ぐだぐだと面白味のない抽象論を書いてしまい、「どうでも良いから早く本論に入れよ」と思われてしまったかもしれません。
 今回から、試験の内容と対策について書いていこうと思います。
 言うまでもないことですが、これから書くことは「私はこうした」という一つの意見にすぎず、合う・合わないは当然あると思います。「なにそれ」と思うような部分があるかもしれませんが、その点はご了承下さい。
 私自身が受験生だったときは、どうやって司法試験と並行して勉強すれば良いのかが「全く分からない」状況で、インターネットなどで検索してもなかなか情報収集がうまくできずに頭を抱えていました。
 そういった「右も左も分からない状況」の人に、「最低限、これはやっておいた方が良いと思います」という基本的なことを提案するサイトなりブログがあるといいのになぁ、と受験生時代の私は常々感じていたので、「じゃあ、自分で作ってみよう」と考えて、このブログを書いています。
 ですので、「何をどうすればいいのか全く分からない」という方々に、試験の基本的なことを説明した上で、最低限やっておいた方が良いと思う勉強について提案するという趣旨で書き進めていきます。以下は、そういう前提でお読みいただけると幸いです。


【一次試験・専門試験(多肢選択式)について】
 まず、多肢選択式の専門試験について。
 司法試験受験生にイメージが湧きやすいように言えば、「法律科目の択一試験」です。問われる内容も司法試験の択一試験と大差ないですし、難易度で言えば、司法試験の択一試験の方が難しいと私は思います。
 具体的な出題内容について見てみましょう。国家公務員試験の公式サイトで公開されている受験案内のPDFを開くと、「院卒者・行政区分」の専門試験(多肢選択式)では、「Ⅰ・Ⅱ・Ⅲからいずれかを選択し解答」となっています。
 法科大学院修了生の場合、(よっぽどのことがない限り)「選択Ⅱ 法律系」を選択して解答することになります。
 この系統を選ぶと、まず必須問題として「憲法7問、行政法12問、民法12問」を解答することになります。
 そして、選択問題として、「商法3問、刑法3問、労働法3問、国際法3問、経済学・財政学6問」の中から合計9問を選択して解答することになります。法科大学院修了生の場合は、ほぼ例外なく商法3問と刑法3問を解答することになると思います。
 つまり、解答が必要な40問のうちの37問、実に9割は、法科大学院修了生にとってなじみのある科目から出題されるわけです。そして、前述の通り、問われる内容は司法試験の択一試験とほとんど差がなく、難易度は司法試験の択一試験の方が上といえます。
 ですから、司法試験に向けて勉強されたことがある方は、改めて国家公務員試験の対策として勉強をしなくても、十分に高得点が狙えるわけです。労働法を勉強された経験のある方なら、専門試験(多肢選択式)で満点を取ることも可能なわけです。
 労働法選択でない方も、過去問集を解いて労働法、国際法、経済学・財政学の勉強をしておけば、満点をとることは決して不可能ではありません。法律を勉強してきた人にとっては、法律科目の方がなじみがあると思うので、労働法や国際法について過去問を研究すれば十分だと思います。
 万全を期すというのであれば、労働法や国際法について簡単な入門書を通読すると良いのかもしれませんが、「司法試験と併願する」ということを念頭に置いて書いていますし、私自身、そこまではやりませんでしたので、そこまでみっちり対策をするのは、よっぽど時間に余裕がある人だけで良いのかなぁ、と思います。
 ちなみに、前述の受験案内では、専門試験の選択問題は「商法3問、刑法3問、労働法3問、国際法3問、経済学・財政学6問」とされていますが、商法を選んだら商法を3問、刑法を選んだら刑法を3問解かなければならないというわけではありません。選択問題9問を、「商法2問、刑法2問、労働法1問、国際法2問、経済学・財政学2問」といった具合に「虫食い式」で解答しても構いません。「どの科目を選択したか」をマークして、選んだ科目については全部解答しなければならない、という形式にはなっていません。第32問~第34問は商法、第35問~第37問は刑法として解答欄が設定されているので、第33問の解答欄にマークをすれば、自動的に商法について解答したことになるわけです。
 ですので、例えば、商法の問題を解いていて1個だけ「あれ?分からないや」という問題があって、仕方なく他の科目の問題をぱらっと見て、財政学の問題のところで「これ、なんか聞いたことあるし、知ってる!」という問題があったとすれば、商法2問、財政学1問を解答することも可能なわけです。まぁ、そういうことはなかなかないと思いますし、注意書きなどに「そういう解答をしてはいけない」とは書いていないものの、「やっていい」とも書いていないので、心配な方は「商法3問、刑法3問、労働法(or国際法)3問」で解答するのが無難かもしれません。

 前述の通り、専門試験(多肢選択式)は高得点(あるいは満点)を狙える試験ですし、以前の記事でご紹介した通り、配点比率を見ると、専門試験(多肢選択式)は試験全体の5分の1を占めるので、専門試験(多肢選択式)で点数を稼ぐことは受験戦略上重要と言えます。
 比較的簡単に高得点を狙える上に配点比率が大きい、しかも、司法試験受験生なら特別に対策する必要はない。司法試験と併願する受験生にとって、こんなにうまい話はありません。ここは絶対に得点源にして下さい。

 上述の通り、司法試験の勉強をしているのであれば特に対策は要らないと思いますが、「どんな問題が、どういう形で問われたか」を知ることは有益ですので、気になる方は過去問集を1冊買っておくと良いと思います。
 私が使った過去問集は、「過去問500」シリーズの国家総合職・専門試験版です。収録された問題の量も多いですし、解説もしっかりしているのでお勧めです。

【一次試験・基礎能力試験】
 次に基礎能力試験について。
 この試験は、文章読解、英文読解、資料解釈、推論・分析、数的判断、教養問題、時事問題から成り立っています。
 文章読解は、文章を読んで「本文の内容と合致する選択肢を選びなさい」という問題、文章の流れから空欄に当てはまる単語を選択する問題、適切な接続詞を選ぶ問題、文章整序問題といった、大学入試の現代文や法科大学院の適性試験で慣れ親しんだ問題が出てきます。
 これについては、純粋に「読解力」の問題なのでテクニックのようなものはないと思いますし、何か対策をしたからといって一朝一夕に点数が伸びるものではないと思います。ですので、どうしても苦手であれば専門試験(多肢選択式)で点数を稼いでカバーすることを考えて、「ダメでもともと」と割り切ってしまうか、過去問をたくさん解いて「慣れる」しかないと思います。量をこなすうちにコツがつかめることもあると思いますし、読解力も量を読むことで「ゆっくりと」伸びていくものだと思いますので。
 英文読解は、英語の評論文や小説を読んで、本文の内容と合致する選択肢を選ぶ問題が出ます。これも結局は「読解」の問題なので「読解力」が問われることになりますが、文章の内容や構造自体は日本語の文章読解の問題よりシンプルなので、英単語や英文法さえ分かっていれば比較的容易に正解にたどり着くことができます。
 英単語や英文法は、単語集や文法書を読むことで、読解力よりは効率よく伸びるはずですから、英語が不安という方は、市販の単語集や文法書を読むことをお勧めします。高度な単語や文法知識が問われるわけではないので、そこまで凝ったものをやる必要はないでしょう。
 単語集や文法書を今からまたやるのはしんどいという方は、インターネットで英語で書かれたニュース記事などを読むのも良いと思います(CNNですとか、TIMESですとか。特に「これがいい」というものはないので、どのサイトでも良いと思います。英文を読むことが大事ですので)。量を読めば英文を読むということに抵抗感はなくなる上に、分からない単語を調べつつ読めば、自然と単語の量も増えていきます。また、後述の「時事問題」では世界情勢も必ずと言って良いほど問われるので、メジャーなニュースをチェックしておけば、同時に時事問題対策にもなって有意義だと思います。
司法試験と併願するのにそんなことやってられない、という方は、ここも「ダメでもともと」と割り切ってしまって良いでしょう。専門試験で点数を稼げば、傷は小さいはずです。
 資料解釈は、文字通り、グラフなどの資料を与えられて、「資料から読み取れる事実として、正しいものは以下のうちどれか」といった資料の理解能力について問われる問題です。
 個人的には、資料解釈は一番楽な問題だと思います。例えば、「A国のBの消費量の変遷について、2000年を100として示したグラフ」であれば、読み方さえ合っていれば、あとは地道に計算すれば多少は時間がかかるものの、かなりの確率で正解にたどり着けるはずです。
 カギの握るのは「資料の読み方が分かっているか」です。読み方は単純に「知っているか知らないか」ですし、必要になる「読み方」の知識は大体決まっているので、過去問集を解いて解説を読んで一度知識を身に付ければ、正答率は大きく伸びると思います。ですので、過去問集をしっかりやっておけば、資料解釈については十分だと思います。
 推論・分析、数的判断は、適性試験でもお馴染みの推理問題のようなあの問題や、図形や数式などのような基礎的な数学の問題です。私は、この分野が適性試験を受験する頃から苦手で正答率が極端に低く、結局国家公務員試験を終えた今でも苦手意識を克服できていません。
 そんな人間がアドバイスなどおこがましいですが、「苦手な人間がどうやってだましだまし切り抜けたか」という視点からお話しすると、これも結局は過去問集をしっかりと解くということに尽きると思います。
 冷静に考えてみれば、推論・分析や数的判断は必ず問題文中に正答にたどり着く上で必要な情報が全て与えられているのですから(でないと、問題として成立しませんし)、あとは「どうやって推論を組み立てるか」「どうやって与えられた情報を整理するか」がカギを握っているはずです。
 これらも、読解力と同じで一朝一夕で身に付くものではないですが、読解力と違ってある程度の方法論はあると思います。解説付きの過去問を解いていると、情報を整理するための図表の作り方や、繰り返し問われる「推論の考え方」のようなものが徐々に見えてくるようになります。推論・分析、数的判断が大の苦手な私でさえ、過去問集を解く中でコツのようなものが掴めたのですから、量さえこなせば誰にでもコツは掴めるはずです。だまされたと思って、まずは過去問集を解くことに集中してみて下さい。
 教養問題は、日本史、世界史、地理、生物、化学、思想・哲学、宗教等、様々な分野の「教養」が問われる問題です。
 これについても、身も蓋もありませんが、これといった「画期的な対策」というものはありません。「知っているか知らないか」の問題ですから、点数を伸ばしたければ、一夜漬けでもいいので、少しでも知識を頭に入れるしかありません。
 なので、これも「そんなことに時間をかけてられない」と思うのであれば、割り切ってしまうのは一つの手だと思います。
 ただ、個人的には、ここをばっさりと捨ててしまうのは勿体ないかなぁ、と思います。というのも、知識さえあれば解ける問題ばかりで、知識量に比例する領域なので、コストパフォーマンスが良いからです。
 そして、過去問集を地道に解いていると、繰り返し問われている部分が徐々に見えてきたりします。むやみやたらに色々と知識を入れる必要はなく、過去問で問われたところをしっかりと押さえておけば、正答率は大幅に向上するわけです。
 その上、例えば、大学受験の頃から日本史が得意だったという方であれば、日本史の問題であればあっさり解けてしまうといったように、大学受験の頃の知識の「残り」が役に立ったりするので、いざ解いてみると案外正答率が高かったりするのです。
 ですので、教養問題は過去問集をしっかりと解いて、得点源にすることをお勧めします。
 時事問題は、言うまでもなく、近年の日本や世界の政治・経済情勢についての知識が問われる問題です。
 これについても、「画期的な対策」というものはありません。その上、教養問題と異なり、時々刻々と変化する情勢について問われるわけですから、過去問を解いていても「その知識は古い」となることが多々ありますし、「近年の」情勢について問われるので、過去問で対策をしてもあまり効率は良くありません。
 常日頃から新聞やインターネット、テレビなどでニュースをチェックするくらいしか対策はないでしょう。あるいは、直前期に無理やり知識を詰め込むのであれば、「速攻の時事」のような本を買っても良いと思います。
 私自身はどうしたかと言われれば、新聞やインターネットでニュースをチェックするくらいで、特に本なども買わずに、「解けなければ諦めよう」くらいの気持ちで臨んでました。もともと、専門試験で点数を稼ぐつもりで、基礎能力試験については被害を最小限に食い止める程度の消極的な考え方で臨んでいたので、そこまで必死には取り組みませんでした。

 こうやって書いてみると、ほとんどの分野で「諦めるか、過去問集をひたすらやるか」としか書いていませんね…。
 ですが、実際、私はそういう態度で臨んで、ただひたすら過去問集(専門試験のところでご紹介した「過去問500」シリーズの教養試験版)を解いて、それ以外には何も手は広げず、書籍なども購入しませんでした。
 専門試験(多肢選択式)で着実に点を取れば、基礎能力試験については、あまり躍起になって対策をする必要はないと思います。法科大学院修了生が国家公務員試験を受験する場合の基本戦略は、専門試験(多肢選択式)で高得点(あるいは満点)を狙う、これに尽きると思います。
 ただ、一つ断りを入れておくと、私はもともと文章読解と英文読解が得意で、特に対策もせずに全問正解できたので、そこでなんとかカバーをしていたのも事実だと思います。
 そう考えると、基礎能力試験の問題はどれも苦手分野ばかりだけど何とかなるでしょう、というのは通用しないと思います。
 「なんだ、結局はみっちり対策をしないといけないんじゃないか」と気持ちが萎えるかもしれません。ですが、まずは一旦過去問を解いて見て下さい。苦手かどうかは、過去問を解いてどの程度のレベルなのか知ってから判断するのでも遅くありません。
 実際に過去問を解いてみて、「やっぱり、どの分野も苦手だ」と思ったけど、どうしても諦められないという方は、上に書いた通り、個人的には教養問題、資料解釈、英文読解あたりがコストパフォーマンスが良いと思うので、そのあたりを過去問を解きながら優先的に対策して、得意分野に変えていくと良いと思います。
 特定の分野を得意分野にするために重点的に対策しよう、とお考えれあれば「スーパー過去問」シリーズのような、分野ごとの過去問集を活用してみてはいかがでしょうか。私自身は前述の「過去問500」シリーズで手一杯で、「スーパー過去問」シリーズには手を出せていないので、無責任なことは言えませんが、実際に内定をいただいている方に「どうやって勉強していたか」と聞いて返って来た答えの中では「スーパー過去問」シリーズをやっていたという方が多かったので、きっと役に立つと思います。


 「で、結局のところ、あんたは一次試験対策はどうやったのさ?」というと、「過去問500」シリーズを繰り返し解いたこと以外は、大したことはやっていません。「諦めるか、過去問集か」とたびたび書いているのは、まさに私自身がそういうスタンスで取り組んでいたからです。
 もちろん、過去問を解いて初めて知ったこと(時事問題や教養問題など)についてインターネットを利用して調べたり、英文読解で理解の怪しい単語や熟語があれば辞書で調べるなどの作業はしましたが、どれも「おまけ」程度で「対策」というほど大したものではありません。
 「なんだ、結局何も対策なんてないんじゃないか」と言われてしまえば、それもそうなのかもしれません。ですが、「とにかく専門試験で点数を稼ぐことを考えて、あとは過去問集をひたすら解く」、これほど単純明快で分かりやすい対策はないと思います。複雑な対策より、単純な対策の方が気後れしないと思いますし、これで良いのではないでしょうか。
 そもそも、司法試験と並行して勉強するのであれば、過去問集を徹底して勉強するだけでもかなりの苦労ですし、過去問集を丁寧に解き進めれば着実に実力は上がります。他のことにあれやこれやと手を伸ばす余裕もなければ、必要もないのです。
 まずは過去問集を徹底してやる、そういう意識でまずは取り組んでみて下さい。受験する可能性があるという方は、今から少しずつ過去問集を解いていけば、「過去問500」シリーズのように分厚い本であっても一日あたりにやるべき量は少なくて済みますから、「早めに取り掛かる」ことをお勧めします。


 一次試験については、こんなところでしょうか。基本的なことを説明すると言いながら、結局やたらと長くなってしまいましたね…。「何も知らない」という状況の方に一から説明するつもりで書きましたので、長くなってしまうことについては、どうか大目に見てやってください。
 次の記事では、二次試験について書こうと思います。

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