だから、クアンスティータが誕生する前に、吟侍はクアンスティータに対する敵意をやめた。
 誠意を尽くし、礼には礼で答えるかのような接し方をしようと決めていた。
 敵意をやめることで、クアンスティータの鏡の反射の恐怖から逃れたのだ。
 クアンスティータには挑む――だけど、勝負という形で挑むだけだ。
 戦いというよりはむしろ、スポーツ――そんな気持ちでいる。
 屈服させよう、倒そうとは思わない。
 まともにぶつかっても敵わないのだから。
 クアンスティータにどれだけ通じるか、それだけを見てみたい。
 吟侍は今、そう思っていた。
 スポーツマンシップに乗っ取った様な感じの挑戦者という立場でクアンスティータに接する事で、誠実さを示した。
 だから、吟侍には、恐怖という変化は無かった。
 吟侍の恋人カノンも愛情を持って接しているため、彼女にも恐怖という変化は起きていない。
 吟侍は、クアンスティータの力を直接感知するという事は出来なかったが、それでも、心の底から震えあがるという事は無かった。
 怯える者達の多くはクアンスティータの事を絶対悪のように言う。
 自分達の安全を脅かす悪い奴――そう捕らえていた。
 だが、本当にそうなのか?
 ただ、自分達の多かれ少なかれの悪事が通じなくなる――それが怖いだけではないのか?
 少なくとも吟侍が知る限りでは、クアンスティータは悪いことはしていない。
 産まれていなかったのだから当然だ。
 海空の事も含め、クアンスティータに悪意を持つ者はクアンスティータの利権にたかっている存在の悪意により、憎しみを募らせた。
 だが、クアンスティータは何もしていない。
 こうして見ているだけでも、ただ、無邪気に笑っているだけだ。
 後ろ暗い気持ちがある存在が、自身の後ろめたさに触れられたくないがために、クアンスティータという存在を恐怖している――そう、吟侍には見える。
 知的生命体はなまじ知識があるから余計な事を考える。
 現に動植物などは、クアンスティータに対して、恐怖している感じは受けない。
 全く敵わないというのが解っているから、何か関わろうとはしないだろうが、怯えた様子も見られない。
 自然体で居ることが、クアンスティータには一番良いことなのかも知れない。
 全く何も出来ないかと思ったが、そうでもないと感じた。