――つまらない――
 最初はそう思いながら、招待客達は、カノンの人形劇を見始めていた。
 だが、客を楽しませる事は天性の才能がある彼女は、強者がどうすれば、興味を惹くかを考えてストーリー構成をしていた。
 強者達は人間とはくだらないもの――そういう目で見ている節がある。
 ならば、道化を演じよう。
 道化を主人公にするのだ。
 道化は人間であり、数々の失敗を繰り返す。
 でも、それでもめげずに前に進んで、ようやく少しの成功を得る。
 それを糧として、また、次の挑戦をしていく。
 強者達は何でも出来ると思っている者が多い。
 だけど、何でも出来るという事は難しい事に挑戦するという楽しみが出来る事が多い分だけ少ないという事でもある。
 カノンの人形劇ではそんな強者達の盲点が見え隠れしていた。
 時に挟まれるカノンの歌もあり、次第に招待客もカノンの人形劇に惹き込まれていった。
 自分達では経験出来なかった楽しみ方がそこにはあったのだ。
 カノンが人形劇を始めた頃はまばらだった拍手が、第一幕が終わる頃には大喝采に変わって行った。
 トルムドアは招待客達の変化を感じ取った。
 そして、それはカノンが引き出したものだと言うことも理解している。
 トルムドアは、
「すごいすごい、カノンママ」
 と言った。
 それに合わせる形で、招待客達も
「ブラボー」
「アンコール」
「素晴らしい」
「最高ーっ」
 等の声が上がった。
 カノンは、
「さて、第二幕は趣向を変えまして……」
 と言って、第一幕とは別のことを描こうとした。
 今度は人間の弱さを題材にした人形劇だった。
 人間は弱いから間違えてばかり、だけど、相談したり、間違えに気づいて修正していくという事を描いた。
 そして、助け合う事も同時に描いた。
 一人一人は小さな力でも繋がる事で大きな力になっていくこともある――そんな物語を紡いだ。
 元々、カノンをもてなすために開かれたパーティーだったが、リクエストが多くて、最終的にはカノンが招待客達をもてなしているような印象を受けるパーティーになった。
 トルムドアは、
「カノンママ、ごめんなさい。最初はこんなつもりじゃなくて……」
 と上手くもてなせなかった事を謝罪したが、カノンは、
「あら、どうして?みんな楽しそうだったじゃない。みんな楽しかったら、それでオッケー!それじゃダメなの?」
 と返した。
 それを聞いたトルムドアは、ぱぁっと嬉しそうな笑顔になり、
「ううん、ダメじゃない。これで良いんだよね?」
 と言った。
「良いと思うよ。トルムドアちゃんは、私と別れてしまうかも知れないと思って一生懸命になってくれているのは解るけど、ずっと永遠にお別れするわけじゃないよ。いつかまた、トルムドアちゃんの元に帰ってくるつもりだよ。だからちょこっとのお別れ。寂しいかもしれないけどまた会えるよ」
「うん、うん。そうだね。そうなんだよね」
「じゃあ、いいこいいこしてあげる。こっちいらっしゃい」
「うん、カノンママ」
 という様に、トルムドアはカノンに子供のように甘えてくるのだった。
 パーティーが終わってからトルムドアは予定を変更した。
 カノンが出発するまでの過密スケジュールから余裕のあるものに変えた。
 これは、トルムドアがカノンの気持ちになって考えた事でもある。
 それは、トルムドアの内面的な成長でもあった。
 相手の気持ちになって行動してくれるようになった事を嬉しく思うカノンだった。
 限られた時間をトルムドアと過ごし、充実した日々を過ごすのだった。