1月15日に東京ミッドタウンでシンポジウムを行いました。テーマは「デザインの美学--美と感動と自由を考える」です。美と感動は、デザインの最も基本的な要素ですね。ところが、最近そのことを真正面から考えるという意識が希薄になっているような気がします。それどころじゃないといった感じで、世の中が余裕を失っているように見えます。そんな時こそ、社会に光を与えるような、健やかさや、さわやかさをくれるような、デザインならではのパワーを発揮する絶好のチャンスだと思うのです。


そこで、トップデザイナーの方たちに、真正面からこの質問を投げかけてみることにしました。お呼びしたメンバーは、建築家の山本理顕さん、インテリアアーキテクトの近藤康夫さん、照明デザイナーの面出薫さんで、私が司会です。詳しい内容は、主催者のシーアイ化成さんがホームページに載せる予定だそうですから、ぜひそちらを見ていただくとして、私の印象を一言。


山本さんは、北京から帰国して空港からミッドタウンに直行してくれました。機内で飲まれたアルコールでほんのり桜色です。
最新作の「横須賀美術館」について語っていただきました。この美術館には、私も取材で二度うかがいました。久しぶりにほんとうにさわやかな気持ちのいい建築だなあ、というのが第一印象です。難しい説明を聞かなくても、身体で、五感で、だれもがそう感じることができるはずです。


この美術館には、近藤康夫さんがデザインしたレセプション・カウンターや図書室があって、純白のデザインがとてもさわやかです。サイン計画はグラフィック・デザイナーの廣村正彰さんがデザインしています。とくに、ガラスに描かれたピクトグラムは最高です。かわいいピクトが、まるで宙に浮いているように、青い海や緑を背景に描かれています。
浦賀水道のお天気は、美術館のホームページにある実況カメラで確認できます。ぜひ、海を見に行ってみてください。


近藤康夫さんは、建築からインテリア、家具やプロダクト・デザインまで、なんでもできるマルチ・デザイナーです。
近藤さんの作品でもっとも有名なのは、なんといっても「東証アローズ」ですね。テレビの株式ニュースの背景にいつも映っている、あの東京証券取引所の大インテリア空間です。日本ばかりではなく、世界中のテレビに流れている、世界で一番見られているインテリア・デザインです。


面出薫さんの作品は、たぶんみなさんはいくつも見ているはずです。LPAのホームページで確認してみて下さい。あっ、これもそうなんだ、という作品がたくさんあるはずです。
面出さんが仲間とつづけている「照明探偵団」は、もう18年目になるそうです。巨大なライティング・プランのプロジェクトに挑みつづけるかたわら、面出さんは、下町の闇の空間にロウソクの灯火をならべてみる、といった繊細な試みも忘れません。面出さんの頭にはつねに「光と人間の原点」ということばがあるのです。


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「UD探偵団」結成!のお知らせ


突然ですが、このたび「UD探偵団」を結成しました。
探偵団といえば、私が長年ご指導をいただいている藤森照信さんがお仲間とつくられた「建築探偵団」が大御所ですね。また、友人の照明デザイナーである面出薫さんがつくられた「照明探偵団」も、18年目をむかえてもはや老舗の風格があります。それにあやかって「UD探偵団」を発足させることにします。
とは言っても、団員はまだ私一人です。参加は自由。目的は、日頃の暮らしの中にある、UD(ユニバーサルデザイン)的なデザインや、出来事や、考え方を観察しながら情報を収集し、できるだけ「ユニバーサルデザイン」誌に反映させていきたい、というものです。参加方法は、このブログにあなたのUD情報や、UDに関するご意見などをお知らせください。


参考までに、観察の対象のUD度をチェックするときに関連するキーワードを思いつくままに列記しておきましょう。
UD的なものごとを構成しているメンタルな要素には、
思いやる、楽しませる、気づかう、心配する、いたわる、
手伝う、いやす、なぐさめる、元気づける、はげます、理解する、
などがあります。
そして、それをアクションにすると、
工夫する、改善する、安全にする、使いやすくする、健康にする、
可愛くする、やさしくする、美しくする、気持ちよくする、
差別をなくす、見やすくする、わかりやすくする、便利にする、
などとなります。
UDは、それらを、「もっと!」美的に、知的に、機能的に、効果的に考え、そして、「より」積極的に、能動的にデザインすることだと思います。
こうした意識のエレメントが、数多く組み合わさって、さまざまなUD的なものごとを形づくっていると思われます。


では、探偵ファイルの一例をあげてみましょう。


横須賀美術館

写真は、「横須賀美術館」の案内サインのデザインです。山本理顕さんの設計した建物に、グラフィック・デザイナーの廣村正彰さんがデザインしたものです。
これはかなりのUD作品ですよね。さっそくチェックしてみましょう。
まず、空間もサインもとても「気持ちいい」デザインです。青い空と海と緑を背景に「可愛い」ピクトが宙に浮いています。シンプルなサインはとても「わかりやすい」ですね。しかも「見やすく」する「工夫」がされていて、なおかつ「美しい」サインと言えます。
みなさんも、ここをおとずれてみると、建築家の来訪者に対する「楽しませる」意識や、グラフィック・デザイナーの「やさしくする」意志を、肌で感じ取るにちがいありません。
そこで、この作品を、わが「UD探偵団」のUDファイルNo.001に登録したいと思います。


みなさんも、「これぞUD!」という事件簿をお送り下さい。
自称・団長/川床 優



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ユニバーサルデザイン誌の新シリーズ「UD & アーキテクチュア」。お二人目のゲストは、建築家の内藤廣さんです。08年の1月末発売です。

内藤さんと話していて、また一つ、これもUDの本質ではないか、と気づかされたことがありました。
彼は、建築家でありながら東大の土木の教授でもあり、Gマークの総合審査委員長でもあるという、存在自体がユニバーサルな立場にある稀有な人物です。そして「建土築木」という著書で、建築と土木の融合という思想を展開しています。とても面白いのでぜひご一読下さい。


何に気づいたかというと、こうです。

ジャンルを問わず、新しい発見や進歩は異なる分野の境界領域に起こることが多い。縦割りで分野を隔てていた障壁や溝を取り除いていくのがバリアフリーの発想だとすれば、始めから境界領域に焦点を当てて、積極的な触媒として両方の分野を変質させ進化させることがUDの発想なのではないでしょうか。


デザインの世界はもとより、医療や福祉、教育や文化全般にわたって、あらゆる境界領域が秘めている可能性に光を当てていくこと。さらには、人々の精神領域までふくめた世界に、積極的な触媒としての機能を開発していくこと。そこにも、UDの大きな使命があるのではないかと考えます。


ところで「建土築木」にこんな一節があります。建築家の山口文象が70年も前にデザインした、黒部川第二発電所の小屋平ダムについて、です。

「一般に建築は人に接するところにつくられる。ここでは、極めて限られた人しかその姿形を目にすることはない。しかし、そうした場所だからこそ、美しい自然に対して恥じることのないよう、人知を尽くして考え抜くのが土木の本懐なのではないか。土木のデザインとは、人知れぬ山の中で、自然を相手に、自らの良心だけを支えにつくり上げられるものなのかも知れない。」
これもまた、UDの思想の本質に深く関わることだと思います。と同時に、
「人間は、何のためにデザインをするのか?」
という根元的な問いかけでもあります。


建築と土木という、100年もの間背を向け合ってきた世界を、それぞれの優れた特性を合わせることで、全く新しい世界を構想する内藤さん。そのまなざしはデザインのあらゆる分野に向けられています。 ジャンルを超えて、過激に駆け回る内藤さんの活躍が楽しみですね。


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ユニバーサルデザイン誌では、第24号から新しいシリーズをはじめました。
題して「UD & アーキテクチュア」。
トップバッターは、伊東豊雄さんです。
このシリーズでは、ユニバーサルデザインと建築の関係を、あらためて整理してみたいと思います。


取材の前に、伊東さんの大著「透層する建築」を久しぶりに読み返してみました。するとそこには、ぼくが今回聴いてみたいと思っていたことへの明解な答えがたくさん書かれていました。


そもそも、建築でユニバーサルという言葉が登場するのは、1925年ころのことです。「ユニバーサル・スペース」。ご存じ、ミース・ファン・デル・ローエが提唱した概念ですね。著書で、伊東さんはこう書いています。

「ミースは「ユニバーサル・スペース」すなわち均質なグリッドが水平にも垂直にも連続する空間の提案者といわれる。
バルセロナのミース・パビリオンの透明さは澄み切った空気のようなそれではない。水中で何かを見る時のような液状の空間の透明性であり、むしろ半透明性と言うべきかもしれない。まるで液体が固体に変化したように流動する空間。」(透層する建築)

残念ながら、ミースのユニバーサル・スペースが具体的にその後の20世紀建築に生かされることはありませんでした。ごく一部を除いて、経済効率一辺倒の高層建築群が都市を埋め尽くしています。


バリアフリーについてはこう書かれていました。

「図書館や美術館、博物館というジャンルも文化のバリアーを保守し続ける元凶である。エレクトロニック・エイジの建築は新しいメディアの導入に基づいて、慣習的文化のバリアーを解体しなくてはならない。
「せんだいメディアテーク」はバリアフリーを目指している。それも極めて広範な意味に於いて。弱者に対するバリアーの問題もあれば、異なるプログラム相互の浸透性の問題もある。さらには、建築という領域のバリアーに対する問題までもがここに包含されている。」(同上)


UDと言うとバリアフリーを思い浮かべる人はまだまだたくさんいます。しかも、とても狭い意味で、です。UDとバリアフリーの違いをひと言で言えば、バリアフリーはバリアーを無くしていこうということ、それに対してUDは最初からバリアーを作らないようにしよう、という発想です。どちらも大切ですが、捉え方が違います。


伊東さんの思考の方法は昔から(もう30年近いお付き合いになります)とても柔軟です。いや、実はそう感じさせるのが上手です。今回のインタビューも、僕の少し強引な質問に、まるで風のように軽やかに、しかも無駄なく正確に答えていただきました。
建築は、批評性の表現であることは基本ですが、もっと自由であっていいし、もっと楽しいものであっていい。だれもが気持ちよく楽しめるものでありたい、と伊東さんも考えています。


建築とUDの関係を考える基礎が整理できたインタビューでした。
くわしいことはUD24号をお読み下さい。


ところで、取材の後、最近伊東さんが感動したことは? と聞くと、
「イチローを見に行ってきたこと」
という答えが返ってきました。
球場で見ていると、あきらかに他の選手とは違う、身体の躍動のしなやかさがあって、とても感動したそうです。
そう言えば、伊東さんの作品もどんどんしなやかになっていると思いませんか?


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