まさか、こんな所でまめぽんのぬいぐるみと再会するとは思っていなかったので、カノンはポカ~ンとなった。
 そして、じんわりとカノンは吟侍も別の場所でクアンスティータと向かい合って居るんだという事を感じ取った。
 まめぽんの存在が吟侍の気配を運んでくれる。
 不安で不安でたまらなかったのだが、まめぽんのぬいぐるみがカノンの心を癒してくれた。
 冒険の先には吟侍との再会が待っている。
 そんな期待が持てた。
 トルムドアもカノンを安心させるために、このぬいぐるみを出したようだった。
 カノンは、
「トルムドアちゃん、ありがとうね」
 と言った。
 それを聞いたトルムドアは、何だか照れくさそうにもじもじした。
 お礼を言われたのが本当に嬉しいのだ。
 カノンは思った。
 ここに居るのは、あらゆる存在が恐れた恐怖の代名詞、クアンスティータじゃない――義理でも何でも父や母を求めて甘えてくる可愛い娘なんだと。
 カノンはここで確信する。
 クアンスティータは倒すべき存在じゃない。
 わかり合う、
 理解し合うべき愛しい存在なんだと。
 だとすれば、七英雄達の事は心配だが、娘をほっぽり出して帰る訳には行かない。
 クアンスティータと――
 まずは、(第一側体)トルムドアと触れ合ってコミュニケーションを取っていこうと思った。
 七英雄達にはそれぞれ、仲間が居る。
 だが、目の前のトルムドアにはまだ、自分しかすがる者がいないのだ。
 ならば、受け止めて抱きしめてあげよう――
 カノンはそう決意した。
 そんな時、ぬいぐるみのまめぽんがいきなりしゃべり出した。
「こんにちは、カノン姫、おいら、まめぽん、よろしくタヌ」
 と。
 カノンはびっくりした。
 吟侍にプレゼントされたまめぽんはただのぬいぐるみのはずだったからだ。
 コンピューターを搭載して、しゃべれるようにする事は難しい事ではない。
 だが、トルムドアがそうやったとは思えなかった。
 まめぽんはまるで生き物のようにしゃべった。
 それも科学を用いれば難しいことではないが、まめぽんのしゃべり方には感情のようなものが見えたのだ。
 まるで本物の生きている生命体のような瑞々しい気を感じた。
 しかも、恋人、吟侍と同じ、自分の事を【おいら】と言うのもにくい演出だ。
 カノンは、
「こんにちは、まめぽんちゃん。お久しぶり。元気だった?突然、いなくなっちゃったから心配したんだよ」
 と返した。
 まめぽんは
「それはごめんタヌ。おいら、トルムドア様に命を貰ったのがうれしくってつい遊びまわっちゃったんだタヌ」
 と返した。