ジェルソミーナは、
 バサッ
 ――っと、手帳を地面に投げ捨てた。
 隆作はそれを拾って見る。
 だが、手帳には何も書かれていなかった。
 ジェルソミーナは予備用の手帳を捨てたのだ。
 隆作は、
「……これは?」
 と聞く。
 ジェルソミーナは、
「何でも良い――どんな事を書いても良い。お前の知識でそれを埋めろ。その知識に姫が興味を示したら合格だ。全く興味を示さなかったら、お前はそこでお払い箱だ。姫にとってお前は全く必要のない人間だとそれで証明される」
 と言った。
 隆作は、
「ど、どんな事でもって?」
 と言うが、ジェルソミーナは、
「それ以上聞く気か?それ以上、聞くのであれば、お前は指示を受けなければ何も出来ない人間だという事が解る。指示待ちしか出来ない人間は初めからいらない。合格したければ自分で考えろ」
 と突っぱねた。
 悔しいが確かにそうだ。
 指示を受けなければ何もできないのであれば、吹雪を守る事なんか出来やしない。
 隆作は、
「解った。じゃあ、これだけは――、期限はいつまでだ?」
 と聞いた。
 ジェルソミーナは、
「期限は特に決めて居ない。お前が完成したと思った時に持ってこい。ただし、それまで、姫には近づくな。あえて期限を決めるとしたら、いつまでもここに居るとは限らないのでな。我々がここを去るまでがタイムリミットだ。リミットを超えたら追って来ても追い返す。それで良いな?」
 と答えた。
 隆作は、
「解った。居なくなるまでだな」
 と言って、ジェルソミーナの所から去って行った。
 売り言葉に買い言葉だとしても、難しい問題になってきたなと思ったのだった。