01 何気ない日常


 松村 俊征(まつむら としゆき)は緊張していた。
 今日は初デートだからだ。
 俊征は前に出るという性格ではない。
 どちらかというと奥手だ。
 人付き合いも得意ではなかった。
 口下手でもある。
 一人称は【自分】でそれをからかわれた事もあるが、いつも何も反論できずにいた。
 そんな俊征は先日、ずっと思い続けていた女性に告白された。
 黛 玲於奈(まゆずみ れおな)──笑顔が素敵なショートカットの女性だった。
 両想いだったのは嬉しいが、告白は男の自分からした方が良かったのではと今でも思っていた。
 せめて、初デートではリードしたいと思うが、何分、デートなど生まれてこの方、したこともないので、何をどうすれば良いのかさっぱりわからなかった。
 そもそも、会話が続くのかどうかも心配だった。
 女の子と何を話せば良いのかわからないのだ。
 女の子が何に興味を持っているのかもわからない。
 特別な事で話せる事と言えば、従兄弟で大学生の松村榮一郎(まつむらえいいちろう)が、先日、パンドラと言う悪霊を祓ったという事くらいだが、果たしてその様な話を話しても良いのかどうかもわからない。
 下手をすれば引かれてしまうのではないかとも思っていた。
 初デートで悪霊の話というのもなんだか違う気がする。
 だけど、代わりの話題が用意できない。