04 【あそこ】とは……


 ユリシーズ達七英雄の激闘を本物のカノンは知らない。
 彼女は(クアンスティータ・)トルムドアにトルムドア・ワールドに連れて来られてしまっていたからだ。
 彼女もまた、彼女自身が生き残るための戦いを繰り広げていたのだから。
 とは言ってもバトル――実際に戦うという意味での戦いではない。
 仮にそういう戦いをしていたら、とっくに消えて無くなっていただろう。
 それほど、クアンスティータ・トルムドアという存在は飛び抜けて強いのだから。
 そうではなく、自分の持てる全てを駆使して、生き残るための戦いしていた。
 トルムドア達との雑談を通して、奉崇歌(ほうすうか)などの次に身につけるべきスキルなどの情報を収集していたカノンはトルムドアと清依 美架(きよい みか)と共に、彼女達の言う【あそこ】に向かっていた。
 ちなみに美架とはトルムドア・ワールド内で出現する、夢の中で暮らしている理想の存在の事だ。
 本来は各存在の夢の中の特別な存在なのだが、美架はトルムドア・ワールドのクリエーター的存在――もう一つの全能者、アナザーオムニーアの富吉(とめきち)という存在の理想の存在であり、アナザーオムニーアは自分の夢の中だけの存在を実際の世界であるトルムドア・ワールドに作り出す事が出来る。
 その富吉によって、道案内のために美架はトルムドア・ワールドに出されたのだ。

 現在、向かっている【あそこ】はトルムドアと美架だけが解っていて、カノンは見てのお楽しみとして、内緒にされている。
 つまり、着いて見るまで何のことか解らないのだ。
 着こうと思ったら、トルムドアは一瞬で、たどり着かせる事も可能なのだが、道中を楽しみたいのか比較的、ゆっくりと案内していた。
 確かに、色んなものを紹介されてそれらの全てが珍しく映った。
 発明家でもあるカノンにとっては、好奇心をそそられる案内でもあった。
 移動中の話も興味を惹かれるものが多かった。
 例えば、秘奥曲歌(ひおうきょっか)と呼ばれる歌曲の話だ。
 秘奥曲歌は究極の歌曲とされていて、第六本体クアンスティータ・レアク・デや第七本体クアンスティータ・テレメ・デを眠らせる効果があるとされている。
 基本的には、究極の力は第五本体、クアンスティータ・リステミュウムとされ、それを遙かに超える力を持つとされている第六本体と第七本体は眠らせておく事がベストとされている。
 究極以上の力は使う必要が無いという考えだ。
 秘奥曲歌は誰でも歌えるというものではなく、第七本体を監視する役目を持っている第十二側体から第十七側体(クアンスティータ第十二側体 クアンスティータ・イスクリア、第十三側体 クアンスティータ・ヒアトリス、第十四側体 クアンスティータ・フィーニス、第十五側体 クアンスティータ・イティニウム、第十六側体 クアンスティータ・ウェンインティオ、第十七側体 クアンスティータ・オムニテンポス)までの側体のクアンスティータと第七本体自身のみが使いこなす力であるらしい。
 どのような歌曲なのかは謎に包まれていて、一種類の歌曲ではないとされていて、一説には、人の言葉の歌でも人が演奏出来る楽器での演奏でもないとされている。
 だが、それは第一側体であるトルムドアでも噂程度でしか認識できない事らしい。
 つまり、クアンスティータはクアンスティータでもそれぞれ、更に上の事柄が存在しているという事になる。
 同じクアンスティータでも奥が深い話である。