序章 妾は誰とも付き合わない


「でへへへへ……
 ホントだな。
 ホントにあんたを倒したら……
 おでの……
 おでのものになるんだな?」
 柄の悪そうな男が尋ねる。
 尋ねた相手は女性だ。
 その女性は、
「ふん。
 倒せるものならな。
 妾(わらわ)に二言はない。
 かかってくるが良い」
 と言った。
 その2人の間に、男性が1人。
 その男性は、
「それでは、姫様の了承も得たことで、第183回、【千愛姫婚活闘技(ちあいひめこんかつとうぎ)】を認めます。
 挑戦者、【暴虐拳(ぼうぎゃくけん)】の使い手【権造(ごんぞう)】。
 審判は、【金藤 竜乃真(こんどう たつのしん)】が務めさせていただきます」
 と言った。
 つまり、柄の悪そうな男の名前が【権造】、
 間に立った男性が【金藤 竜乃真】、
 そして、【権造】の対戦相手が【千愛姫(ちあいひめ)】と言うことになる。
 【婚活闘技】とはいかなる事を指すのだろうか?
 それは、【千愛姫】の婿になる資格を得るための個人レベルでの闘いとなる。
 【千愛姫】に挑戦し、彼女に勝てば、【千愛姫】をめとれると言うことになっている。
 【千愛姫】は言った。
「妾は誰とも付き合わぬ。
 妾を嫁がせたくば、妾より強い男を用意せよ。
 妾より弱い男の元になど嫁ぐつもりは無い」
 と。
 それから、腕に自信のある武将達が【千愛姫】に勝負を申し込んできた。
 皆、腕に自信のある猛者達ばかりだった。
 だが、結果は、いずれも【千愛姫】の圧勝だった。
 【千愛姫】――彼女はこの戦国の世において【最強の戦姫】と呼び声も高かった。
 彼女に勝てる男はこの【闘月藩(とうづきはん)】には居ないとまで言われていた。
 だが、【千愛姫】は絶世の美女。

続きます。