「ありがとう。
おじさん、気前良いね」
と言った記憶があるのだ。
なのに、旦那さんからすっぽり記憶が抜け落ちている。
騙している?
【お美津/千愛姫】をからかっている?
いいや、そんな雰囲気ではない。
旦那さんは気の優しそうな真面目な男性で、人を虚仮にしたりなどしないタイプだ。
【お美津/千愛姫】を騙していると言う可能性は皆無に等しい。
では何故?
何故、この人達の記憶から【庄助】が消えているのだ?
それがわからない。
なんで?
なんでだ?
なんで【庄助】なんだ?
何故、【庄助】が消えねばならん?
【お美津/千愛姫】は動揺した。
探し回ったが、結局見つからず、時間が来て城に戻らなくてはならなくなった。
ここで戻らなければ、城下町に行くことは出来なくなる。
なので泣く泣く、城に戻るしかなかった。
消えた【庄助】。
彼は何処に消えたのであろうか?
捜索したい。
が、家族に【庄助】の事は話していない。
反対される事を恐れたからだ。
話したのは婿入りしてしまった【幸士郎】と、もう1人……
【千愛姫】はそのもう1人に相談に行くことにした。
そのもう1人とは誰か?
それは、【闘月】の【分家筋】に当たる【闘月 天奉(ほうづき てんほう)】。
【闘月家】当主【天運】の弟。
【千愛姫】からすると【叔父(おじ)】に当たる人物だった。
【千愛姫】は城に戻ると、父【天運】に、
「父上。
実は叔父上に取り急ぎ話がございます。
外出許可を願いたい」
と言った。
【天運】は、
「うむ……
叔父と言うことは誰のことじゃ?」
と聞いた。
【天運】の疑問も最もだ。
【天運】には弟が3名いた。
つまり、【叔父】も3名いるのだ。
叔父は、
【闘月 天海(とうづき てんかい)】、
【闘月 天奉(とうづき てんほう)】、
【闘月 天地(とうづき てんち)】、
が居るのだった。
【千愛姫】は、
「天奉叔父上です。
三男の。
天奉叔父上に相談したき儀がございまする」
と言った。
【天運】は、
「天奉と?
ワシでは駄目なのか?
ワシは父じゃぞ。
実の父じゃ。
何故、ワシに聞かぬ?
ワシは寂しいぞ。
何でも聞いてくれると思うておったのに……」
と言った。
続きます。