町の人達も【お美津】の正体が【千愛姫】だと何となく気がついている様だ。
 それでも、町の人気者、【お美津】として、接してくれている様だ。
 【いつでも帰ってきな。
 帰る場所はワシらが守る】
 ――そう、言われている気がした。
 【お美津/千愛姫】は、町の人達が自分を【お美津】として接してくれるのであれば、【千愛姫】では無く、【お美津】でかまわないと思った。
 そして、
「じゃあ、ちょっくら行ってくるよ。
 必ず帰ってくるからさ。
 そしたらまた、オマケしてちょうだいな」
 と言った。
 町の人達は、
「あいよ。
 あんたが帰った時には盛大に祝ってやるよ。
 また、来なよ。
 【お・み・っちゃ・ん】」
 と言って答えた。
 町の人達との挨拶を済ませた【お美津/千愛姫】は、【庄之助】が保護されている【診療所】を訪れた。
 【お美津/千愛姫】は、
「しょ、【庄之助】君。
 私――来たよ」
 と言って声をかける。
 だが、【庄之助】の反応は、
「………」
 と無反応だ。
 どうやら、心を閉ざしたままの様だ。
 それは仕方がない。
 あれだけの事があったのだから。
 だが、それでも【お美津/千愛姫】は声をかけ続ける。
「あのね、【庄之助】君。
 私ね。
 ちょっと旅に出てくるんだ。
 君をね。
 君を、苦しめた悪い奴らをこらしめにちょっとね。
 私ねぇ。
 実は夢があってね。
 ――何だと思う?
 それはねぇ。
 君といつまでも一緒に居ることなんだ。
 私もね。
 君と一緒に居たいと言う気持ちはあったんだけど、色々とね。
 君と一緒に居られない障害とかいっぱいあったんだ。
 結婚しろとかね。
 母親がうるさくてね。
 でも、私。
 君と一緒に居たいから、結婚なんかしたくなかった。
 誰とも付き合いたくなかった。
 結婚したら、君と離ればなれになっちゃう。
 それだけは嫌だったから。
 全部、見合いとか断っていたの。
 だけど、自分の事に精一杯で君のこと……
 ちゃんと見れて無かった。
 だから、君を酷い目に合わせてしまった。
 お姉さん失格だなって思った。
 自分の事だけじゃだめなんだ。
 駄目だったんだ。
 私と君の絆を壊すものは全部。
 全部、ぶっ倒す。
 そう言う気持ちで当たらないと駄目だった。
 だけどね。
 決めたよ。
 私と君の仲を邪魔するものは親だろうが【魔神教】だろうがまとめてぶっ倒すってね。
 見ててね。
 蹴散らして帰ってくるから」
 と言った。
 その言葉に対して、【庄之助】が僅かに反応する。
「……あ……う……
 お、……おねぇ……さん……」
 と。
 その言葉を聞いた【お美津/千愛姫】は、
「これはね。
 手付けだよ。
 行ってきます。
 チュッ」
 と言って、【庄之助】の頬にキスをしたのだった。
 【私はずっとあなたのものです】
 それを証明する【証】だった。
 これは、戦国乱世の時代において、自分の気持ちにまっすぐであろうとした【最強の戦姫(いくさひめ)】の物語である。


完。