彼は【チェルシー】と共に、【レストラン まさかり】で昼食中だ。
彼が食べているのは、【百花繚乱(ひゃっかりょうらん)】と言う創作料理だ。
様々な食材、香辛料などが、少しずつランダムに配置され、混ぜ合わせる事によって味が千変万化するという料理になる。
味が変わり過ぎるので【下品な料理】と揶揄する者も居るが、彼はこの料理が気に入った様だった。
お代わりを注文し、たっぷり堪能した後で、レストランを出た。
その時、すれ違った女性に対して、【春日井氏】はビビッと来た。
「い、今の女性は……」
運命を感じた。
それはどのような女性だったのか?
それは、派手な格好をしたパーマ頭の女性――では無く、そのおつきのおかっぱ頭の地味な女性だった。
そう。
【春日井氏】は地味な女性が好みなのだ。
平凡で、素朴な女性が好きなのだ。
つまり、そのおつきの女性が【春日井氏】の好みにバッチリはまったのだ。
だが、1つ難点がある。
そのおつきの女性が従っている女性。
それが、【春日井氏】の好みとは正反対。
派手な女性なのだ。
これは困った。
おつきの女性とお知り合いになりたいが、そうなるとあの派手な女性ももれなくついてくるだろう。
どうやら、派手な女性はおつきの女性の女主人の様だ。
派手な女性は、
「古都(こと)。
お前、こんな船しか手配出来なかったの。
ふざけないで。
私をバカにしているのかしら?
ねぇ、そうなの?
そうなのね?
どうなのよ?
ねぇ!」
と激しく叱咤している。
【古都】と呼ばれたおつきの女性は、
「すみません。
すみません。
お嬢様。
その様な事はありません。
申し訳ありません」
と必死に謝っている。
【春日井氏】は、
(そうか。
あの女性は【古都】さんと言うのか。
何だかいじめられていて可哀想だ。
何とか助けてやりたいけど……
どうすれば……?)
と思っていた。
だが、今の【春日井氏】では、何も出来なかった。
出来ずにいた。
彼は激高する女性の前に立ちふさがる勇気は残念ながらなかったのである。
続きます。