だか、それでも思いつかない。
 諦めて、ここでやられるのかと思った時、カノンの事を思い浮かべた。
 この絶体絶命の状態の時、カノンだったらどう答えるだろうと思った。
 カノンの事だから吟ちゃんだったら、こうするよという様な感じで恋人の吟侍を立てる言い方をするだろうなと思った。
 その時、吟侍だったらこうするというアイディアを思いついてしまった。
 悔しかったが、吟侍がヘラクレスと同じ条件で戦っていたら、こうするだろうというのがはっきりと思いついてしまった。
 ヘラクレスは、
「まったく、あのクソ吟侍だったら、こうするって思いついちまった、胸くそ悪い……」
 と悪態をついた。
 実力は認めているが、カノンの恋人、吟侍はカノンに思いを寄せるヘラクレスにとっては恋敵――恋敵の発想を利用するというのが本当に悔しかった。
 悔しかったが、カノンを救い出すため、こんな所で負けていられない。
 その思いついた唯一のアイディアを試すために、ザックリの様子をじっくりと見た。
 その間に何度も攻撃をされて、どんどんダメージは蓄積されていく。
 ヘラクレスは攻撃にジッと耐えて、ある一瞬のタイミングを見ていた。
 その一瞬に全てを賭けるために。
 ザックリの攻撃は続き、どんどん、ヘラクレスは傷ついていく。
 すでに、ザックリの攻撃は3桁以上ヒットしていた。
 塵も積もればじゃないが、これだけ攻撃を受けるとヘラクレスもタダではすまない。
 何度か膝を地につく場面もあったが、必死に耐えた。
 そして、待ち続けたそのタイミングが訪れる。
 ザックリの攻撃が、真っ直ぐ、ザックリの身体と一直線上になった。
 その時、ザックリの繰り出した右手の攻撃に対し、ヘラクレスは合わせて、その右腕に目がけて攻撃した。
 敵の攻撃が当たるというのであれば、敵が攻撃に使っている部分は当たるという事でもある。
 ならば、その当たる一点に合わせて、ヘラクレスも攻撃したのだ。