「彼方さんは亡くなったよ――二ヶ月前に」
という言葉を苦しそうに絞り出した。
言いたくなかったけど絞り出して言った……そんな感じだった。
「うそ……」
呆然とする一日。
「嘘じゃありません……兄は二ヶ月前に……」
真の言葉を妻の奈留が肯定する。
「姉ちゃん、彼方さんは生涯、ずっと独身を通したよ。いい話は結構あって、結婚、何度も進めたんだけど……結局、彼は首を縦に振らなかった……姉ちゃんに操を立てたつもりなんだろうけど……せめて、もう少し、長生きしてもらいたかった。そしたら――ぐすっ、そしたら、姉ちゃんに会えたのに……」
「………」
言葉が出なかった。
せっかく治ったのに、肝心の彼方が故人になっていては意味がない。
続く。