08 アイスドール・レディー


 カノン達が次に立ち寄ったのは【一視十五景】で言えば、【寒景】にあたる所だけの地域だ。
 この地域はずっと極寒の景色が広がる。
 あたりには決して解けない氷や雪が広がっている。
 カノン達はかなり厚着してそこへ向かった。
 何故、そんな寒い思いをしてまで向かったかと言うと、そこには、氷の中で眠っている女性が居ると聞いたからだ。
 まるでおとぎ話にでも出て来そうなシチュエーションではあるが、どうも、眠っている女性の数は1名ではないらしい。
 数十名から数百名の女性が氷の中で眠っていると聞いて立ち寄って見る事にしたのだ。
 もし、無実の罪などでそうなっているのであれば、出来れば解放したいと思っていたのだが、どうもそうでも無いらしい。
 それらの存在は【アイスドール・レディー】と呼ばれ、存在してからずっと氷の中で眠り続けている存在だという話だった。
 【アイスドール・レディー】は見られるためだけに存在する女性で、もしも氷を溶かすなどして、出してしまうとその女性も溶けて無くなってしまうという氷の中の世界だけに生きる存在だという。
 【アイスドール・レディー】達は主に、レマ・ワールドに存在しているらしく、このレマのエリアにも少し存在している。
 変わったものが好きなソリイントゥスはこの【アイスドール・レディー】を欲しがったのだが、環境が整わないと存在出来ない儚げな存在として認め、自身のエリアや宇宙世界に取り込むのを諦めたという。
 まさに、レマ・ワールドやレマのエリアだけで見られるという限定された存在であると言える。
 【アイスドール・レディー】達も【花輝行列】の【花輝】達に負けないくらいの美貌を兼ね備えていると言われていて、つい、氷の中から出してあげたくなるのだそうだが、そこは我慢して、見ているだけというのがマナーだという。
 【アイスドール・レディー】達は、氷の中に居るが死んでいる訳ではなく、ちゃんと生きていて、夢を見ながら生きているとされている。
 生きている限り氷の中で眠り続ける【アイスドール・レディー】――悲しげな存在であるようにも思えるが、【アイスドール・レディー】達は夢を見る事で幸せを感じているのだという。
 不幸だと思うのはカノン達の感性によるもので、【アイスドール・レディー】達は【アイスドール・レディー】達で、その状態は普通の事だという。
 極寒の地でしか見る事が出来ず、外界から遮断されている神秘的な存在【アイスドール・レディー】をカノン達は見る事が出来た。
 【アイスドール・レディー】は、女神御(めがみ)の化身であるカノンが言うのもなんだが、どこか神々しさを感じさせる存在だった。
 レマのエリアに来てみて感じた事は色んな【美】の形があるのだという事だった。