10 その名は【ファムトゥーナ】


 ファムトゥの巨大胸像の目が再び光り、
「戦いを見せてもらった。なかなかの実力だ」
 との声がした。
 これはもちろん、お世辞だ。
 ファムトゥがその気にならなくてもカノンと【ゆのあ】が力を合わせて戦ったとしてもファムトゥには遠く及ばない。
 ファムトゥ・ワールドではファムトゥは侵入者に対して、良い勝負をするためにわざと力を落として対応したりする。
 なので、他のクアンスティータの様に、クアンスティータ以外の存在の力など、どれも一緒に見えるという訳では無く、弱い存在は弱い存在なりの個性というのを認めているようだ。
 なので、カノンの力も【ゆのあ】の力もファムトゥには面白味がある力として評価してもらったようだ。
 評価してもらったという事は交渉に応じてくれるという事でもある。
 先ほどの戦いが本番ではない。
 ここからが――この交渉からが本番なのだ。

 早速、カノンと【ゆのあ】はそれぞれ自身の話術でファムトゥの巨大胸像と会話した。
 カノンはやはり、基本的にファムトゥのエリアで体験して来た事などを中心に会話を組み立てて話し、【ゆのあ】は現界の裏の歴史の話題を中心に話を組み立てて会話をしていった。
 どちらも得意のスタイルでの会話となる。
 しばらく会話していく内にだんだん、ファムトゥとも打ち解けて言った。
 トルムドアやソリイントゥスがカノンの事を【カノンママ】と言っていたという事を聞いたファムトゥの巨大胸像は彼女の事を【カノン母上】と呼ぶ事にしたらしい。
 ちなみに、【ゆのあ】の事は【ゆのあ殿】だ。
 それぞれに対して敬意を持ってそう呼ぶ事にしたらしい。
 というのも、カノンも【ゆのあ】も、ファムトゥが知らなかった事なども教えていたため、それで尊敬の意を持って対応するようになったのだ。
 これだけ気を許してもらえれば、後は本題だ。
 トルムドアとソリイントゥスにも歌を歌う存在を提供してもらったので、ファムトゥにもその存在を提供してもらいたいという事を伝えるとファムトゥの巨大胸像は、
「そう言われましても私は歌を得意としていませんし……柄じゃ無いので……困ったな……」
 と言った。
 どうやら、歌う事は得意では無いというか苦手なようだ。
 戦いが趣味だから、あまり歌なども聞かないのだという。
 これは予想をしていなかったかというと実は違った。
 ちゃんと予想していた。
 側体のクアンスティータと言っても17核も居れば歌が得意ではないクアンスティータも居るだろうという事はしっかり想定内の範囲として予想済みだった。
 そんな時のために【クァノン】に持ってきてもらったのが、【オーケストラコーラスダンサロイド】だった。