心を乱されたのはリグレットだけではなかった。
 観察者もまた、動揺していた。
 自分を殺そうとしていた者の手当を申し出るシリスの態度が信じられなかったからだ。
「お、俺を生かしておいたら必ず、お前を殺すぞ」
「そうしたら、また、ダーリンに守ってもらわないとね。でも、今、怒らせちゃったから守ってもらえないかも知れないな。困ったな」
 観察者は自分を殺すと言っている相手を治療するシリスに対して何も出来ずに固まっていた。
 観察者にとって、魔女神、マリスに使えるという事は絶対服従を強要されていて、その自由は保証されていなかった。
 自分が殺した男同様に、役に立たなくなったら、それより上の立場の者に殺される。
 殺されたくないから、役に立つために、必死で生きてきた。
 正直、自分以外などどうでも良かった。
 主であるマリスさえも。