隆作は、
「断る。僕は彼女のナイトになりたい」
 と啖呵を切った。
 女性は目をぱちくりとさせ、
「お前、自分が何を言っているのか、解っているのか?彼女はお前とは住む世界の違う人間だ。お前の様なもやしっ子がなんとか出来るような運命は背負っていない」
 と言った。
 だが、隆作は後には引けない。
 吹雪を大切に思いたいという気持ちだけは嘘ではない。
 若気の至りと言われればそれまでだが、自分のリビドーに従い、一歩も引かない。
 女性は、
「お前じゃ役不足だ。邪魔だから、関わるな」
 と制する。
 だが、隆作は、
「僕は男だ。脅しには屈しない」
 と突っぱねる。
 女性は、
「お前の度胸に免じて名乗ってやる。私の名前はジェルソミーナ・ノートン。私の方が本物のナイトだ。お前の出番は無い。私が彼女を守っている。これまでも、これからもずっとだ」
 と言った。
 女性の名前がジェルソミーナというのは解ったが、だからといって引く理由はない。
 隆作は、
「一人より、二人の方が守れる事もある」
 と言った。
 女性改め、ジェルソミーナは、
「お前には無理だ。力も無ければ、気迫も感じられない。信念もなさそうだ。至って普通の生徒――それがお前だ」
 と言う。
 なおも隆作とジェルソミーナの言い合いは続く。
「お前、お前言うな。僕には桐垣 隆作という名前があると言っただろう。どこにでも居る一般人――何も特徴もない、ただ、普通の人間――あんたはそう僕を評価しているんだろ?」
「そうだ。違うとでも言うつもりか」
「違わない。今までの自分は確かにそうだ。ただ、何となくしか生きてこなかった。特に自慢出来る事も何もない。周りに流されて生きてきたつまらなかった人間だ。だが、これからは違う。大切なものを見つけた。それを守りたい。それだけは譲れない。何の特徴も無いのであれば、これから特徴を見つける。身につける。それで、文句は無いか?」
「ある。お前には無理だ。今までやってこなかった人間がこれから出来るとは思えない。変われないんだよ、お前は」
「変わる。変わってやる。何が何でも変わってやる」
「変われないと言っているだろう。この分からず屋め」
「解ってたまるか。このまま逃げたら僕の全てが終わってしまう。だから譲れないんだよ。どうしても……」