説「聖女の毒杯」を買ってしまった。


後から知ったのだがこれは「その可能性はすでに考えた」シリーズの第2作目で、前作も読了した上で今作に挑んだ方が面白さが増しそうだ。

とはいえ、今作のみを読んでも十分内容は理解できるし、結論から言うと非常に楽しめた


何より読者に優しい

登場人物一覧表に加えて、時系列の表や屋敷図、とにかく情報が整理されているので文字を追うのが苦手な読者でも安心である。

逆にここまで親切でも良いのか?と思わなくもないが、より広い読者層がこの練りに練られた極上のトリックを味わえるなら正しい判断だ。


『聖女の毒杯』は2017年本格ミステリ・ベスト10(原書房)にて第1位を獲得している。(これがどれほど権威あるランキングなのかは知らないが...)

ということもあり、とにかく本格も本格、大本格ミステリーなのだ。


悪魔の証明をご存知だろうか。
「存在する証明」よりも「存在しない証明」の方が遥かに困難で、それゆえ後者は悪魔の証明と言われる。

「その可能性はすでに考えた」は、まさにこの悪魔の証明に取り掛かる前衛的な推理小説である。


世の中に探偵は数多くあれど、全てのトリックの否定に挑む探偵はそうはいないはず。

主人公である上苙丞は「奇蹟の実在の証明」に執念を燃やす異質な青髪の探偵だ。
事件が奇蹟によって引き起こされたことを示すために、人為的な可能性を全て否定することに生きがいを感じている。

ネタバレになるのでそう多くは語れないが、彼が考えられるありとあらゆる容疑者×手法のパターンを列挙し、それら全てが矛盾することを証明していく様子は読んでいてとても痛快だった。


同じ盃を回し飲みしたはずの7人と1匹。
しかしそのうち命を落としたのは3人と1匹。

なぜその3人が?なぜ犬が?誰がやったのか?誰に罪を被せようとしたのか??

それとも本当に...これは奇蹟だったのか?



作中で様々な人物が様々な推理を展開していくが、どれも確かに本文をよく読めば読者にも思いつかないこともないものだ。(僕には無理)

「探偵が早すぎる」でも思ったが、やはり(言われてみればそのトリックがあったか!)と思わせられるものこそ真の推理作品だと言える。

実はあれもこれも全てが伏線になっていて、それが解き明かされていくたびに井上真偽という人間の凄みを感じさせられる。


彼の他の作品を読む時には、推理パートに移る前に自分自身でその謎を紐解いてみたくなった。
彼の頭に近づいてみたくなった。


早すぎる探偵、トリックを否定したがる探偵、、井上真偽が生み出す新たなる探偵は次世代を代表する存在になっていくのかもしれない。

ありきたりから抜け出した、その新世界に触れてみたい人は是非一度手にとって読んでみてほしい。



ではでは。