香月は、
「誰、誰なの?趣味が悪いわよ。で、出てきなさい」
 と言った。
 香月は習い事で空手もやっている。
 騙そうと思って居た人間が出てきたらお仕置きしてやろうと思った。
 だが、その思惑は通らない。
 誰も出てこないからだ。
 玲於奈は、
「ひ、人を呼ぶわよ。悪戯じゃすまされなくなるよ」
 と言った。
 早く、この恐怖から解放されたいと思って絞り出した言葉だ。
 これはドッキリじゃなければ、悪い夢だ。
 そんな事を考える玲於奈と香月に絶望が飛来する。
 ひらひらと保健室の天井近くを浮いているものがある。
 紙だ。
 恐らく、さっきの紙だ。
 だが、ここは保健室。
 風など吹くはずがない。
 紐か何かで吊して霊の仕業に見せかけてと一瞬、思うが、肝心の紐が見あたらない。
 じゃあ、手品だ。
 マジックで私達を脅かそうとしているんだ――そう思いたいが、紙の動きがあまりにも不自然だった。
 仕掛けか何かがあったとして、あんなにひらひらと不自然に動くものなんだろうか?
 最新の科学はそこまで発展して――などと悪霊を否定する理由を探すが、全て悉く否定される。