04 奉崇歌(ほうすうか)


 七英雄達の決死の戦いをカノン・アナリーゼ・メロディアスは知らなかった。
 彼女は一人、第一側体、クアンスティータ・トルムドアの所有する宇宙世界、トルムドア・ワールドに連れて来られていたからだ。
 第一本体クアンスティータ・セレークトゥース誕生時に出た、クアンスティータ以外の部分、ファーミリアリス・ルベルが変化した存在、ダミーカノンが彼女の代わりにオリウァンコの人質として捕まっている。
 七英雄達はそのカノンの偽者を助けるために必死で頑張っているという事になる。
 本物のカノンがクアンスティータ・トルムドアによって、パーティーから引き離されたとも知らずにだ。
 本物のカノンは、クアンスティータ・トルムドアに案内され、トルムドア・ワールドの中を回っていた。
 (クアンスティータ・)トルムドアは、カノンに対して、好意的で、カノンの事を【カノンママ】と呼んでいる。
 それは、トルムドアが、カノンの生体データをスキャニングして、生体情報を他のクアンスティータにも送ったという事からそうなった。
 元々、無性生命体?であるクアンスティータが【おんこ】という男でも女でもない第三の性別になったのは、カノンの生体情報が大きく影響している。
 どちらかというと女の子よりであるクアンスティータはカノンの要素を多く持っているからでもあるのだ。
 そのため、トルムドアは性別を与えてくれたカノンを母と同様に扱っていた。
 現在、その場には、トルムドアの他に、もう一つの全能者――アナザーオムニーアというこの宇宙世界のクリエーターのような存在によって作られた理想の存在、清依 美架(きよい みか)という女の子も加わっている。
 美架は、アナザーオムニーアの富吉(とめきち)という者の理想の存在となる。
 このトルムドア・ワールドでは、対象者の夢の中に存在する理想の存在を作り出す事が出来るという。
 富吉の夢の中の理想、それが、彼女なのだ。
 夢の宇宙世界でもあるトルムドア・ワールドでは、現実とは別に、対象者だけの夢の世界というのも存在する。
 対象者のためだけに存在する夢の世界は理想的で、夢の世界にどっぷり浸かってしまう者も後を絶たないという。
 アナザーオムニーアはそんな夢の世界だけの住民をトルムドア・ワールドに自由に作り出すことが出来る。
 そうして、富吉により、彼女はトルムドア・ワールドの地に作り出されたのだ。

 トルムドアと美架は、【あそこ】という場所にカノンを案内しようとしている。
 【あそこ】とは何処なのか?
 それは、解らない。
 【あそこ】とは、【ここ】、【そこ】、【あそこ】の【あそこ】なのだから。
 カノンは聞いてみたが、トルムドアは、
「着いてからのおっ楽しみぃ~」
 と言って答えてくれなかった。
 それは、黙って着いて言っても結果的には解る事であるし、逆らっても、今のカノンではトルムドアには到底、敵わない。
 カノンは逆らわず、着いていく事を選択した。
 途中、黙っているのも良くないと思ったので、世間話をする事にした。