彼の中ではディアマンテの出方をうかがうためにした行為なのだが、危険過ぎる選択と言えた。
 吟侍は、
「むぐぅっ……」
 と思わずうめいた。
 【洗脳の口づけ】は生涯ただ一度だけ使えると言う最も貴重な力だった。
 そこまでして、吟侍の唇を奪った理由は吟侍が怪物ファーブラ・フィクタの生まれ変わりだという事にある。
 結婚式の招待状の噂はロスト・ネット・ワールドでも広まっていた。
 それを知ったロスト・ネット・ワールドの強者達はパニックになった。
 クアンスティータから逃げて、このロスト・ネット・ワールドに避難して来たのに、第二のクアンスティータが、このロスト・ネット・ワールドで誕生するかも知れないと思ったからだ。
 強者達は藁にもすがるつもりで、他へのアプローチを考えた。
 その内の一つとして考えられたのが、クアンスティータの親である怪物ファーブラ・フィクタの生まれ変わりの一人である吟侍にすがるという事だった。
 吟侍がクアンスティータと関わって生きて帰ってきているという噂は【アコンルーク】の裏のつながり、情報網を通してすでに情報として伝わっていた。