ソナタは、
「せっかく生きて帰ってきたのに、あんた、何言ってんのよ、相手はクアンスティータなのよ。他の奴とは全然、違うのよ」
「解ってるよ、おそなちゃん。だからだよ。クアンスティータは何もかもが特別だという事がわかった。わかったからこそ、このままには出来ねぇ。もっとやるべき事が有るはずだ。おいらはやりきったつもりでいたけど、まだ全然足りてねぇ。おいらがやるべきことはクアンスティータの教育係……そんなもんになることだ。あの子が正しい方向に動いて行けるように道を指し示す。それがおいらがやるべき事――そう思ってる」
「教育係って、オルオティーナってのが居るんでしょ?だったら、必要ないじゃない」
「いや、オルオティーナは乳母だって言っていた。教育係じゃねぇ。むしろ甘やかすんじゃねぇか?子供が悪いことをしたら叱ってやる大人が必要だ。正しく導いてやる親が必要だ。悪いが怪物ファーブラ・フィクタの奴にはそれは任せられねぇ。あいつはおいらの前世ってのが恥ずかしいくらい、道を見誤っている。だったら、おいらがやるしかいねぇ」
「クアンスティータを叱るって何、言ってんのよ、そんなの命がいくつあったって足りないじゃ……」
「言ったろ、誠実に接すればクアンスティータは怖くねぇって……だから、大丈夫だ。曲がったことはしねぇ。ただ、まっすぐぶつかっていく。子育てってのは命がけだ。それが、人間の子供か、クアンスティータかって違いだけだ。なんも変わらねぇさ」
「人間の子供と一緒にしないでよ」
「一緒さ。あの子も親を求めていた。まだ、赤ちゃんなんだよ」
「そんなこと言ったって……」
「とは言っても、おいらに子育てなんてのはよくわからねぇ。クアンスティータには双子のクアースリータってのもいるし、おいらだけの手には余ると思う。誰か協力してくれると助かるんだけど、やっぱ、無理かな……」
 吟侍のその言葉に女性陣が自分がやるという表情を見せる。
 だけど、他の女性を気遣ってか、なかなか、自分がとは言い出せない。
 そんな時、
「やっぱ、お花ちゃんにお願いするのが……」
 と吟侍は言った。
 【お花ちゃん】とは吟侍の恋人カノンの愛称だ。
 その瞬間、
「私が……」、「私が……」と女性陣が手を挙げだした。
 この場に居ないカノンに対するライバル心からだろう。
 吟侍にはカノンという恋人が居るというのが解っていても、やはり、彼の隣には自分が居たいという気持ちの方が打ち勝った。
「あ、あんまり大勢で行っても……」
 と吟侍は思わず、気圧された感じで言ったが、女性陣達は自分が行くと言って聞かなかった。
 放心状態の海空をひとまず、安全な所に保護した後、吟侍と女性陣達による、セレークトゥース・ワールドでの冒険をするという事で意見はまとまった。
 吟侍の持っているクアンスティータ・パスポートがあれば、吟侍と行動を共にしている限り、女性陣達もセレークトゥース・ワールドに行くことが可能だが、下心のある女性陣達では不安が残る。
 恋愛感情に鈍い吟侍はその事に気づかなかった。


続く。