吟侍は、
「ちょ、ちょっと待った、待ってくれ、おそなちゃん、待ってくれってば」
 と言った。
 ソナタは、
「教育上よろしく無いんだからさっさと帰るのよ。それともカノンに告げ口して欲しいのかしら?」
 とにらみをきかす。
 吟侍は、
「違う、違うって、あの勝者にもらえる商品の【ヌァニヲン】ってのは何だ?」
 と聞いた。
 エカテリーナは、
「おぉ、【ヌァニヲン】か、あれはじゃな、そなたらの世界で言えば馬や駱駝(らくだ)とか言う生き物にあたるやつじゃ。馬や駱駝は姿形が変わらぬそうじゃが、【ヌァニヲン】は別じゃ。乗り手に合わせて形態を変化させる事が出来る。馬に乗るのは乗馬(じょうば)というらしいが、【ヌァニヲン】には【乗何(じょうか)】と表現する。あんなもので良いのであれば、妾の家には腐るほど飼っておるぞ。この様な場末(ばすえ)の大会の優勝賞品などよりも毛並みの良いのが揃っておる。なんならそっちを見に行くか?」
 と言った。
 吟侍は、
「よろしく頼む」
 と言った。
 吟侍が着目したのは【ヌァニヲン】の特性だった。
 現界においては惑星ファーブラ・フィクタにしかない特殊な属性の準属性を持っていたからだ。
 現界は大きく分けて7属性となっており、それが土、風、火、水、雷、光、闇であるとされている。
 多少例外も存在するが大きな属性としてはこの7属性がメインとなっている。
 これらを七大属性原素(ななだいぞくせいげんそ)と呼んでいる。
 謎の惑星ファーブラ・フィクタには更に6属性が存在し、六大特殊属性原素(ろくだいとくしゅぞくせいげんそ)と呼ばれ、【変】、【幻】、【外】、【他】、【奇】、【妙】という属性名で表現されているが、それは、現界には適切な表現が存在していないために、近い表現を代用しているに過ぎない。
 【ヌァニヲン】はこの六大特殊属性原素の準属性の要素を持っているのだ。
 セレークトゥース・ワールドを冒険した時、気になっていた、現界には存在しない属性――それは、六大特殊属性原素以外にも数多くあったが、吟侍は今の時点では触れられないものとして、あえて無視していた。