04 その後の二人の言い争い


 物語に対する憧れと恐怖――
 それぞれの感情を抱いた二人はその後、成長した。
 六花は、同じ、三部作と縁がある吟侍狼の元を訪ねた。
 六花は吟侍狼に対して、
「おめぇか、あのクソ物語に熱を上げているっていうイカれ野郎ってのは?」
 と言った。
 彼女はすっかりやさぐれていた。
 三部作を潰す。
 それだけが、彼女が味わったトラウマを鎮めてくれる唯一の手段だとして、目についた有りとあらゆる力を身につけた。
 それは内に潜む、どうしようもない恐怖心から逃れる手段でもあった。
 それだけ、彼女にとっては三部作の一つ、【ファーブラ・ローマーネンシスの物語】とは嫌悪すべきものだった。
 それに対して、吟侍狼は真逆だった。
 三部作の一つ、【ファーブラ・プエリーリスの物語】に憧れを抱き、【ファーブラ・プエリーリス】に会いたいと思うようになっていた。
 六花にとっては【ファーブラ・プエリーリス】も【ファーブラ・ローマーネンシス】と同じクソの様な物語として映っている。
 だから、それに憧れる人間が居るというのが許せなかった。
 なので、それに憧れている人間が居ると聞いて、いわゆる因縁をつけにやってきたのだ。
 吟侍狼は、
「もしかして、あのクソ物語っていうのは【ファーブラ・プエリーリス】の事を指しているのかい?だとしたら聞き捨てならないんだけどねぇ……」
 と不機嫌をあらわにした。
 吟侍狼にとっては、【ファーブラ・プエリーリス】は憧れの象徴でもある。
 【ファーブラ・プエリーリスの物語】は楽しさの象徴でもある。
 それを否定されるという事は吟侍狼の全人格を否定される様なものだった。
 なので敵意に対して敵意で答えたのだ。
 六花は、
「ふんっ……【ファーブラ・プエリーリス】ってのはガキが見るもんだろうが。んなもん、いつまでもご大層に憧れている奴っていうのがどんな小者か見に来てやったんだよ」
 と言う。