吹雪も去り、図書室には、ぽつんと隆作だけが取り残される。
 隆作は、
「やっちまったかな……」
 とつぶやいた。
 我ながら、キザなことをしたもんだと思うのだった。
 だけど、あの子が困っているのを黙って見ている事が出来なかった。
 隆作なりの小さな正義感でとった行動だった。
 この時、彼はまさか助けた少女と深く関わって行くという事になるとは夢にも思って居なかった。
 この頃の隆作は彼女だと思っていた女性に浮気をされていた。
 自分の事を棚に上げた元カノは隆作の事を散々こき下ろし、彼を振った。
 純粋な恋愛をしていたと思っていた彼はショックを受けて、女性に対して、嫌悪感を抱き始めていた。
 女は汚い。
 女は狡い。
 女は悪い。
 女は醜い。
 女は嫌い。
 様々な女性を嫌う言葉が並ぶ。
 初恋だった彼はそのショックから立ち直れなかった。
 もう、倭国の女とは恋をしないと思っていた。
 そんな時、吹雪が入学してきた。
 見るからに倭国人とは違う容姿の彼女が。
 そこで、彼は夢を見る様になる。
 彼女だけは別だ。
 彼女だけは、まっさらな人間――女性だ。
 彼女だけは純粋だ。
 そう、勝手な幻想を抱くようになっていた。
 薄汚い女と一度、付き合ってしまった自分も汚れている。
 自分も含めて、彼女を穢(けが)してはならない。
 普通の女性が聞いたら気持ち悪いと思われるかも知れないが、それでも、女性に対する最後の砦として、隆作の中で吹雪を清らかなものとして奉り上げられていた。
 自分はまるで、乙女の純潔を守るナイト――
 まるで、乙女を守る幻獣ユニコーン――
 のようなつもりでいた。
 それは隆作の自分勝手な妄想だとは思いつつも、そう考えなければ、口汚い別れ話を経験してしまった繊細な思春期の少年のハートはバラバラになりそうだった。
 今回の件はその思いに従って、ちょこっと彼女に手を貸したに過ぎなかった。
 次の機会があっても、彼は同じ様に行動するだろう。
 次の機会が同じ様に無事に済まなくとも……。