【美波】は、
「決まっているじゃございませぬか。
 縁談の事ですよ。
 縁談の。
 相手が決まっていないのは【千愛】だけではありませぬか。
 【千愛】ももう17です。
 そろそろ、お相手をお決めになさりませんと」
 と言った。
「その事か?
 まだ、17じゃ。
 好きにさせたらよかろう。
 あの子にはまだまだ、ワシの元に居て欲しいのじゃ。
 いつかどこぞの馬の骨にくれてやるかと思うと、気が気じゃないのじゃ。
 娘じゃなくば、ワシがめとりたいくらいの美貌。
 手放すには惜しいのじゃ」
「【決戦】で婿を取ればよろしいではありませぬか。
 そうなれば、家名は【闘月】で嫁に行くこともありませぬ。
 【闘月】の名を継いでもらって……」
「それはわかっておる。
 じゃが、それでも、【千愛】が他の男とまぐわうのかと思うと腸(はらわた)煮えくりかえるのじゃ。
 八つ裂きにしていも飽きたらぬ。
 そう、思うてしまうのじゃ」
「それでは、行き遅れになってしまいまする」
「【千愛】の奴が誰とも付き合うつもりが無いと申しておるのじゃ。
 無理に縁談を進めなくとも良い。
 縁談は他の兄弟がやれば済むこと。
 【千愛】はいつまでもワシの側に。
 それでかまわぬ」
「今はそれで良いかも知れませぬが、年老いた時、独り身では【千愛】が不憫です。
 女は結婚してなんぼです。
 それなのに殿は一生、1人で居ろと。
 そう申すのですか?
 愛娘がそれでもよろしいのですか?」
「ワシは夫婦となる事だけが幸せだとは思わぬ。
 親と死ぬまで一緒に居る。
 そんな幸せがあっても良いと思うのじゃ」
「それでは【千愛】が可哀想です。
 殿。
 【千愛】のために、是非ともご決断を」
 と言う話になっていた。
 どうやら、父親の【天運】は娘を手放したくない様だが、母親の【美波】は【女】の幸せは【結婚】と思っている節があり、【千愛】を結婚させようとしている様だった。

続きます。