彼は後で知る事になる。
 自分が見下していた男こそが【エニグマ】本人であるという事を。
 その頃には【エニグマ】領を追放になったのだが。
 命が助かったのは同じ女の子にアプローチした仲間としてのせめてもの配慮だった。
 本来であれば、【エニグマ】侮辱罪で首をはねられてもおかしくない事だったのだ。
 そして、残るは【風来坊のえーちゃん】と【カルメン】を残すのみとなった。
 しばし考え、タティーは、
「よ、よろしくお願いします」
 と【風来坊のえーちゃん】を選んだ。
 【カルメン】は、
「な、何故だ?」
 とショックを受けた。
 自分が負けるとは思っていなかったのだ。
 タティーにとって、【カルメン】は彼女の苦手ないじめっ子の匂いがしたのだ。
 その自信過剰な態度から、付き合えば、いじめられる……そう感じたのだ。
 決して、【カルメン】が女性だったからではない。
 彼女は男装していたので、女性だとは夢にも思っていなかったのだ。

 立ち尽くす、【カルメン】を残し、手をつないで歩くタティーと【風来坊のえーちゃん】。
 しばらく歩いたところで、【風来坊のえーちゃん】は、
「自分を選んでくれてありがとう」
 と言った。
 タティーは、
「あの……勘違いしないでください。三人の中ではあなたが一番ましだと思ったから選んだだけです。だれかを選ばないとあの場は収まらないと思ったから……私、覗く人と付き合うなんて、考えられませんから……今は……」
 と言った。
 【風来坊のえーちゃん】は、
「わかってる。……それでもおれっちを選んでくれてうれしかった。これからもよろしく。んじゃ、またな」
 と言って去って行った。
 タティーの乙女心に【風来坊のえーちゃん】というキーワードが僅かに引っかかった瞬間だった。

 タティーと別れてからしばらくすると、【風来坊のえーちゃん】は、
「うひょぉ~手ぇ、つないじゃった。これはしばらく洗わねぇぞぉ~」
 と歓喜した。