正に【殺人人形】。
 【魔神教】はその【殺人人形】の戦闘訓練として、【寺藩具(じぱんぐ)国】に送り込んだのだ。
 【魔神教】だけじゃない。
 【寺藩具(じぱんぐ)国】には【大陸】からの凶悪な刺客達が送り込まれている。
 【陽本島(ようほんとう)】には、【異界教(いかいきょう)】の邪悪な刺客が、
 【星本島(ほしほんとう)】には、【架空教(かくうきょう)】の邪悪な刺客が、
 それぞれ、送り込まれている。
 今や【寺藩具(じぱんぐ)国】全体のピンチと言っても過言ではなかった。
 もはや、他の【藩】と主導権を巡って小競り合いをしている場合では無いのだ。
 【藩】同士のつばぜり合いと【他国】――【大陸】からの刺客。
 その両方の問題が、【寺藩具(じぱんぐ)国】の【各藩】の課題となっていたのであった。


終章 ちょっと行ってくるよ


 出陣準備が整った後、【千愛姫】は【お美津】として、また城下町を訪れた。
「お、【おみっちゃん】今日も元気だねぇ」
「あらっ、
 【おみっちゃん】。
 ちょいとこれ、試食しておくれよぉ」
「今日も綺麗だねぇ、【おみっちゃん】。
 俺と付き合わないか?」
 ――と言う町の人の声は無い。
 町はすっかり静まり返っている。
 先の【辻斬り】事件が発端で、みんな恐怖で顔が引きつっている。
 笑顔で、
「おはよう、おじさん。
 今日は何を仕入れているの?
 また、オマケしてくれない?」
 などと声をかけても、
「あ……あぁ。
 うん。
 そうだね。
 じゃあ、これはどう……?
 うん。
 これで……」
 と返してきた。
 明らかに元気がない。
 【お美津/千愛姫】の声にもどこか上の空で返してくる。
 彼女の好きだった町の活気が無くなってしまっている。
「おはよう。
 今日は良い天気だねぇ。
 あしたも晴れるかな?」
 と声をかけても
「あ……うん。
 そうだね……」
 と気のない返事が返ってくる。
 これじゃない。
 これじゃないんだ。
 妾が味わいたいのはこんな覇気のない町人達の声じゃないんだ。

続きます。