03 神や悪魔の動揺


「オッス、今、戻った」
 吟侍はあっけらかんとして戻ってきた。
「ぎ、吟侍さぁん、どこに、いらしてたんですか?」
 フェンディナが泣きついてきた。
 クアンスティータの前にほっとかれて不安だったのだ。
 口には出さないが、エカテリーナやステラも同じ気持ちだった。
 吟侍が帰ってくるまで、オルオティーナに「しばし、待て」と言われて全く逆らう事が出来なかった。
 それこそ、蛇に睨まれた蛙のように。
 クアンスティータがクアースリータとじゃれあって遊んでいる所を黙って見ているしかなかった。
 これからどうなるんだと不安でしかたがなかったのだ。
「ちょっと野暮用でな、セレークトゥース・ワールドで軽く商売してきた、これ、土産な。
おめぇらのもあるぞ」
 と言って、セレークトゥース・ワールドから貰ってきたお菓子を配った。
 放心状態の海空や、クアンスティータ・セレークトゥース、クアースリータ、オルオティーナにもだ。
「芦柄 吟侍、貴様、こんな時に何をやって来ているんだ?」
「こんな時だからだよ。おいら、思ったんだ。誰かを倒す事に意味があるのか、どうか?それって割とどうでもいいことじゃねぇかってな。みんなでワイワイ楽しむのもありかなって思ってさ」
「何を言っておる?」
 吟侍の言葉にエカテリーナは動揺する。
 戦う事が全てであった彼女には理解しがたい感情だからだ。
「まぁまぁ、とりあえずは、この場を何とかしないといけないだろ。ここは、おいらに任せてくれねぇか?」
 と吟侍に言われ、エカテリーナは思わず赤面する。
 今まで、彼女にとって男とは情けないものだった。
だが、今は、これほど頼もしい存在が目の前に居る。
 それが女の身として、嬉しさも感じ始めている。
 エカテリーナにとっての初恋――それが今だった。
 彼女は吟侍に対して恋している。
 だが、恋愛に初な彼女はその感情がなんなのか解らなかった。
 今はとにかく、吟侍に従う事が一番だと直感しながらもそれに身を任せるという事の戸惑いがあった。
「任せて大丈夫なのか?」
 不安顔のエカテリーナ。
「大丈夫かも知れねぇ――わかんねぇけどな」
 とウインクして見せる吟侍。
 フェンディナとステラにも手を振って大丈夫だという事を示す。
 エカテリーナ、フェンディナ、ステラの三名は明らかに吟侍に対して恋心を持っていた。
 ここに、ソナタが居たら、きっと、ヤキモチをやくだろう。