しばらくするとまた、元の1つに戻ったので、解った者は誰も居なかった。
 セレークトゥース誕生に動揺していてそれを気にしている余裕など全く無かったのだから。
 吟侍も全く動揺して居ないと言うとそれは嘘になる。
 吟侍の心臓は7番の化獣(ばけもの)ルフォスの核と同化している。
 ルフォスの動揺が吟侍の全身を震えさせる。
 ルフォスは元々、この最強の化獣(ばけもの)クアンスティータに対する絶対的な恐怖を克服するために吟侍との共存を選んだのだ。
 吟侍が平気でもルフォスの怯え方は尋常ではなかった。
 ルフォスは常日頃から、クアンスティータに勝ちたいと言っていた。
 勝つという事は何らかの勝負をするという事になる。
 だが、今はそれどころじゃない。
 全く言葉が出ない程、動揺し、怯えている。
 それこそ、小動物が、猛獣に怯えるように。
 俺様的な気性だったルフォスが子供の様に怯えていて、息を潜めている。
 それこそ、自分の存在を消すかのように――黙ったまま何も喋らない。
(ルフォス……ルフォス……どうしたんだ?……ルフォス!)
 心の中で吟侍は必死に呼びかけるが、ルフォスは全くの無反応だった。
 ルフォスの協力無しでは吟侍の力は極端に落ちる。
 如何に超天才的な戦い方をしようと、ルフォスの核が吟侍の心臓を動かさねば彼は動けないのだから――
 ルフォスの怯えを直に感じ取った吟侍はある決意をする。
(ルフォス、聞いてくれ……おいらは今までクアンスティータを倒そうと思っていた。聞いていた話じゃ、相当なわるだと思っていたからだ。だけど、よく考えたら、こいつは赤ん坊だ。何も知らない、無邪気な赤ん坊だ。こいつを倒すというのはなんか違う気がする――どうしても挑戦したいというのなら、おいらも協力する。だけど、勝ちは狙うが倒すのとは少し違う。そういう意味で、お前の意見が聞きたい、答えてくれ……)
 ルフォスの反応を待つ吟侍だが、ルフォスの反応はない。
 恐怖が先に立ち、言葉が出てこないのだ。
 他の存在も恐怖を持って接している。
 だけど、ルフォスの恐怖は伝わるが、吟侍自身の恐怖はない。
 何故か?
 それは、クアンスティータに対して少しでも害のある意志を持つかどうかが明暗を分けていた。
 恐れたり、利用したり、とにかく、マイナス面でクアンスティータを捕らえようとすると鏡の反射の様に恐怖という感情で帰ってくる。
 そんな気がするのだ。
 敵意、悪意を持たずに、接すれば、決して怖い存在ではない。
 答えの力がそう、告げている。