だが、心からは楽しめていない――それはトルムドアが怖いからだ。
 羽目を外しすぎてトルムドアの機嫌を損ねるのは命取りとなる。
 カノンが制止するだろうからそれはないとは解っていても、やはり怖いのだ。
 そんな微妙な緊張感はカノンも感じていた。
 これは本当の意味でのパーティーじゃない。
 楽しいと思っているのはトルムドアだけ。
 他の招待客達の心も感じるからカノンも楽しめていない。
 ここは、自分が前に出て楽しませなくては――カノンはそう思った。
 元々、惑星アクアでも歌優(かゆう)として、みんなを楽しませる事を優先させて来た旅をしてきたのだ。
 このトルムドア・ワールドでも同じ事をすれば良い。
 いや、ガチガチにトルムドアに対する恐怖を感じている招待客を楽しませるにはもっと頑張らなくてはならないと思った。
 カノンは自身の身体に秘める女神御(めがみ)セラピアの力を使って、簡単な人形をいくつか作り出した。
 そして、カノンは、
「さぁさぁ、お客様、ご注目ください。私はカノン・アナリーゼ・メロディアスと申します。これから、ご挨拶も兼ねて、人形劇をさせていただきます。人形劇というのは人形という人を模したものを使って、物語を表現する事です。今回、披露するのは私の出身の星で伝わっている童話の一つで……」
 という様に、説明を始めた。