途中で投げ出さないよう、意欲のあるうちに一気にガーッと書いてしまいます。
 今回は、二次試験についてのご説明です。また、長くなってしまうかもしれませんが、お付き合いいただけると嬉しいです。
 二次試験は、専門試験(記述式)、政策討議試験、人事院面接の3つから成り立っています。
 専門試験(記述式)の前には、就職試験や教習所でやるような性格テストもありますが、これは試験でもなんでもないので、思った通りにぱぱっとマークして時間内に提出すれば問題ありません。聞くところによると、後の人事院面接の際に参考にしているという噂もあるようですが、真偽は定かではありません。「何か意味があったんだろうか」と今でも疑問に思っています。
 おそらく、「明らかにダメな人」をマークするくらいの意味しかないのでしょう。質問数は多めなのですが、進めていくと「似通った質問」がちょくちょく出てきます。そういった質問で、一方ではこう答えたのに、他方では全く逆の回答をしている、というようなことが重なると、「よく見せようとして嘘をつく傾向がある」と見られてしまうですとか、そういうものなのかもしれません。
 こればっかりは、なにがなんだかさっぱり分かりませんし、対策をするようなものでもありませんので、気にしないことにしましょう。
 では、専門試験(記述式)、政策討議試験、人事院面接について、以下で説明いたします。


【専門試験(記述式)】
 まず、専門試験(記述式)について。
 これは、司法試験受験生にもイメージしやすいようにいえば、「論文試験」です。ある概念や簡単な事例について、文章で答案を書いて解答するものです。
 前回参照した、公式サイトのPDFを見ると、「政治学、行政学、国際関係、公共政策(2題)、憲法、行政法、民法、商法、刑法、民事訴訟法、国際法、経済理論、財政学、経済政策」の14科目から3科目を選んで解答すること、となっています。
 法科大学院修了生の場合は、憲法、行政法、民法、商法、刑法、民事訴訟法、国際法の中から3つを選んで解答することになると思います。法学部以外から法科大学院に進学されて、政治学や経済理論を専門的に学んだことがあるという方は、そちらを解答するのもありだと思いますが、私は法学部から法科大学院に進学したパターンで、法律以外の分野は分かりませんので、上記法律科目7つの中から3つを選んで解答するという前提で、ご説明いたします。
 この「3つを選択」というのは、出願時に決めるというようなものではなく、受験会場で実際に問題冊子を開いて、問題を見てからどれを解答するか決めることができます。「民法が得意だから、民法を解こう!」と思っていざ問題冊子を開いてみたら、民法の中でも苦手な分野が問われていた、という場合は、他の科目に切り替えてしまっても良いわけです。
 「3科目だけ選択して解答すれば良いなら、予め科目を決めておいて、その3科目だけ試験対策をすればいいや!」というのも、一つの戦略だと思います。
 ただ、私の場合は、一応「得意科目」らしきものはあったものの、「この科目なら、どんなテーマを問われても自信を持って良い答案が書ける!」とまでは言えず、どの科目にもぽつぽつと「苦手なテーマ」がありました。なので、「苦手な部分が問われたら、他の科目に切り替えられるようにしておこう!」と考え、憲法、行政法、民法、商法、刑法、民事訴訟法の6つすべてを勉強しておきました。
 「死角は一切ない!」と言える絶対的な得意科目が3つあるのでなければ、上記6科目(国際法を勉強されたことのある方は、6科目+国際法)を満遍なく勉強しておくことをお勧めします。
 「なんだ、結局やることは大量にあるんじゃないか」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。司法試験に向けた勉強をされた方であれば、二次試験の専門試験(記述式)のために特別に対策をする必要はありません。
 専門試験(多肢選択式)と同様、問われる内容は司法試験と大差ないですし、難易度で言えば、司法試験の論文試験の方がずっと難しいです。ですから、司法試験の勉強をされた方であれば、特に苦労することはないと思います。
 多少、司法試験と異なる点があるとすれば、まず、行政法の問題の中で行政手続法(あるいは、手続的な論点)が占める割合が若干大きいことが挙げられると思います(紛争の事後的な解決をメインとする司法と異なり、今まさに動いている行政を担当する人間を採用するための試験なので、当然の傾向かもしれませんね)。
 また、民事訴訟法は、事例問題というよりは一行問題に近いものが出題され、どちらかというと「旧司法試験」に近いという印象があります。
 これらの点を除けば、司法試験の論文試験をより基本的な内容にしたような問題ばかりですので、そこまで肩に力を入れる必要はないと思います。試験日も、司法試験の一週間後くらいですので、司法試験本番のテンションと知識量を維持してぶつかっていけば、きっと難なく切り抜けられるはずです(但し、「基礎的なこと」を問うのであって、決して「程度が低い」わけではないので、甘く見ていると痛い目を見ます。いい加減な理解で解答すると、確実にボロが出ます)。
 しかも、以前の記事で紹介した通り、配点比率は全体の3分の1と、とても大きな割合を占めています。ここで良い成果を出せば、合格は一気に近づいてきます。良心的な難易度で、配点比率も大きい、ここは間違いなく受験戦略上最大の山場といえるでしょう。法科大学院修了生で最終合格されている方は、間違いなくここで点数を稼いで足場を固めているはずです。
 ちなみに、司法試験と異なり、六法は貸与されません。ですので、条文数が多くて細かい商法は個人的にはお勧めしません。
 解答用紙は1科目につき1枚だけ配布され、裏表を書ききったらおしまいです。「足りるのかなぁ?」と不安に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、足りなくなることはないと思います。問題自体がシンプルなので、解答しなければならない項目は多くないですし、何より司法試験よりずっと解答時間が短いので、そんなに大量に書く余裕はないと思います。
 解答用紙には、マス目のようなものがありますが、これは無視しても構わないようです。合格者の中にも、特に気にせず自由に書いたという方が何人かいらっしゃいました。私は何となく不安だったのと、マス目にしたがって書いた方が綺麗で見やすくなるだとうと考えて、一応合わせて書いておきましたが…。

 こう書いてしまうと、とても「ちょろい」試験という感じになってしまいますね。
 実際、問題自体の難易度でいえば、司法試験より随分ハードルが下がりますし、中日を挟んで5日間も拘束されるわけではなく、肉体的・精神的な負荷もずっと小さいので、そういう意味では、間違いなく楽ではあります。
 ですが、こちらの記事でも書きましたが、国家公務員採用総合職試験の「院卒・行政区分」の最終合格者の中で、法科大学院修了生は今や多数派です。法科大学院修了生であれば、おそらくほとんどの方が法律科目を選んで解答するでしょう。そして、法科大学院修了生の多くは司法試験に向けた勉強を経験されているはずですから、相当実力が高く、完成度の高い答案を書くでしょう。司法試験よりも問われている内容が基礎的となると、なおのこと精度の高い答案が多くなると思われます。
 つまり、合格者の多数は完成度の高い答案を作り上げるはずで、その中に入り込んでいこうと思うのであれば、自分も完成度の高い答案を書かなければならないわけです。「ちょっと失敗しても、他のところでカバーすればいいでしょ」という気持ちだと、他の受験生に大きく差をつけられてしまう危険性があります。
 確実に合格するためには、「どんなに小さなミスも許されない」くらいの気持ちで臨む必要があるでしょう。おそらく、この先も司法試験と併願する、あるいは、国家公務員試験に転向する法科大学院修了生は増えるでしょうから、ますます厳しさは増すのではないでしょうか。
 そういった意味で、司法試験の論文試験とは違った「厳しさ」はあると思いますので、油断は禁物です。
 司法試験とは別に、国家公務員試験のための対策をする必要はありませんが、そのかわり、法律科目の勉強を丁寧にやるようにしましょう。

【政策討議試験】
 次に、政策討議試験について。
 この政策討議試験と、次の項目で紹介する人事院面接は同日に実施され、専門試験(記述式)とは別の日に実施されます。具体的な日程については、専門試験(記述式)の日より後に、個別に通知が来ます。
 では、これはどんな試験なのでしょう。一番信憑性があるのは、当然公式の受験案内なので、「国家公務員試験採用NAVI」で公開されている受験案内のPDFを見てみましょう。
 3ページ目に「試験種目・試験の方法」という項目があり、最初に「院卒者試験」が紹介されていますね。そこの「政策討議試験」の説明を見ると…

課題に対するグループ討議によるプレゼンテーション能力やコミュニケーション能力などについての試験(課題に関する資料の中に英文によるものを含む。)
6人1組のグループを基本として実施
レジュメ作成(25分)→個別発表(1人当たり3分)→グループ討議(30分)→討議を踏まえて考えたことを個別発表(1人当たり2分)


…とあります。
 これだけだとまだイメージがぼんやりしているかもしれないので、実際の流れにそってご説明します。
 まず、試験会場に着くと、グループ割りが発表されて、これがグループ討議の際のメンバーになります。
 会場に入って着席し、試験について一般的な注意点を説明された上で、検討課題と資料がひとまとめになった問題冊子と、「受験者番号」(これは、受験票に記載された番号ではなく、当日発表されます)と枠だけが書かれた白紙同然の解答用紙が配布されます。そして、試験開始の合図と同時に冊子を開き、検討課題を読んだ上で、資料を参考にしながら自分の見解を解答用紙に書いていきます。
 この解答用紙については、使い方は何も指定されないので、自分の見解を文章で書いても良いですし、骨子だけを箇条書きで書いても構いません。
 私は、後で個別発表があること、文章よりは簡単な箇条書きや図式の方がすぐに頭に入りやすいことを考えて、箇条書きで書きました。受験生の中には、図を書いている人もいました。自分に合ったやり方を選べばよいと思いますが、個人的には箇条書きや図式を用いる方が視覚的にも分かりやすく頭に入りやすいのではないかなぁ、と思います。
 試験の方法の説明に、カッコ書きで「英文のものも含む」とあるのが気になった方もいらっしゃるかもしれません。
 おそらく、どの試験年度でも英文の資料は1つ入っていると思いますが、難解な論文が抜粋されて掲載されるわけではなく、ごく普通の英字新聞の記事が抜粋されて載せられるくらいのものですから、そこまで心配しなくても大丈夫です。一次試験の基礎能力試験で出題される英文と難易度的には大差ないので、二次試験にまでたどり着けた方であれば、さほど苦労はしないと思います。
 むしろ、内容を正確に理解して、文章に合致するものを選ばなければいけない英文読解問題とは異なり、「参考資料の一つ」として目を通すにすぎないので、内容の大筋さえ掴めていれば軽く読み飛ばしてしまっても構わないわけです。しかも、「検討課題の参考資料」として与えられているのですから、内容は当然検討課題に関するもので、ある程度は内容の想像がつくはずです。
 どうしても不安であれば、グループ討議の時間に入ったら、まず資料の内容について確認しあうのも一つの手だと思います。議論をする際に、資料についての理解が食い違っていると議論がかみ合わなくなってしまうので、これは決して卑怯な手でも何でもありません。むしろ、資料の内容や検討課題についての前提事実等の確認は必須かもしれません。
 解答時間が終了すると、解答用紙と問題冊子は一旦回収されます。その後、上で触れたグループごとに部屋に入ると、グループのメンバー全員(自分含む)の答案のコピーと問題冊子が配布され、これをもとに実際の討議が行われます。
 まず、最初の3分間の個別発表は、資料や自分の知識を前提に、答案に書いた内容にそって自身の見解を説明します。要するに、簡単なプレゼンテーションですね。
 それぞれの発表が終わると、お互いの発表をもとに、議論をしていきます(資料の内容や前提知識についての共通理解を共有したければ、この段階でやっておくと良いと思います)。発表の内容や、討議の際の発言内容ももちろん評価の対象になっているはずですから、あまりにも突飛なことを言ってしまわないよう、普段から社会問題を意識して、ごく簡単なもので良いので自分なりの見解を言えるようにしておくことは有意義かもしれません。
 ただ、「しっかりとした内容の発言をしないと」と意識しすぎる必要はないと思います。他の受験生も自分の専門分野などでなければそこまでハイレベルなことは言いませんし、どんなに背伸びをしたところで、採点官からすれば学生の意見など往々にして「ありがちなもの」程度にしかうつらないでしょう。
 むしろ、重要なのは議論に取り組む際の「姿勢」ではないかと私は思います(私がアドバイスを受けていた合格者も、同様のことを仰っていました)。国家公務員試験は、あくまで「将来的に国の政策を担うことになる人材」を採用するための試験であって、実際の政策立案の場面では、「問題点を把握し、客観的な資料などを参考にしながら、全体で一つの結論をまとめあげる」という作業がなされるはずです(私もまだ働いていないので、「こういうものではないか」というイメージでしかないのですが)。
 そうだとすれば、当然、政策討議試験でも「資料をもとに、グループ全体で一つの結論を出す」ことが求められるはずです。当日の試験についての注意点の説明では、「なお、必ずしも一つの結論を出す必要はありません」旨のことを言われますが、受験生全体の意見がまったくかみ合わずにバラバラだったり、平行線をたどってしまったりすれば、それで直ちに不合格となるとまでは言いませんが、評価が高くなることはまずないでしょう。
 何の結論にもたどり着かない、ただぶつかり合うだけの議論にどれほどの意味があるのか、そんなことをして政策が充実したり、社会問題が解決したりするのかを考えれば、答えは明らかだと思います。
 ですから、まずは前提事実や基礎知識、そして問題点を共有し、その上でお互いに意見を交わして、相手の意見にも素直に耳を傾け、一つの方向性に持っていくという姿勢で取り組んでみて下さい。
 皆さん、自分なりの思想はあるでしょうから、相手の意見を聞いて「いや、それは違う」と反論したくなることも多々あるでしょう。法科大学院修了生の方は、議論が得意な方も多いですし、普段から「主張と反論」という枠組みで物を考える習慣がついている分、相手の意見の弱いところを見つけ出して的確に突く能力は高く、「反論しないと!」と思ってしまうことも多いでしょう。
 ですが、自分が稀にみる天才か、相手がよほど困った人でなければ、自分の意見にも多少は突っ込みどころはあるはずです。相手の指摘や批判にも聞き入れるべきところはあるはずです。頭ごなしに反論することは避け、何か指摘されたら、まずは相手の発言についてじっくり考えてみた方が良いでしょう。
 間違っても、一人でガンガン発言して他の受験生を言い負かせてやろう、自分が一番優れていると見せつけてやろう、などと考えないでください。採点官の目には「協調性がない人物」と映り、大きくマイナスされる可能性が高いです(そもそも、採点官の方が能力はずっと上なのですから、あまりにも自信過剰な受験生は、きっと滑稽に見えるはずです)。先も述べたように、あくまで「周りと議論をして、一定の方向性を導き出す」ことができる人材を見極めるための試験ですから、一人でガンガン突き進む人は、発言内容が優れていても評価がそれほど伸びないはずです。そもそも、「自己PR」の場ではないのですから、自分が優れていることを証明するのは「場違い」です。
 どうしても他の受験生の意見がトンチンカンなものにしか聞こえず、自分の見解の方が間違いなく優れていると思うのであれば、「言い負かそう」と考えるのではなく、「なぜ相手の見解がダメで、自分の見解の方が優れているのか」を、丁寧に説明して、他の受験生を「納得させる」形でうまく流れを作るようにした方が良いでしょう。
 検討課題は、基本的にある政策について「○○に賛成か、反対か」という形で出されると思います。現代社会が抱えている、まだ結論の出ていない難しい問題について問われるので、そう簡単には意見はまとまらないでしょう。
 ですが、ある程度議論を進めると、「賛成」と「反対」のどちらかが多少は優勢になってくるはずです。かっちりとした一つの結論を出す必要はないものの、一定の方向性にたどり着く必要がありますから、残り時間を見ながら(一次試験、二次試験ともに、試験官が持ってきたデジタル時計で時間管理がなされます)議論の状況を見極めて、どこかしらで「ここはこの政策に賛成(or反対)の方向で議論を進めることにして、後は反対意見に配慮しながら、この政策をどう改善すべきか(orどういう代案を採用すべきか)をまとめていきませんか」と提案すると良いと思います。
 そのうち議論が収束していくだろうと考えていると、ほぼ確実に破綻して終わります。30分という時間は、長いようであっという間ですから、意識的にまとめる流れに持っていかないと結果は散々なものになると思います。
 もっとも、どちらの意見が優勢かを考えた上でまとめるとは言っても、「じゃあ、賛成と反対、どちらが良いか決を採ります」といったことはやってはいけません。それはただの「多数決」であって、「討議」ではありません。
 多数決で無理矢理まとめあげました、ということにならないように、早めにまとめる方向に持っていくように意識した方が良いでしょう。
 政策討議試験は、グループ全体が運命共同体のようなもので、自分一人だけがあれやこれやと気を遣っても、他の受験生がどうしようもない状態だと、全体がぐだぐだになってしまいます。そういう意味では、どの受験者と同じ班になるのかも重要で、こればっかりは「運」としか言いようがないかもしれません。
 ただ、自分が喧嘩腰だったり、聞く耳を持たなかったりと意固地になれば、当然、他の受験者もどんどん意地になって、それに刺激されてますます自分もカッとなってしまう、という具合に事態は最悪の方向に向かいかねません。
 この悪循環に陥るリスクは、自分が人の話にしっかりと耳を傾けるよう、喧嘩腰にならないように気を付ければ軽減できるはずですから、まずは自分の「議論に臨む際の態度」に注意するようにすると良いと思います。
 ちなみに、政策討議試験は、配点比率をみると全体の15分の2で、一次試験の基礎能力試験と並んで配点比率が一番小さくなっています。後で述べる人事院面接(配点比率は5分の1)よりも配点は小さいわけです。
 比較的しんどい試験の割にはあまり配点が大きくなく、骨折り損という感じもしますが、「万が一、変な受験生と同じグループに割り振られてしまって、散々な討議になってしまったとしても、そこまで傷は大きくならないんだ」と前向きに考えておきましょう。

【人事院面接】
 最後に、人事院面接について。
 これは、面接官3人に対して、受験生1人で面接をする試験です。方式としては、前もって提出する「面接カード」に記載した内容を前提に、面接官がより掘り下げた質問をし、受験生がそれに対して返答するという、ごく一般的なものとなっています。
 なので、特にこれといった対策は不要だと思います。私自身、特に人事院面接の対策はやっていませんでした。前年度に、民間企業の就職活動もしていて、一般的な「面接」の対策はしていたが、それが大いに役立ったかと言われると、あまりそういう実感もありませんでした。
 自分を少しでもよく見せようと思って嘘をついたり、人格が疑われるようなことを言ったりしなければ、ごく普通の対話ができるだけで平均的な評価は得られると思います。
 対策というより、注意すべき点を挙げるとすれば、まず嘘は絶対に言ってはいけません。面接官の方がずっと上手なので、踏み込んだ質問をされて必ずどこかで嘘がバレます。ひとたび嘘がバレれば、もう心象は最悪です。それから先は、どんなに本心で良いことを言っても「あぁ、どうせまた嘘をついてるんだろうな」と思われて惨憺たる結果になるでしょう。
 また、「ちゃんと対話ができる人かどうか」を見ているので、どんなに難しい質問が飛んできて答えに窮することになっても、絶対に黙り込んではいけません。何かしら反応を返すようにして下さい。
 民間で人事を経験された方にお話をうかがったことがあるのですが、「黙られる」と一番困る上に、評価も悪くなるそうです。何も言ってくれないと、助け舟を出すことさえ出来なくなってしまうわけです。
 面接官も受験生をいじめるつもりで質問をしているわけではなく、あくまで「どんな人なのか」を深く知るために色々な角度から、時にゆさぶりをかけつつ質問をしているのですから、受験生をどんどん追い詰めて痛めつけてやろうなどとは思っていません。こういう質問をしたら、多分「うっ…」となるんだろうな、ということは想定した上で難しい質問を投げかけつつ、頑張って食らいついてきたら多少はフォローしてやろうと考えてくれています。
 実際、人事院面接でも官庁訪問でも、何度も答えに詰まる質問を投げかけられましたが、どなたもちゃんとフォローはして下さいました。
(話は逸れますが、民間企業の就職活動、事務所訪問、そして官庁訪問と様々な面接を経験した私としては、受験生の扱いが一番丁寧だったのは官庁だったと感じています。面接などの場での対応だけでなく、諸々の手続や採否の連絡に至るまで、あらゆる面で丁寧で、受験生の立場に配慮してくれている印象を受けました。
 官庁訪問期間中に他の試験がぶつかってしまって、正直にその旨を告げて、「三回目の受験生で立場的に崖っぷちなので、いくつか試験を併願しているんです。採用していただけるなら、もちろん迷わず省庁で働かせていただきますが、ダメだった場合のときのためにも時間を調整させて下さい」とお願いしたら、快く承諾して下さいました。この点については、今でも採用担当の方に大変感謝しております。理解のある方で本当に良かったと思います。)
 国家公務員試験に携わる方々は、基本的にどなたも丁寧な対応をして下さるはずです。
 ですから、「しょうもない」と思われるような返答でも良いですから、まずは何かしら答えるようにしてみて下さい。
 人事院面接で問われることは、「趣味・特技」、「学生時代にもっとも力を入れたこと」、「学生時代の実績」などのよくある質問ばかりなので、その辺りについては、想定問答を用意しておくと良いと思います。
 面接に苦手意識がある方は、就職関係のコーナーに置いてあるような一般的な面接対策の本を何か一冊くらい買われて読まれてみても良いと思います。「ありがちな本を読んで、ありがちなことを言ってもしょうがないのでは」と思われるかもしれませんが、他の受験生が「ありがちなこと」を言う中で、その「ありがちなこと」さえ言えないのでは、マイナスの方向で目立ってしまう可能性があります。
 一般的な面接もあまり経験がなくてよく分からない、面接はどうしても苦手、そういった方は「最低限守るべきライン」を意識する一つの方法として、市販の本を買って読むことも無駄ではないと思います。「よくある質問集」、「想定問答集」、「自己分析の方法」が載っていたりするので、どうすれば良いのか多少は方向性が見えてくると思います。
 ちなみに、別の記事でも触れましたが、人事院面接特有の注意点としては、「出身校が特定されるようなことを面接カードに書いてはいけない」ということが挙げられます(面接カード自体にも、ちゃんとその旨の注意書きがあります)。
 学生時代の実績として、特に優れたものがあると面接カードにもみっちりと書きたくなってしまいますが、詳細に書いてしまうと出身校が特定されてしまう危険性もあります。アピールすべき点はぜひとも強調すべきですが、出身校が特定されかねない要素はうまく取り除いて、ある程度抽象的に書くようにしておきましょう。
 むしろ、多少抽象的に書いておいて、面接官に「おっ?」と思わせて突っ込んでもらって、こっちのペースに持っていくというのも「小細工」としてはありなのかもしれません。あくまで「小細工」なので、どこまで通用するかは怪しいものですが。
 そもそも、面接カードの記入欄はあまり大きくないので(3行程度)、どうしても抽象的に書かざるを得ないですし…。


 また長くなってしまいましたが、おおよそのイメージは持っていただけたでしょうか。
 試験の概要と対策についての説明はこれでおしまいです。
 次回からは、最終合格後の官庁訪問について書こうと思います。官庁訪問は「業務説明会兼採用面接」のようなものなので、あまり「試験対策」のようなものはないのですが、「そもそも官庁訪問って何?」という方もいらっしゃると思うので、概略と対策(のようなもの)をご説明した上で、私自身の官庁訪問の体験を書いて、大体のイメージをお伝えしようと思います。