綾子は、
「さすが、玲於奈。話が分かるわね。でさ、あいつ、授業の勉強にも【パンドラの鉛筆】を使っているんだけど、それ以外に、休み時間の度に、女の絵を描いてんのよ。気持ち悪いわよねぇ」
 と言って震え上がった。
 女の子の絵を描くのが気持ち悪い?
 ちょっと意味が解らなかった。
 漫画家とかイラストレーターを目指している人だっている訳だし、女の子の絵を練習しているのは山木に限らず、何人か、見たことがある。
 なので、山木だけを特別に嫌う理由にはならないような気がするのだ。
 フッた負い目なのか?とも思ったが、綾子の気持ち悪がり方は尋常ではないなと思うのだった。
 綾子の話では、元々、山木という男は絵が下手くそだったようだ。
 それが、【パンドラの鉛筆】を使うようになってみるみる絵が上達していて、その上達スピードが明らかにおかしいらしい。
 女の絵がうまいので、他の男子が山木に絵を描かせた。
 その時は、トイレから出たばかりだったらしく、山木は、【パンドラの鉛筆】を持っていなかった。
 代わりに他の男子は持って来ていたシャープペンシルで書かせたのだが、本当に同じ人物が描いたのか?と思うくらい下手だった。
 つまり、【パンドラの鉛筆】以外で描いた絵は上手ではなかったのだ。
 他の男子は、じゃあ、【パンドラの鉛筆】で描いた絵を一枚くれと言ったが山木は異常に反応して、それを拒否したという。
 コピーでも良いからという提案も頑なに拒否した。
 それがもとで喧嘩にもなったらしいが、最終的には、女の絵は誰の手にもわたらなかったらしい。