彼女は、視線の先に大きな煙のようなものを出現させたかと思うと、それがあっという間に影達を包み込み、煙が晴れたかと思うと影は跡形も無く消え去った。
 彼女の力の一つ、【消滅煙(しょうめつえん)】だ。
 煙の中には、非情に細かい小さな分子崩壊現象が無数に起こっていて、その煙に包まれた者は一瞬にして、分解されるという凶悪そのものの力だ。
 気の弱ささえ無かったら、フェンディナ・マカフシギ自身にもこれと同様の力はある。
 フェンディナ・マカフシギは優しすぎるのだ。
 フェンディナ・ミステリアにはその甘さは無いようだ。
 敵対する存在にかける情けは持ち合わせていない。
 だから、凶悪な力が目立ったのだ。
 フェンディナ・マカフシギはこの光景を見て、胸がチクリと痛む。
 敵とは言え、別の自分が余りにも残酷な始末をしてしまったことに心を痛めたのだ。
 自分の力が恐ろしい――フェンディナ・マカフシギはそう思うのだった。
 その気持ちを知ってか知らずか、フェンディナ・ミステリアは、
「場所を移動しましょう。ここじゃ、貴女、まともに話せそうもなさそうだし……」
 と言った。
 フェンディナ・マカフシギは、
「え、えぇ……」
 と頷くことしか出来なかった。
 フェンディナ・マカフシギの試練は始まったばかり――これから自分の力と向き合って行かなければならないのだ。