この頃から、いつものパターンでは【春日井氏】は、【手紙】を忍ばせている。
 【春日井氏】は【念話】で【チェルシー】にだけ聞こえるテレパシー通信で話す。
(良いかい、【チェルシー】君。
 いよいよだ。
 いよいよ、退避する時(【魔王】を討伐してとんずらする時)が迫っている。
 見ての通り、相変わらず、僕の方は女性達にがっちりガードされて手紙を用意出来ない。
 そこで、いつもの様に、代筆を頼みたい。
 お願い出来るかい?)
 と伝えた。
 【チェルシー】は、
(待ってましたにゃん。
 いつものやつにゃん?
 ご主人様。
 私はいつでもオッケーにゃん。
 今回はなんて書くにゃん?)
 と【念話】で返した。
(そうだなぁ。
 今回はどうしよう……
 【チェルシー】君。
 何か良いアイディアは無いかい?)
(そうにゃんねぇ……
 前回の冒険が【過去】の人間という設定にしたから、今度は【未来】から来た人間と言う設定はどうにゃん?)
(いや……
 多分駄目だ。
 今回は【ハンナ】君が居る。
 彼女は何だかんだ言って鋭い。
 下手な嘘はバレてしまうよ)
(じゃあ、【好きな人】が出来たはどうにゃん?
 ご主人様、前の冒険で【初恋】を体験したと言ってたにゃん)
(なるほど。
 それなら嘘はついてないな。
 でも内容はどうしようか?
 【魔王】を倒した途端に【好きな人】が出来たと言って立ち去るのは違和感が無いかな?)
(それもそうにゃんねぇ。
 じゃあ、【前から好きな人】が居たというのはどうにゃん?
 それで会いたくなったので、会いに行ったと言うのはどうにゃん?)
(うん。
 それだ。
 それにしよう。
 【前から好きな人】と待ち合わせの約束があってそれを思い出したので、【さよなら】も言わずに急に居なくなる事を許してください。
 とでも書いておこう)
(わかったにゃん。
 じゃあ、文章を教えてくださいにゃん)
(うん。
 じゃあ、こうして欲しい。
 【拝啓 親愛なる皆様へ。
 突然居なくなる事をお許しください。
 わたくし事【春日井 清俊(かすがい きよとし)】と【チェルシー】両名は、旅立ちます。
 【愛する女性】との待ち合わせをうっかり失念しておりました。

続きます。