【山田 丈二】は、
「申し開きもできません。
 無念です」
 と言った。
 【木村 直弼】も、
「面目ありませぬ。
 油断したではすまされませぬ。
 申し訳ございません」
 と謝罪した。
 相手が新人だと侮った自分の不覚を後悔している様だ。
 【大道寺 鉄心】は、
「若。
 それがしも同行いたしまする」
 と言った。
 【大将】である【大道寺 鉄心】は、戦っていない。
 それまでの【副将戦】で決着がついてしまったからだ。
 この場合、【次鋒】の【的場 尚三】と違い、連帯責任には含まれない。
 つまり、【大道寺 鉄心】だけは、【鏡月】入りを拒否出来るのである。
 【幸士郎】は、
「いや……。
 お前だけでも残ってくれ。
 【鉄心】。
 【闘月】を盛り立ててくれ」
 と言った。
 【大道寺 鉄心】は、
「お断り申す。
 拙者は、【闘月家】に仕えているつもりはござらん。
 若に。
 若に忠義を尽くしておるのでござる。
 拙者は若の懐刀(ふところがたな)として、どこまでもご一緒いたしまする。
 どうか。
 どうか、拙者の同行をお許しくだされ」
 と答えた。
 【幸士郎】は、
「【鉄心】……済まぬな。
 お前まで……」
 と言って涙した。
 【幸士郎】が【藩】に居る真の実力者達ではなく、【幸士郎】に近しい間柄の者を選んだ最大の理由が、これである。
 負けた場合、共に【鏡月家】に行けるのは【決戦】に出た者とその家族だけなのだ。
 実力があっても距離を置かれている間柄の者と一緒に行くわけには行かない。
 それで近しい間柄の者だけで、勝負をしたのである。
 こうして、【闘月 幸士郎】は【鏡月 幸士郎】として【婿入り】して行ったのだった。
 結果として、【闘月藩】は、
 【闘月 幸士郎】、
 【平田 泰善】、
 【的場 尚三】、
 【山田 丈二】、
 【木村 直弼】、
 【大道寺 鉄心】、
 ――と言う優秀な人間を6名失った。

続きます。