未来から来たアリスという人造人間が吟侍を尋ね、協力者となった事から、アリスのサイコネットを通じて、ある程度、他の惑星の情報を共有する事が出来ていたため、カノンも多少、他の星での出来事や会話が耳に入って来ていた。
 だから、未来の世界において、全ての世界を壊滅状態にしたクアンスティータが第五本体だという事は聞いて知っている。
 第七本体とはその二つ後に出てくるクアンスティータではないのか?
 最強とは言われていても第五本体よりも脅威となる存在なのだろうか?
 カノンは思考をフル回転させて考えていた。
 それをトルムドアの言葉が遮る。
「パパが言っていたよ。第五本体が出れば要は事足りる。第七本体が産まれ出る必要はない。あれは眠らせておくのが一番だって」
 と。
 トルムドアの言う【パパ】とは怪物ファーブラ・フィクタの事を指す。
 全ての神や悪魔、人間達に怨みを持つこの男はクアンスティータによる全ての壊滅を望んでいるが、その怪物ファーブラ・フィクタをもってしても第七本体を出すのはやり過ぎだと感じている。
 だが、今のカノンはそんな事は知るよしもなかった。
 続けて言ったトルムドアの台詞で更に混乱する。
「吟侍パパが余計な事をする前にとも言っていたよ」
 【吟侍パパ】と【パパ】が別人を指すという事は解るが、【パパ】とは誰なのか?
 【吟侍パパ】とはカノンの恋人、芦柄 吟侍の事を指すのだろうか?
 吟侍はこのクアンスティータ・トルムドアと会っているのか?
 会っているとしたら、自分にそっくりな容姿を持つこの子を見て彼はどう思ったのだろうか?
 何となく、吟侍がクアンスティータと関わる運命だという事はずっと感じていた。
 そのクアンスティータの一核がカノンそっくりな容姿をしている。
 その事だけでも不安を覚えた。
 吟侍がもっと遠い所に行ってしまう。
 そう感じると切なくなってくる。
 本物のクアンスティータはどのクアンスティータも宇宙世界を持っている。
 吟侍がその宇宙世界のどこかへ行ってしまったら二度と会えなくなるのでは?
 タダでさえ、吟侍と共に冒険出来ないのに、違う宇宙世界へと離れてしまう。
 そう考えると不安で不安で仕方なかった。
 だけど、クアンスティータにも不思議な愛情を覚えてしまう。
 クアンスティータとはどのような存在なのか?
 どこから来てどこへ行くのか?
 膨大過ぎて解らないことだらけだ。
 こうしていると、どんどん考える事が増えてしまう。
 カノンはとりあえず、解る事から理解していこうとトルムドアに質問する。
「トルムドア・ワールドというのは夢を司る宇宙世界だというのは解ったわ。みんな、夢を見ているの?」
「えっとねぇ~、普段の生活と眠りの生活の二つがあるよ。眠りの生活の方は、みんな理想の相手を作ってそれを大事にしたりしているかな?存在する夢、ドリーム・イグジストって呼んでるかな……」
 理想の相手――そう聞いて一瞬、吟侍の顔が浮かんだ。
 自分だけの理想の相手を自分の夢の中に囲い込む。
 そういう意味ではアイドルやスターなどよりも凄い存在を自分の夢に持つという事になる。
 そうなったら、もはや、自身の夢の虜になってしまう者が続出するだろう。
 夢に骨抜きにされる者もたくさん出てくるだろう。
 そういう意味でも恐ろしい宇宙世界と言えた。
 他のどんな宇宙世界よりも強大かつ強力なクアンスティータの宇宙世界の一つ、トルムドア・ワールドを体感するカノン。
 トルムドアは無邪気に説明するだけだが、人の身の彼女にとっては驚きの連続だった。
 突然、何者かが現れる。
 びくっとするカノン。
「全能者、オムニーアの富吉(とめきち)さんだよぉ~」
 トルムドアに紹介されて、ぺこりとお辞儀をする冨吉。
 親しみやすい名前だが、この存在はトルムドア・ワールドの強者達を作り出している存在でもある。
 全能者オムニーアとは元々、現界(げんかい)に住んでいる他の存在の名称だったが、1番の化獣ティアグラによってその名称を生け贄として差し出されたものを使っている。
 なので、全能者オムニーアであって、全能者オムニーアではない、もう一つの全能者、アナザーオムニーアと呼ぶべき存在だった。
 アナザーオムニーア達が存在する限り、トルムドア・ワールドでは無制限に強者が産まれて来るという事になる。
「見て見てぇ~、これ、ぜぇんぶ、冨吉さんが作ったものだよぉ~」
 とトルムドアが紹介する。